特筆すべき論文発表

ジャーナル発行日 内 容
15/04/01 ATR
「生体信号に基づくロボット制御における耐故障性の実現」
Jun-ichiro Furukawa, Tomoyuki Noda, Tatsuya Teramae and Jun Morimoto. "Fault Tolerant Approach for Biosignal-based Robot Control." Advanced Robotics, DOI:10.1080/01691864.2014.996603Published online: 01 Apr 2015.
<概要>生体信号から推定したヒトの運動意図に基づくロボット制御の枠組みにおいて、推定精度向上やロボットの自由度増加のために生体信号は多極化傾向にある。しかし、多極化すると故障率も上がり、故障電極の信号は危険なロボット動作を生成し得る。そこで本研究では、生体信号の特性から故障電極を機械学習の手法により判別し、安全な推定モデルに瞬時に切り替えることで多電極生体信号に基づくロボット制御の頑健性を高める。
15/05/07 大阪大学
「経頭蓋磁気刺激法におけるお椀型コイルの提案」
Keita Yamamoto, Momoko Suyama, Yoshihiro Takiyama, Dongmin Kim, Youichi Saitoh and Masaki Sekino. "Characteristics of bowl-shaped coils for transcranial magnetic stimulation." Journal of Applied Physics, Vol. 117, Issue 17, A318, doi: 10.1063/1.4914876, May 7, 2015.
<概要>経頭蓋磁気刺激法において、在宅で患者本人が疼痛治療を行えるよう、コイルの位置決め誤差を吸収するよう広く均等な範囲を刺激できる"お椀型"コイルを新規に提案した。有限要素法によるシミュレーションを通し本手法が有効であることを確認し、また、コイルの物理的パラメータに対する渦電流の広がり・強さ・インダクタンスの変化の傾向を明らかにした。
15/05/ 昭和薬科大学、実験動物中央研究所
「マーモセットP450とFMOによるパーキンソン病誘発物質MPTPの代謝的活性化と不活性化」
Shotaro Uehara, Yasuhiro Uno, Takashi Inoue, Norie Murayama, Makiko Shimizu, Erika Sasaki and Hiroshi Yamazaki. "Activation and Deactivation of 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP) by Cytochrome P450 Enzymes and Flavin-Containing Monooxygenases in Common Marmosets (Callithrix jacchus)." Drug Metabolism and Disposition, Vol. 43, Issue 5, 735-742, doi: 10.1124/dmd.115.063594, May 2015.
<概要>マーモセットのシトクロムP450とフラビン含有酸素添加酵素FMOによるパーキンソン病誘発物質MPTPの代謝的活性化と不活性化を肝と脳で調べた。MPTPの不活性化にはマーモセットFMO3が主に関与した。一方、MPTPの代謝的活性化には主にP450 2D6が関与した。これらの本酵素に関する知見は、医薬品開発モデル動物としてマーモセットを活用する際の基盤情報のひとつとなる。
15/04/15 国立精神・神経医療研究センター
「脳波でコンピューターを操作する才能の神経基盤」
Kazumi Kasahara, Charles Sayo DaSalla, Manabu Honda and Takashi Hanakawa. "Neuroanatomical correlates of brain-computer interface performance." NeuroImage, Vol. 110, 95-100, doi: 10.1016/j.neuroimage.2015.01.055, April 15, 2015.
<概要>脳波を用いたBMIの操作成績は個人で大きく異なり、リハビリテーション応用のためにはBMI操作能力の個人差を理解しつつ技術を洗練させていく必要がある。今回、MRIで測定できる大脳皮質運動野の量がBMI操作成績の個人差と相関することを始めて示した。本研究は脳波BMI操作の神経メカニズムの理解に貢献するばかりでなく、今後個人差を考慮に入れたBMI設計に資するバイオマーカーとして大脳皮質運動野量を活用できる可能性を示すものである。
15/04/ 東京医科歯科大学
「小頭症モデル動物の人為的脳サイズ回復に成功」
H Ito, H Shiwaku, C Yoshida, H Homma, H Luo, X Chen, K Fujita, L Musante, U Fischer, S G M Frints, C Romano, Y Ikeuchi, T Shimamura, S Imoto, S Miyano, S-i Muramatsu, T Kawauchi, M Hoshino, M Sudol, A Arumughan, E E Wanker, T Rich, C Schwartz, F Matsuzaki, A Bonni, V M Kalscheuer and H Okazawa. "In utero gene therapy rescues microcephaly caused by Pqbp1-hypofunction in neural stem progenitor cells." Molecular Psychiatry, Vol. 20, Issue 4, 459-471, doi: 10.1038/mp.2014.69, April 2015.

<概要>PQBP1は知的障害の主要な遺伝子として知られており、PQBP1遺伝子変異による発達障害は高頻度に小頭症を伴うことも特徴である。岡澤教授らは、PQBP1の2種類のコンディショナルノックアウトマウスの作成を通じて小頭症の分子機構を解析した。その結果、PQBP1は神経幹細胞においてスプライシングを介して細胞周期制御に関わる遺伝子群の発現に関与すること、PQBP1機能低下によりM期を中心とした細胞周期時間の延長が見られることを示した。神経幹細胞の分化効率変化あるいは細胞死増加などの、従来言われて来た小頭症原因は見られず、PQBP1異常症は新たな小頭症メカニズムによるものと考えられる。さらに、PQBP1を発現するアデノ随伴ウィルスベクターの母体投与により小頭症と知的障害を胎児期に治療することが出来た。これらの成果は、脳サイズ調節の新しい仕組みを明らかにするとともに、発達障害の新規治療法の可能性を示すものである。
15/04/ 東京大学
「自閉症スペクトラム障害当事者の内側前頭前野における神経生化学的なオキシトシン投与効果が基盤となって、心理課題実施中の同部位の脳活動が回復している-ランダム化比較試験-」
Y Aoki, T Watanabe, O Abe, H Kuwabara, N Yahata, Y Takano, N Iwashiro, T Natsubori, H Takao, Y Kawakubo, K Kasai and H Yamasue. "Oxytocin's neurochemical effects in the medial prefrontal cortex underlie recovery of task-specific brain activity in autism: a randomized controlled trial." Molecular Psychiatry, Vol. 20, Issue 4, 447-453, doi: 10.1038/mp.2014.74, April 2015.
<概要>40名の自閉症スペクトラム障害当事者を対象としたオキシトシン点鼻 剤単回投与のランダム化・偽薬対照・二重盲検・クロスオーバー臨床試験において、心理課題実施中の脳活動回復を認めた腹内側前頭前野において (Watanabe et al., JAMA psychiatry,2014で既発表)、プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピーを用いて同部位のNアセチルアスパラギン酸濃度を測定していた。解析の 結果、オキシトシン投与時にこのNアセチルアスパラギン酸濃度が上昇していた症例ほど同一部位の心理課題実施中の脳活動改善度が大きかった。パス解析の結 果などから、Nアセチルアスパラギン酸濃度上昇が背景となって心理課題実施中の脳活動改善が生じるという関係が示唆された。これらの結果からは、腹内側前 頭前野機能不全に由来する症状にはオキシトシン投与効果がより広く期待出来る可能性が支持された。
15/04/ 横浜市立大学
J. Nakajima, N. Okamoto, J. Tohyama, M. Kato, H. Arai, O. Funahashi, Y. Tsurusaki, M. Nakashima, H. Kawashima, H. Saitsu, N. Matsumoto and N. Miyake. "De novo EEF1A2 mutations in patients with characteristic facial features, intellectual disability, autistic behaviors and epilepsy." Clinical Genetics, Vol. 87, Issue 4, 356-361, doi: 10.1111/cge.12394, April 2015.
15/04/ 大阪大学
「個々人の脳にフィットする脳表面および脳溝内留置用電極の開発」
Shayne Morris, Masayuki Hirata, Hisato Sugata, Tetsu Goto, Kojiro Matsushita, Takufumi Yanagisawa, Youichi Saitoh, Haruhiko Kishima, and Toshiki Yoshimine. "Patient Specific Cortical Electrodes for Sulcal and Gyral Implantation." Biomedical Engineering, IEEE Transactions, Vol. 62, Issue 4, doi: 10.1109/TBME.2014.2329812, April 2015.
<概要>個々人の脳にフィットする3次元形状の高密度脳表電極シートを開発した。3Dプリンター技術を活用してテーラーメードで電極シートを作成する ことにより、個々人の脳表面や脳溝の形状にぴったりとフィットするため、脳への圧迫が少なく全ての電極から皮質脳波を計測でき、重要な部位に より多くの電極を配置することができる。埋込型BMIなどへの応用が期待できる。
15/04/ 慶應義塾大学
「大脳皮質抑制性ニューロンの接線方向移動には、Cdk5によるErbB4のリン酸化が必要である」
Sonja Rakić, Shigeaki Kanatani, David Hunt, Clare Faux, Anna Cariboni, Francesca Chiara, Shabana Khan, Olivia Wansbury, Beatrice Howard, Kazunori Nakajima, Margareta Nikolić and John G. Parnavelas. "Cdk5 Phosphorylation of ErbB4 is Required for Tangential Migration of Cortical Interneurons." Cerebral CORTEX, Vol. 25, Issue 4, 991-1003, doi: 10.1093/cercor/bht290, April 2015.
<概要>抑制性ニューロンの機能異常は、統合失調症や自閉症、てんかん等と関連する可能性が示唆されている。その少なくとも一部は、脳の発生過程の異常に起因すると考えられている。本研究では、Cdk5及びその活性化因子p35が、統合失調症との関連が繰り返し報告されているErbB4/PI3K経路を介して、大脳皮質抑制性ニューロンの接線方向移動を制御することを明らかにした。

