イベント情報

第2回公開シンポジウム
『生命科学から総合的人間科学へ向かう脳研究』

日 時 : 平成22年2月5日(金) 13:00~16:15
会 場 : よみうりホール(東京)
主 催 : 文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」公開シンポジウム
            運営委員会


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◇開催趣旨

    「脳科学研究戦略推進プログラム」における研究成果について、国民の皆様方にご理解いただくとともに、多くのご意見をいただきたく、公開シンポジウムを開催しました。



◇開会の辞
    文部科学省より、文部科学大臣政務官の後藤斎氏が開会の挨拶を申し上げ、また、本シンポジウムオーガナイザーを代表して、「脳科学研究戦略推進プログラム」プログラムディレクター中西重忠氏が開会の挨拶を申し上げるとともに、本プログラムの概要を説明しました。

 



    開会のご挨拶後、宮下保司脳科学委員会主査代理より、本プログラムの背景ともなっている「長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について~総合的人間科学の構築と社会への貢献を目指して~(第1次答申)<平成21年6月23日科学技術・学術審議会>」の概要について、講演が行われました。

◇第1部 13:15~13:30
「脳科学研究の基本的構想及び推進方策(平成21年科学技術・学術審議会答申)」概要について
宮下 保司 (東京大学、文部科学省脳科学委員会主査代理)

長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について
~総合的人間科学の構築と社会への貢献を目指して~ (第1次答申)
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   本プログラムの各課題の主要な成果について、各課題の先生方から講演を行いました。

◇第2部 13:30~14:05
「日本の特長を活かしたBMI」
川人 光男 (株式会社国際電気通信基礎技術研究所)

 あああああ
    ブレインマシンインタフェース(BMI)技術によって、私たちの暮らしを豊かにする第1の道筋は、医療・福祉への応用です。BMIは、脳の主要な3つの機能:感覚、中枢、運動を電気的な人工回路で再建、治療、増進する試みと言えます。感覚機能と中枢機能についてはすでに実用になっています。人工感覚型BMIの代表は、世界で20万人の聴覚を再建した人工内耳です。人工網膜も実用段階に近づき、めまいを直す人工前庭器官も研究されています。重度のパーキンソン病患者の震えをとめる脳深部刺激は沢山の方の福音となっています。世界各国で激しく研究開発競争が行われているのは、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脳卒中などで失われた運動とコミュニケーションの能力を再建し治療する運動制御型BMIです。日本は米国とドイツに10年遅れているといわれていましたが、脳科学研究戦略推進プログラムの開始などにより、30近くの大学、研究機関、企業が密に共同研究を進めてきました。その結果、第1に、非侵襲脳活動計測によるデコーディング技術、第2に、長期安定性に優れ、患者への負担が脳内刺入電極に比べて格段に低い、皮質脳波を使う低侵襲型BMI、第3にリハビリテーションを加速する治療型BMIなどで、世界をリードするようになりました。 BMI応用の第2の道筋は、情報通信分野です。コミュニケーションと情報通信は言語、文字、印刷、電信、電話、インターネットなど、人を他の動物と際だたせる最も重要な技術です。しかし、私たちがコミュニケーションでやりとりしている脳内の感情、感性、情動、情報など、本当に知りたい伝えたいことを選んで、直接に通信する技術はいまだに存在しません。『BMIとは、脳と情報通信機器を直接に接続する技術』とも言えます。従来の情報通信技術は、人の感覚受容器と運動効果器という狭い帯域を持つ隘路を通るしかありませんでした。脳と脳がBMIによりいわばテレパシー通信、以心伝心通信できる可能性が高まってきました。 



◇第2部 14:05~14:40
「ヒト脳機能異常の脳内植込み電極による制御」
片山 容一 (日本大学)

ああ あああああああああああああああああああああああああああ
    ヒトの脳内の神経回路の一部を、柔らかい植込み電極と体内埋設刺激デバイスで持続刺激すると、従来は治療が困難であった多くの脳機能異常を劇的に制御することができる。このような治療を脳深部刺激術(deep brain stimulation, DBS)と呼ぶ。私たちは、1970年代にDBSの開発と応用を開始し、中枢性疼痛(神経障害性疼痛)およびパーキンソン病などの不随意運動に対する治療法として発展させてきた。いずれも、現在では保険収載されるまでになっている。また、それ以外の脳機能異常を軽減する手段としても、さまざまな応用が試みられている。私たちは、脳卒中後遺症の克服を目指して、オン・デマンド型DBSシステムの試作を進めている。こ れは、何らかの脳内シグナルないし生体シグナルを検出し、それによって持続刺激のオン・オフを行うものである。このシステムは、脳機能異常のフィードフォワードないしフィードバック制御を可能にする。脳卒中後遺症としての運動麻痺は、必ず筋の固痙縮を伴うが、これを運動に随伴するように制御すれば、運動麻痺のある四肢の運動があきらかに改善する。また、このような試みは、脳内の神経回路に人工のクローズド・ループを付加することによってハイブリッド化することを意味している。したがって、脳内の神経回路に再学習ないし再構成を誘導すると考えられる。それによって、脳卒中後遺症などの脳機能異常を克服する新しい治療法が生まれると期待される。ただし、適切に再学習ないし再構成を誘導するためには、慎重な検討を積み重ねる必要があると考えられる。DBSの発展は、脳科学の生んだ成果を背景にしている。今後の展開には、これまで以上に、脳科学のいろいろな専門分野との緊密な連携が必要になると予想される。



