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2014年6月 伊佐 正 |
“屋久島 そしてスウェーデン(ルンド―イェテボリ)” 連休は家族と屋久島に行った。山中泊で、翌日の早朝に縄文杉を見ることができた。一時は7000−8000年ではないかといわれた樹齢も実際の計測では2000年代ということに今はなっているようだが、やはり太古から生き残っている姿は感動的である。一方で、多くのヤクシカ、ヤクザルを見ることができたのも感動だったが、シカは少々多過ぎるのではないかと思った。始終、木の芽をむしゃむしゃ食べている。屋久島の植生を食い尽くしてしまうのではないだろうか。
その後、連休後半からスウェーデンのルンド大学で開催されたEmerging technologies for exploring the normal and epileptic brain.というシンポジウム(http://www.med.lu.se/the_segerfalk_symposium)に招待されたので参加した。かなりdiverseな会で、大規模な脳領域からの活動記録から様々な最新の分子遺伝学ツール、最新版のCLARITY(透明化技術)、大規模な遺伝子解析、癲癇のDBS治療、といった様々なトピックの第一線の研究発表の一つとして話をさせてもらった。トークの評判は上々で、それをきっかけに色々な人と話ができた。翌日はLund大学のNeuroscience Day。そこではGrid cellのMay-Britt Moser, 基底核局所回路のGirad Siberbereg, 幹細胞研究のArturo Alvarez-Buyllaと言った人たちがトーク。Scienceも素晴らしかったが、それにも増して良かったのは、Skåne地方に点在する古城のひとつのTrolleholm Castleでのディナー(写真)。留学中の秋の週末に家族とこのあたりのお城めぐりをした際にはこのお城に来ることはできなかったが、十分に雰囲気は味わえ、他の講演者たちとも親しくなれた。Lund大学の神経科学コミュニティを代表しているのは神経細胞移植で有名なAnders Bjorklundや小脳研究のMartin Garwiczといった人たちだが、私が以前Göteborgに留学していたということで、私の師のLundberg先生の話などをできたことも嬉しかった。(Lundberg先生はLund大学のご出身)
翌日は、Lundから1988-1990年に留学していたGöteborg(もう25年前になるのだね)に列車で移動。早速Department of Physiologyを訪問。学内の食堂でLunch。留学当時のPIだったElzbieta Jankowska(脊髄回路を60年位研究している82歳!)、Åke Valvo(microneurogramで有名、80歳)、そして留学時はまだ大学院生だったが、現在部門の主力になっているEric Hanse(海馬のsilent synapseで良い仕事をしている)、Johan Wessberg(Åkeの学生だったが、その後Miguel NicolelisのラボでBMIの有名なNatureの論文を書き(2000)、今はまた古巣に戻ってヒトのtouch sensationで良い仕事をしている)や,共同研究者のLars-Gunnar PetterssonやSergei Perfilievたちが来てくれた。何だか25年前にタイムスリップしたような感じ(ただ皆それぞれに歳だけは取っているのだね)。セミナーをし、皆の最近の様子を聞き、Lars-Gunnarとは現在執筆中の共同研究論文の相談、また昔住んでいたあたりやダウンタウンを散歩。また、Elzbietaは車で郊外の海辺に連れて行ってくれた(本当にお元気。今での週3回は実験しているそうで)。最初に行ったときはまだ大学院の4年生。妻と生後10カ月の長男、留学中に生まれた娘を連れて、力もお金も先のあても何もなかったが、「根拠のない自信」だけはあった20歳代の頃に思いを馳せた。今回、不思議な感じがしたのは、その後、繰り返し夢の中に出て来ていた風景のいくつがが、実はGöteborgの街角だったということに気付いたことだ。時間と記憶(と多分それに連動している情動)の関係とは実に不思議なものだ。
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