 

15/03/30 ATR
「脳の配線図を変更し、長期間維持するニューロフィードバック学習法の開発に成功 -脳ネットワークの構造をピンポイントで変える訓練-」
Megumi Fukuda, Ayumu Yamashita, Mitsuo Kawato and Hiroshi Imamizu. "Functional MRI neurofeedback training on connectivity between two regions induces long-lasting changes in intrinsic functional network." Frontiers in Human Neuroscience, Vol. 9, Article 160, doi: 10.3389/fnhum.2015.00160, March 30, 2015.

<概要>精神疾患・発達障害などでは、脳領域間の機能的結合が異常となり、ネットワークダイナミクスが変更されている。従来の薬物や心理行動療法ではなく、脳のダイナミクスを直接変更する有効な治療法の開発が急務であった。本研究では、参加者自らのシナプス可塑性にもとづく学習型治療法などの基礎技術として、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を用いて、参加者へ機能的結合をオンライン・フィードバックすることにより、2つの脳領域間結合を、わずか4日間の訓練で変化させ、それを2ヶ月以上持続させる『結合ニューロフィードバック法』の開発に成功した。
15/3/29 京都大学
「創造性と統合失調症の陽性症状再考:拡散テンソル画像による構造的結合性解析」
Shuraku Son, Manabu Kubota, Jun Miyata, Hidenao Fukuyama, Toshihiko Aso, Shin-ichi Urayama, Toshiya Murai and Hidehiko Takahashi. "Creativity and positive symptoms in schizophrenia revisited: Structural connectivity analysis with diffusion tensor imaging." Schizophrenia Research. [online first]
<概要>創造性と統合失調症の陽性症状(幻覚や妄想)はいずれも、珍しいあるいは離れた概念の結びつきとも考えることもできる。統合失調症と創造性の関係は古くから研究されてきたが、結果は一致していない。また、適応的な創造性と奇異で病的な精神症状との違いは何であろうか?統合失調症患者を対象に、語彙、デザイン、アイデアの創造性の課題を施行し、その結果と精神症状と白質統合性との関係を調べた。脳梁前方の白質統合性が低い患者ほど、語彙の創造性の高く、妄想が重症であった。大脳半球間(前方)の結合性が低いことが、意味ネットワークの制御不能につながり、適応的ではない病的な妄想や陽性症状につながると示唆された。
15/03/25 名古屋大学
「新規の稀なミスセンス変異と自閉スペクトラム症のリスク:日本人罹患同胞を含む2家系のエクソームシーケンスと2ステージ・フォローアップ解析」
Jun Egawa, Yuichiro Watanabe, Chenyao Wang, Emiko Inoue, Atsunori Sugimoto, Toshiro Sugiyama, Hirofumi Igeta, Ayako Nunokawa, Masako Shibuya, Itaru Kushima, Naoki Orime, Taketsugu Hayashi, Takashi Okada, Yota Uno, Norio Ozaki and Toshiyuki Someya. "Novel Rare Missense Variations and Risk of Autism Spectrum Disorder: Whole-Exome Sequencing in Two Families with Affected Siblings and a Two-Stage Follow-Up Study in a Japanese Population." PLoS ONE, Vol. 10, Issue 3, e0119413, doi: 10.1371/journal.pone.0119413, March 25, 2015.
<概要>自閉スペクトラム症(ASD)多発家系において、家系内で継承される稀な変異のリスクとしての重要性が提唱されている。そこで日本人罹患同胞を含む2家系のエキソームシーケンスと、関連解析を実施し、検討した。エキソームシーケンスから新規の稀なミスセンス変異を6つ同定し、そのうち1つの、CLN8 R24Hは1家系でASDと共分離を示した。2つのサンプルセットを用いた関連解析では有意な関連は認めなかった。以上から、少なくともASD患者の一部でCLN8 R24Hがリスクである可能性が示された。
15/03/24 昭和薬科大学、実験動物中央研究所
「マーモセット新規シトクロムP450 2D8の機能解析」
Shotaro Uehara, Yasuhiro Uno, Yuya Hagihira, Norie Murayama, Makiko Shimizu, Takashi Inoue, Erika Sasaki, and Hiroshi Yamazaki. "Marmoset cytochrome P450 2D8 in livers and small intestines metabolizes typical human P450 2D6 substrates, metoprolol, bufuralol and dextromethorphan." Xenobiotica, doi: 10.3109/00498254.2015.1019595. [online first]
<概要>マーモセット肝には医薬品代謝に重要な役割を果たすシトクロムP450 2D6分子種の存在が知られている。本研究では新たにマーモセットP450 2D8分子種をクローニングし、肝と腸試料を用い定量的発現解析を行った。肝のみならず、肝外臓器にも発現する新規P450 2D8は、典型的なヒトP450 2D6基質を酸化的に代謝した。これらの本酵素に関する知見は、医薬品開発モデル動物としてマーモセットを活用する際の基盤情報のひとつとなる。
15/03/23 国立長寿医療研究センター
「アルツハイマー病脳におけるアミロイド蓄積に関連するガングリオシド脂肪酸鎖長の変化」
Naoto Oikawa, Teruhiko Matsubara, Ryoto Fukuda, Hanaki Yasumori, Hiroyuki Hatsuta, Shigeo Murayama, Toshinori Sato, Akemi Suzuki and Katsuhiko Yanagisawa. "Imbalance in Fatty-Acid-Chain Length of Gangliosides Triggers Alzheimer Amyloid Deposition in the Precuneus." PLoS ONE, Vol. 10, Issue 3, e0121356, doi: 10.1371/journal.pone.0121356, March 23, 2015.
<概要>グルタミン酸輸送体の障害は、緑内障・筋萎縮性側索硬化症・統合失調症・うつ病などの様々な精神神経疾患に関与することが知られている。従って、グルタミン酸輸送体を活性化する化合物は、上記疾患に共通する新規治療薬として有望である。我々は、グリア型グルタミン酸輸送体の転写を活性化することによりグルタミン酸の取り込みを亢進させる化合物arundic acidを見つけ、それが興奮毒性による網膜神経節細胞の変性を改善することを明らかにした。さらに、arundic acidはヒトの細胞株に発現するグルタミン酸輸送体の発現も亢進させることを明らかにした。Arundic acidは、緑内障だけでなく、上記精神神経疾患の治療薬としても期待できる。
15/03/19 東京医科歯科大学
「アルンジン酸はグルタミン酸輸送体GLASTの発現を増加させ、正常眼圧緑内障モデルの網膜神経節細胞死を抑制する」
M Yanagisawa, T Aida, T Takeda, K Namekata, T Harada, R Shinagawa and K Tanaka. "Arundic acid attenuates retinal ganglion cell death by increasing glutamate/aspartate transporter expression in a model of normal tension glaucoma." Cell Death and Disease, Vol. 6, e1693, doi: 10.1038/cddis.2015.45, March 19, 2015.
<概要>グルタミン酸輸送体の障害は、緑内障・筋萎縮性側索硬化症・統合失調症・うつ病などの様々な精神神経疾患に関与することが知られている。従って、グルタミン酸輸送体を活性化する化合物は、上記疾患に共通する新規治療薬として有望である。我々は、グリア型グルタミン酸輸送体の転写を活性化することによりグルタミン酸の取り込みを亢進させる化合物arundic acidを見つけ、それが興奮毒性による網膜神経節細胞の変性を改善することを明らかにした。さらに、arundic acidはヒトの細胞株に発現するグルタミン酸輸送体の発現も亢進させることを明らかにした。Arundic acidは、緑内障だけでなく、上記精神神経疾患の治療薬としても期待できる。
15/03/18 慶應義塾大学
「リーリンのC末端領域は大脳皮質の生後発達と維持に重要であり、特異的タンパク質分解によって制御される」
Takao Kohno, Takao Honda, Ken-ichiro Kubo, Yoshimi Nakano, Ayaka Tsuchiya, Tatsuro Murakami, Hideyuki Banno, Kazunori Nakajima and Mitsuharu Hattori. "Importance of Reelin C-Terminal Region in the Development and Maintenance of the Postnatal Cerebral Cortex and Its Regulation by Specific Proteolysis." The Journal of Neuroscience, Vol. 35, Issue 11, 4776-4787, doi: 10.1523/JNEUROSCI.4119-14.2015, March 18, 2015.
<概要>統合失調症等との関連が指摘され、環境因子によって発現が変動することが知られているリーリン分子は、脳において様々な機能を有する。我々は以前、リーリンシグナルを効率良くニューロンに伝えるためにはリーリンのC末端部分が重要であることを報告した。本研究では、リーリンのC末端領域を欠失したマウスを作成して解析した。その結果、胎生期に正常に形成された辺縁帯内に、生後になってから浅層ニューロンが進入してしまい、その樹状突起の向きや分岐が異常になることを見出した。また、C末端を切る酵素を同定した。すなわちリーリンは、そのC末端領域を介して大脳皮質浅層ニューロンの樹状突起の発達を制御し、辺縁帯(分子層)を正常に維持するために必須な役割を有することを見出した。
15/03/18 東京医科歯科大学
「世界初、小脳運動学習を定量的に評価するシステムを開発-ヒトの小脳の機能を簡単な手の動作より、短時間で数値化可能に-」
Yuji Hashimoto, Takeru Honda, Ken Matsumura, Makoto Nakao, Kazumasa Soga, Kazuhiko Katano, Takanori Yokota, Hidehiro Mizusawa, Soichi Nagao and Kinya Ishikawa. "Quantitative evaluation of human cerebellum-dependent motor learning through prism adaptation of hand-reaching movement." PLoS ONE, Vol. 10, Issue 3, e0119376, doi: 10.1371/journal.pone.0119376, March 18, 2015.

