平成27年度~31年度 文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究(研究領域提案型) 温度を基軸とした生命現象の統合的理解(温度生物学)

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研究報告

温度感受性チャネル(TRPM3チャネル)の新たな機能特性を解明

「人工再構成系」は、人工的に調製した脂質二重膜とイオンチャネルタンパク質、イオン、水のみで構成された実験装置です。 温度センサー分子そのものの機能をとらえるためには、人工再構成系のような要素が極めて限られた実験系で観察する必要があります。 今回、この人工再構成系を用いることで、現在の主流である細胞を使う実験では見られなかった温度センサー分子TRPM3チャネルの機能を明らかにしました。 幾つかのTRPM3チャネル活性化剤の間には活性化メカニズムの違いがあることがわかりました。また、TRPM3チャネルが温度センサーとして機能するには、 細胞や組織に存在する何らかの成分が必要であることが示唆されました。 イオンチャネル分子そのものの機能をとらえることは、ヒトのからだの機能を知ることにつながるだけでなく、治療薬を開発する上でも重要なことです。 TRPチャネルの機能、特にTRPチャネルが温度を感知するメカニズムは全く明らかにされていません。近年、人工再構成系の技術が進んでおり、 これらの最先端技術を用いながらTRPチャネルの温度センサー機能の謎にますます迫っていきたいと考えています。


図 脂質平面膜法

A.2つの溶液層で50-200 μmの穴の開いたテフロンシートを挟んで固定します。穴に人工的に脂質膜を貼り、そこにチャネルタンパク質(本研究ではTRPM3チャネル)を入れます。 チャネルを通って溶液層間を移動するイオンの流れを電極で検出します。B.実際のチェンバーの写真。2つの溶液相がネジで固定されており、金属ジャケット内に固定されています。 金属ジャケット内を水が還流するようになっており、温水もしくは冷水を還流することで温度を変化させることができます。溶液温度を温度計で測定しています。

Uchida, K.*, Demirkhanyan, L., Asuthkar, S., Cohen, A., Tominaga, M., Zakharian, E.*
Stimulation dependent gating of TRPM3 channel in a planar lipid bilayer
FASEB J. 30(3):1306-1316, 2016.

PMID:26655382
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