ご挨拶

2008年2月     伊佐 正

2月になりました。
*新年早々(1月23日)、金田助教の論文がJournal of Neuroscienceに出版され、”This Week in The Journal”で紹介されました。これは大変嬉しいことです。この論文は上級の局所神経回路の基本構造に関する理解を大きく進めました。私がこれまでreviewなどで書いてきたことも修正しなくてはいけなくなってきています。
*長い間かかった遠藤利朗君(スウェーデン留学中)の上丘のwide field vertical (WFV) cellに関する論文がJournal of Neurophysiologyにアクセプトされました。この論文が面白いのは、樹状突起に分布するHCNチャネル(おそらくHCN1)が、他の電位依存性チャンネルとの組み合わせで細胞ごとで全く異なる機能に貢献することを示したことです。例えば、海馬の錐体細胞では樹状突起のIhは樹状突起をシャントする、ないしは持続的に脱分極してT型Ca channelを不活性化するなどして抑制的に働くと報告されていますが、WFV cellでは、IhはNa channelとカップルして、持続的に樹状突起を脱分極させ、弱い感覚入力に対してもすぐに活動電位(Na dendritic spike)を出させる、すなわち興奮的に働いているようです。つまり、それぞれのチャネルはどうやらそれぞれの場所ごとでの特異的な機能を作るためのパーツであって、何かチャネルとしてのuniversalな機能なんて無いのかもしれません。
*武井智彦君と関助教の論文がJournal of Neurophysiologyにアクセプトされました。関チームも大変demandingな仕事で立ち上げに時間がかかりましたが、これを機に成果がどんどん論文になって発信されてくるものと思います。
*2月8−9日と、奥三河の愛知県民の森の保養施設で1泊2日のリトリート行い、研究室の研究者13名が参加してプログレスレポートを行いました。一人45分の持ち時間で大学院生も含めた全員が研究の現状と今後の展望を報告し、徹底的に議論しました。夜の部はひと風呂浴びた後、夜10時半から私が今後の展望を語った後で、部屋で飲み会。お開きは朝3時過ぎ。これで3回目ですが、おおよそやり方も固まってきたようで、大変有意義でした。
*これから神経科学学会の抄録提出、3月は生理学会、一方で投稿間際の論文が目白押し。その他年度末はいつも慌しいのですが、粛々と仕事をひとつずつ仕上げて行きたいと思います。

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 伊佐 正 教授 
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