<概要>小脳が重要な役割を担う運動学習について、小脳の生理機構と症候から手の到達動作でのプリズム適応を新しい指数 (Adaptability Index)により定量評価することに世界で初めて成功した。軽微な小脳障害を鋭敏に検出可能で、健常者と明瞭に識別できることから小脳疾患の診断に有用 である。また、本指標は小児では小さく、70歳以降も低下する傾向が見られ、小脳の発達や老化の指標となる可能性も示された。
15/03/15 京都大学
「前部帯状回の体積はうつ病への認知行動療法の効果と予測する」
Junya Fujino, Nobuyuki Yamasaki, Jun Miyata, Hitoshi Sasaki, Noriko Matsukawa, Ariyoshi Takemura, Shisei Tei, Genichi Sugihara, Toshihiko Aso, Hidenao Fukuyama, Hidehiko Takahashi, Kazuomi Inoue and Toshiya Murai. "Anterior cingulate volume predicts response to cognitive behavioral therapy in major depressive disorder." Journal of Affective Disorders, Vol. 174, 397-399, doi: 10.1016/j.jad.2014.12.009, March 15, 2015.
<概要>認知行動療法(CBT)は、うつ病治療において重要な役割を担っている。うつ病のCBTの治療効果を予測することは、治療計画の個別化をすすめるために重要である。今回私達は、脳の形態画像を用いて、CBTの効果と相関する脳部位の探索を行った。結果、うつ病患者の前部帯状回後端の体積が、その後のCBTの治療効果と正の相関を示した。本研究の結果より、前部帯状回がCBTの治療効果を予測する上で重要な領域であることが示唆された。
15/03/12 東京大学
「神経突起局所における膜構造変化が不要突起の区画化と除去を誘導する」
Takahiro Kanamori, Jiro Yoshino, Kei-ichiro Yasunaga, Yusuke Dairyo and Kazuo Emoto. "Local endocytosis triggers dendritic thinning and pruning in Drosophila sensory neurons." Nature Communications, Vol. 6, Article 6515, doi: 10.1038/ncomms7515, March 12, 2015.
<概要>幼弱期の未熟な脳神経回路が機能的に成熟する際に、胎児期にできた不要な神経回路を取り除く必要がある。これまでに私達はショウジョウバエ神経をモデルとして、不要突起が除かれる3-4時間前に不要突起が細胞体から区画化されること、さらに区画突起内で生じるカルシウム振動が突起除去を誘導する初発因子であることを明らかにしている。今回は、不要突起が区画化されるメカニズムに取り組み、不要突起の根元付近において発生する局所的エンドサイトーシスが急激な膜構造の変化を生み出すことが引き金となることを示した。
15/03/05 藤田保健衛生大学、名古屋大学
「近年の大規模試験で示された抗うつ薬反応性関連遺伝子多型は、日本人サンプルでは追試できない」
Masakazu Hatano, Masashi Ikeda, Kenji Kondo, Takeo Saito, Ayu Shimasaki, Kosei Esaki, Wakako Umene-Nakano, Reiji Yoshimura, Jun Nakamura, Norio Ozaki and Nakao Iwata. "No support for replication of the genetic variants identified by a recent mega-analysis of the treatment response to antidepressants." Journal of Human Genetics, doi: 10.1038/jhg.2015.21. [online first]
<概要>今回我々は、先行研究の結果を基にして、抗うつ薬(セロトニン再取り込み阻害薬:SSRI)で治療されている270名の日本人サンプルを用いて、寛解ならびに反応率と関連がある多型を探索し、その追試を試みた。多重比較補正の結果、我々のサンプルにおいて有意を示す多型はなく、先行研究の結果は追試されなかった。先行研究とのメタ解析においても同様の結果であった。本結果は、抗うつ薬反応性においては、反応性に関連する一塩基多型の効果量は低いと想定された。
15/03/03 沖縄科学技術大学院大学
「高次元かつ曖昧な知覚情報から強化学習を行うためのスパイキングニューラルネットワークモデル」
Takashi Nakano, Makoto Otsuka, Junichiro Yoshimoto and Kenji Doya. "A Spiking Neural Network Model of Model-Free Reinforcement Learning with High-Dimensional Sensory Input and Perceptual Ambiguity." PLoS ONE, Vol. 10, Issue 3, e0115620, doi: 10.1371/journal.pone.0115620, March 3, 2015.
<概要>報酬をもとに適切な意思決定を獲得する枠組みは強化学習と呼ばれ、人間をはじめとする動物は高次元かつ不明瞭な知覚情報に基づいて意思決定している。我々は脳を模した神経ネットワークモデルを構築し、履歴依存かつ不完全な観測環境下での強化学習を実現した。さらにこのモデルを解析することによって報酬依存の脳内表現や強化学習の神経回路機構を示唆することができた。
15/03/01 自治医科大学
「オキシトシン末梢投与→迷走神経による脳への情報伝達→摂食抑制と肥満改善の新経路の発見 」