◇第2部 14:50~15:25
「革新的遺伝子改変動物を用いた脳科学研究」
岡野 栄之 (慶應義塾大学)

 あああああ
    ヒト精神・神経疾患を理解するために、最近疾患特異的な人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いたアプローチに注目が集っていますが、これらの疾患を脳のシステムの中での異常としてとらえるには、当然in vivo でのモデル系が必要となります。そこでIn vivo の実験系として、これまで主に用いられてきたマウスやラットなどのげっ歯類と比べて、格段にヒトと中枢神経系が機能的・解剖学的に類似している霊長類による動物実験が期待されています。私達と実験動物中央研究所の共同研究グループは、霊長類のうちでもっとも小型で、かつ繁殖力の高いマーモセットを使用して動物実験を進め、脊髄損傷などを再生する治療法の開発やMRI脳アトラスの作成、ES細胞・iPS細胞の作成を行い、さらには理化学研究所のグループとの共同でゲノム解析に成果を挙げてきました。マーモセットは、① げっ歯類と比較して遥かに大脳皮質が発達している、②ヒトと類似したパターンでの成体脳ニューロン新生を示す、③ 特徴的な親子関係、④ 音声コミュニケーション、⑤ マカクでの高次脳機能の行動学的な解析方法を適用できる、⑥ 多くのヒト第一世代の神経疾患モデルが得られており、その解析法の開発が進められている点から、脳科学研究において注目を集めています。特に、昨年には、遺伝子改変霊長類(コモンマーモセット)の作出に成功しました(Sasaki et al., Nature, 2010)。ここで得られました個体では、遺伝子の導入された第一世代だけではなく、第二世代でも導入遺伝子の発現が認められており、次世代まで導入遺伝子が受け継がれた霊長類の作出は世界で初めてであります。現在、この遺伝子改変技術を用いてヒトのパーキンソン病、などの神経難病のモデルマーモセットの作出を進めており、これら神経難病の治療法開発研究などへの貢献が期待されます。さらに遺伝子改変マーモセット作成の技術開発を進めるとともに、ヒトあるいは霊長類に固有な脳の構造と機能の解析、さらにはこれらが障害されたヒト精神・神経疾患モデルの開発を行いたいと考えます。



◇第2部 15:25~16:00
「ユースメンタルヘルスの実現へ向けた統合失調症の早期介入研究」
笠井 清登 (東京大学)

 あああああ
    からだの健康とともに、こころの健康を育み、守ることは、一人一人の大切な権利であり、国として重要な課題です。こころの健康の破綻である精神疾患は、1/2が14歳までに、3/4が24歳までに初発し、その社会的負担は全疾病中最大であることから、思春期までの人生早期にメンタルヘルス対策を集中させることが世界的な流れとなっています。ヒトは進化の過程で脳を格段に発達させ、高度なこころ(精神機能)を持つに至りました。ヒトの脳とこころは、個体発生上も、ヒト独自のライフステージである思春期までに成熟を遂げます。このことが、精神疾患の発症が思春期までに多いことと符合しています。統合失調症は、一般人口の約1%が罹患する頻度の高い精神疾患で、思春期に幻聴・妄想などを呈して発症し、社会機能低下が慢性に続くため、社会的負担が甚大です。発症後の未治療期間が長いほど予後が悪いことが分かり、早期介入が重要な課題となっています。私たちは、神経画像を用いた前向き追跡研究によって、従来神経発達障害仮説が信じられていた統合失調症に、発症後数年に集中した大脳新皮質の進行性脳病態が存在することを明らかにしました。前駆期~初発期の進行性脳病態の脳機構を明らかにし、これを阻止するような早期診断・治療法を開発することが、統合失調症の予後を大幅に改善し、ひいては予防につながると考えられます。本講演では、私たちが推進している総合的研究(Integrative neuroimaging studies in schizophrenia targeting early intervention and prevention; IN-STEP)や、神経画像を早期診断法として実用化する試みについて紹介します。こうした活動を通じて、日本において、こころの健やかな発達を社会全体で支え、精神疾患の早期介入を推進する「ユースメンタルヘルス」の実現を目指したいと考えております。



◇総合討論 16:00~16:10
   ご参加いただいた方々からのご質問・ご意見を踏まえた総合討論も行いました。



◇閉会の辞
   プログラムディレクター津本忠治氏による閉会の挨拶をもちまして、シンポジウムは終了いたしました。

あああ







   551名の方が本シンポジウムにご参加されました。
   多数ご来聴いただき、ありがとうございました。




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