イベント情報

「脳科学研究を支える集約的・体系的な
情報基盤の構築(神経情報基盤)ワークショップ」



日 時 : 平成22年6月2日(水) 13:30~16:10
会 場 : 東京大学理学部1号館 小柴ホール
主 催 : 文部科学省

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104 名の方にお集まりいただきました。
多数のご来聴ありがとうございました。

◇開催趣旨
    文部科学省では、脳科学研究戦略推進プログラムの平成23年度の新規課題要求として、「脳科学研究を支える集約的・体系的な情報基盤の構築(神経情報基盤)」を予定しています。 本課題では、複雑かつ多階層な脳機能を解明するために、近年のバイオ技術と情報技術の著しい進歩を最大限に取り入れ、様々なモデル動物から発生する多種類(線虫からヒトまで)・多階層(分子から個体まで)情報を集約化・体系化した情報基盤の構築を目指します。
平成 23年度予算案の検討に向けて、当該領域の研究者から広くご意見をいただき、より良い予算案とするため、ワークショップを開催しました。  




◇開会の辞
13:30~13:40
    ご来賓の日本学術会議会長、文部科学省脳科学委員会主査の金澤一郎氏からご挨拶を賜り、文部科学省より倉持隆雄審議官(研究振興局担当)が開会の挨拶を申し上げました。





◇新規課題説明
13:40~13:45
    文部科学省ライフサイエンス課より、新規課題の「脳科学研究を支える集約的・体系的な情報基盤の構築 (神経情報基盤)」について説明させていただきました。
※新規課題説明資料は上のタイトル部分に掲載しております




    その後、当該分野の最新の研究動向や本課題への期待と課題について、3名の講演者による講演 が行われ、さらに当該分野の有識者、脳プロPD、参加者も交えたパネルディスカッションが行われました。




◇第1部 事例紹介
13:45~14:00
「INCFの取組について」
臼井支朗 (理化学研究所脳科学総合研究センター、INCF日本ノード:神経情報基盤センター)


    INCFはOECDの勧告に基づき2005年に設立された。我が国もこれに対応すべく文科省の要請により、理研・脳科学総合研究センターに神経情報基盤セ ンターを立ち上げ(http://www.neuroinf.jp/)、現在、日本ノードとして、視覚科学、無脊椎動物脳、マウス小脳発達トランスクリプ トーム、包括脳(旧統合脳)、脳イメージング、動的脳などのプラットフォームを公開・運用している。講演では、そうしたINCFと日本ノードの発足、その 後の経緯、展開を紹介する。日本ノードは世界に先駆け、全日本体制で展開してきた。日本ノードは、国際機関であるINCFをささえる日本の機関として脳プ ロを支援し、日本における研究成果を世界に効率的に情報発信することが使命である。特に、脳プロが短期決戦のプロジェクトである関係上、その成果を残す意 味でも、脳プロの成果を日本ノードを通じて世界に発信することを義務付けるのが適当と考える。各位と共に,我が国の新しい展開を期待したい。




◇第2部 講演
14:00~14:20
「ショウジョウバエ脳の神経画像データベースFlybrainと情報基盤整備の課題」
伊藤 啓 (東京大学分子細胞生物学研究所)


    ショウジョウバエは他のモデル生物に比べてもコミュニティによる研究基盤整備が充実しており、世界最大のストックセンターが京都にあるなど日本が果たしている役割も大きい。我々は1995年以来、インターネット最古の脳神経データベースのひとつFlybrainを運営しており、2010年には拡張性に富んだプラットフォームにハエ脳の既知の全ての神経種の情報を網羅した新サイトFlybrain Neuron Databaseを公開した。我々がストックセンターに提供した数千に上る遺伝子発現誘導系統の発現パターンデータなど公開を期待されている情報も多く、今後の展開の可能性について報告する。一方、神経のデータベースを15年間提供してきて、情報基盤整備に関する一般的な認識にはギャップを感じることも多い。データベースは論文に使ったデータの残りを集めるというやり方では作ることは難しく、むしろ情報基盤整備と論文による成果発表は利害が相反する面すらある。あまり触れられることのないこれらの課題についても話題を提供したい。


 

◇第2部 講演
14:20~14:40
「マルチスケール脳モデリングに向けて」
銅谷 賢治 (沖縄科学技術大学院大学先行研究事業)


    脳の分子、遺伝子、神経回路など様々なレベルで得られる膨大なデータを、人間の知能や情動とその病変の理解と改善へとつなげていくためには、異なるレベルでの実験的知見を階層的な定量モデルとして統合し、その計算機シミュレーションにより動作を解析し予測することが不可欠である。そのためには、遺伝子ネットワーク、細胞内シグナル伝達系、ニューロンの電気化学的コンパートメント、局所回路、感覚と行動をつなぐ全脳回路など、異なる物理スケールと基礎方程式を持つ数理モデルを連結し、効率よくシミュレーションを行いその予測精度の評価を行う手法の確立が求められる。また、すべてのレベルの詳細データを人間から得ることは非現実的であり、分子、遺伝子、細胞、回路などそれぞれの実験に適した種からのキメラ的なデータを統合してシステムを構築し、データの出所の違いを考慮してパラメタ推定を行う手法の開発も必要である。本講演では、これらに関して今日利用可能なデータやモデリング手法のサーベイを行い、今後必要かつ有望な研究開発の方向について提言することを試みる。




◇第3部 パネルディスカッション
14:50~16:05


パネリスト(左から) :
銅谷 賢治 (沖縄科学技術大学院大学)
伊藤 啓  (東京大学)
臼井 支朗 (理化学研究所)
山元 大輔 (東北大学)
森 郁恵  (名古屋大学)
宮川 剛  (藤田保健衛生大学)
    パネルディスカッションでは、全てのパネリストが多階層をつなぐということの重要性について言及しており、様々な生物種についてそれぞれの種に関する非常に幅広い研究、データベース化も進んでいる。しかし、そうしたものをうまく繋いで発展させることは容易なことではないという意見も出されました。
    また、ここでの議論を通して「神経情報」の捉え方がそれぞれの立場で異なることも明らかとなったことから、新規課題として「神経情報」を取り上げるのであれば、問題認識を共有し、良く議論をしたうえで行うことが重要ではないかという提案もなされました。




◇閉会の辞
16:05~16:10
    プ ログラムディレクター津本忠治氏が閉会の挨拶を行い、ワークショップは終了いたしました。


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