Yusaku Iwasaki, Yuko Maejima, Shigetomo Suyama, Masashi Yoshida, Takeshi Arai, Kenichi Katsurada, Parmila Kumari, Hajime Nakabayashi, Masafumi Kakei and Toshihiko Yada. "Peripheral oxytocin activates vagal afferent neurons to suppress feeding in normal and leptin-resistant mice: A route for ameliorating hyperphagia and obesity." American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology, Vol. 308, Issue 5, R360-R369, doi: 10.1152/ajpregu.00344.2014, March 1, 2015.

<概要>脳内オキシトシン(OXT)が社会性行動、摂食抑制、記憶学習などに関与することが分かってきた。以前我々は、OXTの末梢投与が、肥満動物の過食、肥満を改 善する事を報告した。本研究では、OXTが求心性迷走神経を直接活性化して、脳に情報伝達し摂食を抑制する経路を発見した。この末梢OXTによる求心性迷 走神経活性化の経路は、過食肥満を呈するレプチン抵抗性db/dbマウスでも正常に機能したことから、レプチン抵抗性が深く関与するヒト肥満の治療ター ゲットになると推察される。さらに、ヒトで臨床試験が行われている経鼻OXT投与による自閉症および肥満治療において、脳への情報伝達の主要な経路となっている可能性があり、治療の作用基盤を与えるものである。

15/03/01 北海道大学
「抗うつ薬のミルナシプランは内側前頭前皮質腹側部障害ラットの衝動性を抑制する」
Iku Tsutsui-Kimura, Takayuki Yoshida, Yu Ohmura, Takeshi Izumi, Mitsuhiro Yoshioka. "Milnacipran Remediates Impulsive Deficits in Rats with Lesions of the Ventromedial Prefrontal Cortex." International Journal of Neuropsychopharmacology, Vol. 18, Issue 5, doi: http://dx.doi.org/10.1093/ijnp/pyu083, March 1, 2015.
<概要>本研究では、抗うつ薬として用いられているミルナシプランを長期間投薬することにより、内側前頭前皮質腹側部障害によって衝動性が亢進したラットの衝動性を効果的に抑制できることを見出した。驚いたことに、この回復作用は投薬を中止した後も持続した。さらに、内側前頭前皮質腹側部でのBDNF(脳由来神経栄養因子)増加、そしておそらくその結果としての神経棘突起数および興奮性シナプス後電流の回復がこの持続的な回復作用の原因である可能性が示された。
15/03/ 慶應義塾大学
「運動企図に併せて与える感覚フィードバックは、脳卒中片麻痺症例における脳血流応答を改善させる」
Takashi Ono, Yutaka Tomita, Manabu Inose, Tetsuo Ota, Akio Kimura, Meigen Liu and Junichi Ushiba. "Multimodal Sensory Feedback Associated with Motor Attempts Alters BOLD Responses to Paralyzed Hand Movement in Chronic Stroke Patients. Brain Topography, Vol. 28, Issue 2, 340-351, doi: 10.1007/s10548-014-0382-6, March 2015.
<概要>慢性期脳卒中重度片麻痺症例に対して、BMIリハビリテーションを継続的に施行し、機能的磁気共鳴画像による評価をおこなった結果、障害半球一次運動野や補足 運動野における血流応答に改善が認められた。また、BMIの信号源として用いている頭皮脳波上の事象関連脱同期量は、機能的磁気共鳴画像上で定量した一次 運動野の血流応答強度に相関しており、BMIリハビリテーションの生理学的妥当性が論理的に補強された。
15/03/ 理化学研究所
「リピッドラフトタンパクPAG1の統合失調症における解析」
Shabeesh Balan, Yoshimi Iwayama, Kazuo Yamada, Tomoko Toyota, Tetsuo Ohnishi, Manabu Toyoshima, Chie Shimamoto, Masayuki Ide, Yasuhide Iwata, Katsuaki Suzuki, Mitsuru Kikuchi, Tasuku Hashimoto, Nobuhisa Kanahara, Takeo Yoshikawa and Motoko Maekawa. "Sequencing and expression analyses of the synaptic lipid raft adapter gene PAG1 in schizophrenia." Journal of Neural Transmission, Vol. 122, Issue 3, 477-485, doi: 10.1007/s00702-014-1269-0, March 2015.
<概要>統合 失調症をはじめとした精神疾患では、シナプス異常が指摘されている。シナプス膜タンパクはリピッドラフトとよばれる場所に集積するが、PAG1はラフトに あってNMDA受容体の制御に重要な役割を担っている。これまで統合失調症でPAG1遺伝子の新生変異が報告されていた。我々は日本人統合失調症で PAG1遺伝子をシークエンス解析したところ、アミノ酸置換を伴う8個の変異を検出し、そのうち4個は新規なものであった。PAG1の稀な変異が疾患のリスクになっている可能性について、今後大規模サンプルで検証する必要がある。
15/02/26 東京医科歯科大学
「自閉スペクトラム症などの病的な繰り返し行動を脳のグリア細胞の異常が引き起こす仕組みを解明-強迫症や自閉スペクトラム症に伴う繰り返し行動の治療薬の開発に拍車-」

Tomomi Aida, Junichi Yoshida, Masatoshi Nomura, Asami Tanimura, Yusuke Iino, Miho Soma, Ning Bai, Yukiko Ito, Wanpeng Cui, Hidenori Aizawa, Michiko Yanagisawa, Terumi Nagai, Norio Takata, Kenji F Tanaka, Ryoichi Takayanagi, Masanobu Kano, Magdalena Götz, Hajime Hirase and Kohichi Tanaka. "Astroglial Glutamate Transporter Deficiency Increases Synaptic Excitability and Leads to Pathological Repetitive Behaviors in Mice." Neuropsychopharmacology, doi: 10.1038/npp.2015.26. [online first]

<概要>繰り返し行動は、強迫性障害や自閉症スペクトラム障害などで見られる主要な症状であるが、その病態は不明である。我々はマウスを用い、グルタミン酸輸送体GLT1欠損による脳内の過剰なグルタミン酸が、皮質-線条体間のシナプス伝達を亢進し、繰り返し行動を引き起こすことを明らかにした。さらに、グルタミン酸受容体の阻害剤であるアルツハイマー病治療薬メマンチンが繰り返し行動を、即効性に抑制することを明らかにした。本研究は、繰り返し行動の病態解明やより有効な治療法の開発につなげることができると期待される。
15/02/15 慶應義塾大学
「リーリン受容体ApoER2 及び VLDLRは、発生期マウス大脳皮質においてそれぞれ空間及び時間的に特有の発現様式を示す」
Yuki Hirota, Ken-ichiro Kubo, Kei-ichi Katayama, Takao Honda, Takahiro Fujino, Tokuo T. Yamamoto and Kazunori Nakajima. "Reelin receptors ApoER2 and VLDLR are expressed in distinct spatiotemporal patterns in developing mouse cerebral cortex." Journal of Comparative Neurology, Vol. 523, Issue 3, 463-478, doi: 10.1002/cne.23691, February 15, 2015.
<概要>脳の発生を制御し、様々な環境要因によってその発現が変化するリーリンは、遺伝要因と環境要因の相互作用が脳の発生発達過程に与える影響を理解する上で鍵となる分子の一つと考えられる。リーリンには、その受容体としてApoER2とVLDLRが存在するが、これまでそれらのRNAの発現分布は知られていたもののタンパク質の分布はよくわかったいなかった。本研究では、それぞれに対するモノクローナル抗体を作成し、大脳皮質を中心に発生過程の分布を詳細に調べた。その結果、ApoER2は多極性細胞蓄積帯の多極性移動ニューロンに主に局在し、VLDLRは放射状移動の終点近くの移動ニューロンの先導突起先端近くに局在することを見いだした。特に後者についてはタンパク質に翻訳後に突起先端に運搬される可能性が示され、リーリンの作用部位が先導突起にあることが示された。
15/02/ 藤田保健衛生大学、名古屋大学
「抗精神病薬反応性と統合失調症感受性の遺伝的重複」
Masashi Ikeda, Reiji Yoshimura, Ryota Hashimoto, Kenji Kondo, Takeo Saito, Ayu Shimasaki, Kazutaka Ohi, Mamoru Tochigi, Yoshiya Kawamura, Nao Nishida, Taku Miyagawa, Tsukasa Sasaki, Katsushi Tokunaga, Kiyoto Kasai, Masatoshi Takeda, Jun Nakamura, Norio Ozaki and Nakao Iwata. "Genetic Overlap Between Antipsychotic Response and Susceptibility to Schizophrenia." Journal of Clinical Psychopharmacology, Vol. 35, Issue 1, 85-88, doi: 10.1097/JCP.0000000000000268, February 2015.
<概要>本研究では、統合失調症の薬物治療に用いられる抗精神病薬反応性に関連する遺伝子多型を全ゲノムレベルで検討し、「薬物反応性に関連する遺伝子は、その疾患のリスクとなりうるか」という仮説を検討するため、Polygneic componentモデルを用いて本サンプルと、既報の日本人統合失調症全ゲノム関連解析の結果を比較検討した。その結果、抗精神病薬反応性を規定する可能性のある遺伝子多型は、統合失調症患者により多く認められることが示された。従って、本結果は、抗精神病薬の作用ターゲットである遺伝子は、統合失調症のリスクとして考える間接的な証左を示唆し、過去の候補遺伝子解析や、動物モデルを支持するものといえる。
15/02/ 福井大学、金沢大学
「自閉スペクトラム症がある方々による、自閉スペクトラム症がある方々に対する共感」
Hidetsugu Komeda, Hirotaka Kosaka, Daisuke N. Saito, Yoko Mano, Minyoung Jung, Takeshi Fujii, Hisakazu T. Yanaka, Toshio Munesue, Makoto Ishitobi, Makoto Sato and Hidehiko Okazawa. "Autistic empathy toward autistic others." Social Cognitive and Affect Neuroscience, Vol. 10, Issue 2, 145-152, doi: 10.1093/scan/nsu126, February 2015.

<概要>自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)がある方々と、発達障害がない(定型発達、Typically developing: TD)方々に、自閉症スペクトラム症の行動パターンを行う人物を記述した文 (ASD文)と、自閉症スペクトラム症ではない行動パターンを行う人物を記述した文(TD文)を読んでもらい、書かれた内容が自分に当てはまるか (自己判断課題)、自分と似ているか (他者判断課題)を、MR室内で判断していただいた。その結果、ASDがある方々はASD文を判断する際に、TDの方々はTD文を判断する際に、共感や自己意識と関連する腹内側前頭前野が活動することがわかった。ASDがある方でも、ASD特徴がある他者に対してはよく共感できるということ示した。
15/02/ 名古屋大学
「ブロナンセリンはフェンシクリジンによって惹起される視覚認知記憶障害を改善する:前頭前皮質におけるドパミンD3-セロトニン5-HT2AおよびドパミンD1-NMDA受容体に関与するブロナンセリンの作用の複合機構」
Hirotake Hida, Akihiro Mouri, Kentaro Mori, Yurie Matsumoto, Takeshi Seki, Masayuki Taniguchi, Kiyofumi Yamada, Kunihiro Iwamoto, Norio Ozaki, Toshitaka Nabeshima and Yukihiro Noda. "Blonanserin Ameliorates Phencyclidine-Induced Visual-Recognition Memory Deficits: The Complex Mechanism of Blonanserin Action Involving D3-5-HT2A and D1-NMDA Receptors in the mPFC." Neuropsychopharmacology, Vol. 40, Issue 3, 601-613, doi: 10.1038/npp.2014.207, February 2015.
<概要>フェンシクリジン連続投与統合失調症モデルマウスに生じる認知機能障害に対して、5-HT2A受容体よりD2およびD3受容体への親和性が高いという特徴を有する抗精神病薬、ブロナンセリンの作用およびその作用機序について検討した。その結果、ブロナンセリンは認知機能障害を改善し、作用機序として前頭前皮質における5-HT2A受容体およびD3受容体を介する細胞外ドパミン遊離量の増加が引き起こすD1受容体-PKAシグナル伝達系の活性化に伴うNMDA 受容体シグナル伝達系亢進が関与していることを見出した。
15/02/ 金沢大学
「自閉症スペクトラム障害児の脳の特徴を解明」
Mitsuru Kikuchi, Yuko Yoshimura, Hirotoshi Hiraishi, Toshio Munesue, Takanori Hashimoto, Tsunehisa Tsubokawa, Tsutomu Takahashi, Michio Suzuki, Haruhiro Higashida and Yoshio Minabe. "Reduced long-range functional connectivity in young children with autism spectrum disorder." Social Cognitive and Affective Neuroscience, Vol. 10, Issue 2, 248-254, doi: 10.1093/scan/nsu049, February 2015.

<概要>3~7歳の定型発達児童と自閉症スペクトラム障害児童の計100人を 対象に、自発的な脳の活動について長距離間の脳内機能結合について幼児用MEGを使って調べた。その結果、自閉症スペクトラム障害児は、脳の右前方部と左 後方部のつながりが低下していることが判明した。そして、このつながりの低下は、社会性の乏しさと関連していた。幼児の自発的な脳活動の結合を覚醒状態で 調べた世界で初めての報告である。
15/01/24 自治医科大学
「レプチンの摂食抑制作用を仲介する新標的;視床下部室傍核NUCB2/nesfatin-1」
Gantulga Darambazar, Masanori Nakata, Takashi Okada, Lei Wang, EnXu Li, Atsumi Shinozaki, Megumi Motoshima, Masatomo Mori and Toshihiko Yada. "Paraventricular NUCB2/nesfatin-1 is directly targeted by leptin and mediates its anorexigenic effect." Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol. 456, Issue 4, 913-918, doi: 10.1016/j.bbrc.2014.12.065, January 24, 2015.

<概要>脂肪細胞が分泌するアディポカインのレプチンは強力な摂食抑制作用を有し、その作用の低下は肥満の成因と考えられている。レプチン摂食抑制作用を仲介する作用標的は、一次摂食中枢である弓状核のPOMCニューロンおよびNPYニューロンであると考えられていた。本研究で、マウスを用いた実験から、室傍核のNUCB2/Nesfatin-1ニューロンが新たな標的ニューロンであることを同定した。レプチンは直接NUCB2/Nesfain-1ニューロンを活性化した。AAVベクターを用いて室傍核特異的にNUCB2ノックダウンすると、レプチンの摂食抑制作用が著明に減弱した。本研究は、室傍核NUCB2/Nesfain-1ニューロンをレプチンの主要標的として明らかにし、新たな肥満治療標的としての可能性を示すものである。
15/01/20 金沢大学
「オキシトシンより作用時間の長い新しいオキシトシン様化合物」
Akira Mizuno, Stanislav M. Cherepanov, Yusuke Kikuchi, Azam AKM Fakhrul, Shirin Akther, Kisaburo Deguchi, Toru Yoshihara, Katsuhiko Ishihara, Satoshi Shuto and Haruhiro Higashida. "Lipo-oxytocin-1, a Novel Oxytocin Analog Conjugated with Two Palmitoyl Groups, Has Long-Lasting Effects on Anxiety-Related Behavior and Social Avoidance in CD157 Knockout Mice." Brain Sciences, Vol. 5, Issue 1, 3-13, doi: 10.3390/brainsci5010003, January 20, 2015.
<概要>オキシトシンはペプチドホルモンで、体内で分解されやすく、分子の大きさと電荷から脳へ移行しないとされている。薬の観点から、それらの欠点を解決するため、長い脂肪鎖であるパルミチン基[CO(CH2)14CH3]を2個、オキシトシンに添加した化合物を合成した(LOT-1)。LOT-1は、投与24時間後に、CD157ノックアウトマウスの示す社会性行動障害をオキシトシンより効率よく回復させた。
15/01/20 国立精神・神経医療研究センター
「多発性白質障害に伴うすくみ足の病態解明」
Kazumi Iseki, Hidenao Fukuyama, Naoya Oishi, Hidekazu Tomimoto, Yoshinobu Otsuka, Manabu Nankaku, David Benninger, Mark Hallett and Takashi Hanakawa. "Freezing of gait and white matter changes: a tract-based spatial statistics study." Journal of Clinical Movement Disorders, Vol. 2, Issue 1, doi: 10.1186/s40734-014-0011-2, January 20, 2015.
<概要>多発性の脳虚血性障害に伴い、「すくみ足」と呼ばれる歩行障害を呈することがあるが、その病態は未知である。本研究では、拡散強調MRI解析により、右運動前野直下白質、脳梁及び大脳脚の異常が「すくみ足」の病態と関わることを示した。脳卒中による運動障がいを再建するためのBMIバイオマーカー設計の基礎データとして寄与する研究である。
15/01/16 自治医科大学
「グルカゴンは求心性迷走神経に直接作用し脳に情報伝達する」
Enkh-Amar Ayush, Yusaku Iwasaki, Sadahiko Iwamoto, Hajime Nakabayashi, Masafumi Kakei and Toshihiko Yada. "Glucagon directly interacts with vagal afferent nodose ganglion neurons to induce Ca2+ signaling via glucagon receptors." Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol. 456, Issue 3, 727-732, doi: 10.1016/j.bbrc.2014.12.031, January 16, 2015.
<概要>グルカゴンは、食事摂取、低温、低血糖条件下で分泌が亢進し、それぞれ満腹感形成、体熱産生、血糖値上昇を司っており、これらの作用の一部に脳の関与が示唆されている。グルカゴンは、血液脳関門通過による脳移行が極めて微量であり、その作用経路は不明であった。本研究は、末梢と脳を繋ぐ求心性迷走神経をグルカゴンが直接活性化することを明らかにした。グルカゴン応答神経の大部分が、満腹ホルモンのインスリンやコレシストキンにも応答したことから、満腹感形成に関与する可能性が示される。
15/01/15 国立精神・神経医療研究センター
「うつ病における脳脊髄液中エタノールアミン濃度の減少」
Shintaro Ogawa, Kotaro Hattori, Daimei Sasayama, Yuki Yokota, Ryo Matsumura, Junko Matsuo, Miho Ota, Hiroaki Hori, Toshiya Teraishi, Sumiko Yoshida, Takamasa Noda, Yoshiaki Ohashi, Hajime Sato, Teruhiko Higuchi, Nobutaka Motohashi and Hiroshi Kunugi. "Reduced cerebrospinal fluid ethanolamine concentration in major depressive disorder." Scientific Reports, Vol. 5, Article 7796, doi: 10.1038/srep07796, January 15, 2015.
<概要>大うつ病性障害の診断や類型化に用いられる生化学的マーカーは今のところなく、いまだに問診によって行われている。我々はうつ病のバイオマーカーを探索するために、脳脊髄液中のアミノ酸およびその関連分子に着目して解析した。その結果、エタノールアミンの濃度はうつ病患者群で有意な減少を示し、約40%のうつ病患者が健常者群の下位5パーセンタイル値を基準とした値よりも低値を示した。患者群においてエタノールアミン低値群は髙値群と比べて重症度が高かった。また、エタノールアミン濃度はドパミン代謝物質であるホモバニリン酸やセロトニンの代謝物質である5-ヒドロキシインドール酢酸と有意な正の相関を示した。これらはうつ病の類型化マーカーあるいは状態依存的マーカーとなりうる可能性が示唆された。
15/01/15 東京医科歯科大学、東京大学
「アルツハイマー病の発症前・超早期病態を部分的に解明 -アルツハイマー病の治療に道筋-」
Kazuhiko Tagawa, Hidenori Homma, Ayumu Saito, Kyota Fujita, Xigui Chen, Seiya Imoto, Tsutomu Oka, Hikaru Ito, Kazumi Motoki, Chisato Yoshida, Hiroyuki Hatsuta, Shigeo Murayama, Takeshi Iwatsubo, Satoru Miyano and Hitoshi Okazawa. "Comprehensive phosphoproteome analysis unravels the core signaling network that initiates the earliest synapse pathology in preclinical Alzheimer's disease brain." Human Molecular Genetics, Vol. 24, Issue 2, 540-558, doi: 10.1093/hmg/ddu475, January 15, 2015.

<概要>アルツハイマー病(AD)研究では、発症後のアミロイド抗体療法の失敗を受けて、早期病態の重要性が増々重要視されている。本研究ではADモデルマウス4種とヒト患者死後脳を用いてリン酸化タンパク質の網羅的質量解析を行った。病態下で変動するリン酸化タンパク質を、スーパーコンピュータを用いてタンパク質間相互作用(PPI)データベースに重層して病態シグナルネットワークを作成し、さらにモデル間あるいはヒトーマウス間の共通性および時間的変動を解析した。その結果、シナプス機能に深く関連する17個のタンパク質からなるコア病態ネットワークを発見した。その一部はアミロイド凝集に先駆けてリン酸化の変動を示し、これを標的としたリン酸化阻害剤あるいは遺伝子ノックダウンによってモデルマウスのスパイン形態異常が改善した。
15/01/14 ATR
「ブレイン・マシン・インタフェースと外骨格ロボット技術に基づく脳機能理解に向けた新しい方法論を提案功 ~動作支援を可能とする外骨格ロボット技術の脳科学への応用に向けた展開~ 」
Jun Morimoto and Mitsuo Kawato. "Creating the brain and interacting with the brain: an integrated approach to understanding the brain." Journal of The Royal Society Interface, Vol. 12, Issue 104, doi: 10.1098/rsif.2014.1250, January 14, 2015.

<概要>近年、脳科学とロボティクスはそれぞれに大きく発展し、その二つの領域が融合することにより、学祭的な研究分野が生まれてきた。その中でも特に計算論的神経科学、脳のような機能の実装を目指したロボティクス、ブレインマシンインタフェースの3つの分野の理論的背景について概観し、これら3つのアプローチを統合することによる脳機能理解のための新しい方法論の開発の可能性について紹介する。
15/01/11 国立精神・神経医療研究センター
「寛解状態の単一エピソード及び反復性大うつ病性障害患者のパーソナリティ特性」
Toshiya Teraishi, Hiroaki Hori, Daimei Sasayama, Junko Matsuo, Shintaro Ogawa, Ikki Ishida, Anna Nagashima, Yukiko Kinoshita, Miho Ota, Kotaro Hattori, Teruhiko Higuchi and Hiroshi Kunugi. "Personality in remitted major depressive disorder with single and recurrent episodes assessed with the Temperament and Character Inventory." Psychiatry and Clinical Neurosciences, Vol. 69, Issue 1, 3-11, doi: 10.1111/pcn.12218, January 11, 2015.
<概要>大うつ病性障害の発症には、病前性格が関与することが知られているが、再発要因となるか否かについてはよくわかっていない。われわれは、寛解状態にある大うつ病性障害患者86名(単一エピソード群 29名、反復群 57名)、健常者 529名に対しクローニンジャーの気質性格検査(Temperament and Character Inventory)を施行した。先行研究と一致して、寛解状態にある大うつ病患者全体は健常者と比較して、有意に「損害回避」が高く、「自己志向」が低かった。次に単一エピソード群と反復エピソード群を比較したところ、損害回避とその下位項目である易疲労性 、さらに家族歴が反復性の予測因子となった。強い損害回避と易疲労性は、再発リスクの予測因子となることが示唆された。
15/01/05 自治医科大学
「オキシトシン経鼻投与の選択的な摂食抑制効果:副作用の少ない肥満・自閉スペクトラム症治療ルートの可能性」
Maejima Y., Rita R.S., Santoso P., Aoyama M., Hiraoka Y., Nishimori K., Gantulga D., Shimomura K. and Yada T. "Nasal oxytocin administration reduces food intake without affecting locomotor activity and glycemia with c-Fos induction in limited brain areas." Neuroendocrinology, doi: 10.1159/000371636. [online first]

<概要> 脳ペプチドのオキシトシンは社会性、摂食を調節しているが、末梢投与により自閉症、肥満を改善する効果が動物およびヒト臨床試験で報告されている。本研究では、有効 かつ安全なヒト臨床応用の実現のために、動物実験に用いられる腹腔内vs臨床試験で用いられる経鼻投与ルートの効果の異同を検討した。両投与ルートは同程度に摂食を抑制した。腹腔内投与と異なり、経鼻投与は自発行動(鎮静、覚醒)に影響しなかったことから直接に摂食行動を抑制しており、自閉症の社会性行動にも直接作用する可能性が示唆された。経鼻投与は、血糖にも影響せず、副作用が少ない安全な肥満、自閉症治療ルートである可能性を示唆する。
15/01/05 慶應義塾大学   名古屋大学
「リーリンは、フェンサイクリジンによって誘発される認知機能障害及び感覚運動ゲーティング障害に対して予防的効果を有する」
Kazuhiro Ishii, Taku Nagai, Yuki Hirota, Mariko Noda, Toshitaka Nabeshima, Kiyofumi Yamada, Ken-ichiro Kubo and Kazunori Nakajima. "Reelin has a preventive effect on phencyclidine-induced cognitive and sensory-motor gating deficits." Neuroscience Research, doi: 10.1016/j.neures.2014.12.013. [online first]
<概要>PCPは統合失調症様症状を誘発する薬物として知られている。我々は以前、抑制性神経前駆細胞をマウスの内側前頭前野(mPFC)に移植すると、後頭葉に移植した時とは異なり、PCPに対して抵抗性を獲得し認知機能障害等の発症を予防できることを報告した。またその際、移植した前駆細胞からは、発症予防効果のあるmPFC移植時特異的にリーリン/ソマトスタチン二重陽性の抑制性神経細胞が多く分化することを発見した。リーリンは統合失調症等との関連が示唆されているため、本研究でリーリンそのものがPCPに対する抵抗性を付与できるかを検討したところ、確かに発症を予防できることを見いだした。リーリン受容体の一つがmPFCの神経細胞に発現していることも確認した。
15/01/05 ATR
「安静にしているときの脳活動から作業記憶トレーニング効果の個人差を予測することに成功 ~認知機能を回復させる方法の開発に大きく前進~」
Masahiro Yamashita, Mitsuo Kawato and Hiroshi Imamizu. "Predicting learning plateau of working memory from whole-brain intrinsic network connectivity patterns." Scientific Reports, Vol. 5, Article 7622, doi: 10.1038/srep07622, January 5, 2015.

<概要>電話番号などを短時間記憶する「作業記憶」は精神疾患で顕著に低下する認知能力である。健常者が5分間安静にしているときの脳活動を機能的磁気共鳴画像(fMRI)装置で計測し、脳内の繋がり方のパターン(配線図)を解読した。配線図の個人差から、その人が作業記憶の訓練を受けたとき、どれだけ成績が良くなるかを、訓練前から予測することに成功した。これにより、作業記憶の上限を規定する脳のネットワークを明らかにした。
15/01/03 名古屋大学
「MMRワクチンおよびチメロサール含有ワクチンの早期暴露とASD発症のリスク」
Yota Uno, Tokio Uchiyama, Michiko Kurosawa, Branko Aleksic and Norio Ozaki. "Early exposure to the combined measles-mumps-rubella vaccine and thimerosal-containing vaccines and risk of autism spectrum disorder." Vaccine, doi: 10.1016/j.vaccine.2014.12.036. [online first]
<概要>幼児期早期のMMRワクチンやチメロサール含有ワクチンの接種が、自閉スペクトラム症(ASD)発症の危険因子となるか否かを、日本人の症例・対照研究により検討した。すなわち、生後1、3、6、12、18、24、36ヶ月の時点でのMMR接種およびワクチン接種によるチメロサール摂取量を症例群と対照群とで比較した。その結果、いずれの月齢においてもMMR接種やチメロサール摂取量と、ASD発症との関連を見出すことはできなかった。今回の結果から、幼児期早期のMMRやチメロサール含有ワクチンの接種がASD発症のリスクとなるとは考えられないことが確認された。
15/01/02 名古屋大学
「統合失調症患者および健常者におけるDISC1 Ser704Cys 多型と脳神経発達上の指標」
Tsutomu Takahashi, Mihoko Nakamura, Yukako Nakamura, Branko Aleksic, Mikio Kido, Daiki Sasabayashi, Yoichiro Takayanagi, Atsushi Furuichi, Yumiko Nishikawa, Kyo Noguchi, Norio Ozaki and Michio Suzuki. "The Disrupted-in-Schizophrenia-1 Ser704Cys polymorphism and brain neurodevelopmental markers in schizophrenia and healthy subjects." Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry, Vol. 52, 11-17, doi: 10.1016/j.pnpbp.2014.07.005, January 2, 2015.
<概要>DISC1は、多様な脳領域において神経発達やシナプス可塑性に関与し、統合失調症の病因に関連していると考えられる。しかし、統合失調症の神経発達病態に関与し得る、脳の形態学的な変化に、DISC1の遺伝子型が及ぼす影響は不明である。本研究は、統合失調症患者および健常者を対象に、DISC1 Ser704Cys 多型と、脳MRIにより得られる神経発達上の指標との関連を調べた。その結果、Cys型キャリアは、Ser型ホモと較べて透明中隔腔が有意に大きいことが確認された。本研究の結果から、DISC1の遺伝子型がヒトの脳における初期の神経発達に影響を与える可能性が示唆された。
15/01/01 東京医科歯科大学
「脊髄小脳失調症モデルマウスの遺伝子治療に成功 ~神経変性疾患の治療開発につながることを期待~」
Hikaru Ito, Kyota Fujita, Kazuhiko Tagawa, Xigui Chen, Hidenori Homma, Toshikazu Sasabe, Jun Shimizu, Shigeomi Shimizu, Takuya Tamura, Shin‐ichi Muramatsu and Hitoshi Okazawa."HMGB1 facilitates repair of mitochondrial DNA damage and extends the lifespan of mutant ataxin-1 knock-in mice." EMBO Molecular Medicine, Vol. 7, Issue 1, 78-101, doi: 10.15252/emmm.201404392, January 01, 2015.

<概要>脊髄小脳失調症1型(SCA1)は、現在治療法のない難治疾患である。我々はHMGB1が主要な病態分子であることを先に報告ししており(Qi et al, Nat Cell Biol 2007)、本研究ではHMGB1を用いた遺伝子治療によりSCA1モデルマウスに顕著な寿命延長と運動機能改善を示す治療効果を上げることに成功した。さらに、HMGB1の新たな細胞機能としてミトコンドリアDNA損傷修復を併せて示した。この成果は神経変性疾患の治療に立ちふさがる壁を破る可能性を示したもので、今後、SCA1を初めとする神経変性疾患に対する根本的治療の開発につながるものと期待される。
15/1/ 大阪大学
「経頭蓋磁気刺激用の偏心8の字コイル」
Masaki Sekino, Hiroyuki Ohsaki, Yoshihiro Takiyama, Keita Yamamoto, Taiga Matsuzaki, Yoshihiro Yasumuro, Atsushi Nishikawa, Tomoyuki Maruo, Koichi Hosomi and Youichi Saitoh. "Eccentric figure-eight coils for transcranial magnetic stimulation." Bioelectromagnetics, Vol. 36, Issue 1, 55-56, doi: 10.1002/bem.21886, January 2015.
<概要>偏心8の字コイルで、従来よりも低電流で脳内に誘起電流をおこすことができることを報告しているが、今回、偏心8の字コイルの優位性を検証するために、シミュレーションと健常者磁気刺激を施行した。同じ運動閾値を起こすのに、従来型、同心8の字コイルとくらべて、18%の電流をセーブできた(86 vs 78 A/μs )。脳内誘起電流の局在性もわずかに高かった。コンパクトな磁気刺激装置の開発につなげたい。
15/01/ 京都大学
「統合失調症の視覚処理と社会認知-眼球運動、biological motion知覚、共感の関連性から」
Yukiko Matsumoto, Hideyuki Takahashi, Toshiya Murai and Hidehiko Takahashi. "Visual processing and social cognition in schizophrenia: Relationships among eye movements, biological motion perception, and empathy." Neuroscience Research, Vol. 90, 95-100, doi: 10.1016/j.neures.2014.10.011, January 2015.
<概要>統合失調症では視覚的注意、知覚、社会認知など異なるレベルの認知機能が障害されるが、相互の関連性は明らかでない。本研究ではこの関連性を調べるため、眼球運動と高次社会認知に関わるbiological motion知覚に着目した。17名の統合失調症患者と18名の健常者を対象に、biological motion課題施行時の眼球運動を測定し、眼球運動、biological motion知覚、および両者と共感との相関を評価した。患者は注視時間が長く、注視時間が長いほど正答率が高かった。さらに、正答率および眼球運動指標と、共感指標に相関が認められた。統合失調症の注視パターンは、トップダウン注意が代償性に働くことを示唆する。また、眼球運動異常はbiological motion知覚、ひいては社会認知の障害につながると考えられる。
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