イベント情報

脳プロワークショップ                                                   
「これまでの成果と今後の在り方」



日 時 :
2011年8月22日(月) 9:30-15:45
会 場 : 神戸国際会議場5階501号室
主 催 : 文部科学省 脳科学研究戦略推進プログラム

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168名の方にご参加いただきました。
ご来場誠にありがとうございました。



◇開催趣旨
    「脳科学研究戦略推進プログラム」は、社会への応用を明確に見据えた政策課題対応型研究開発プログラムの一つであり、平成20年度に発足しました。現在、脳プロで実施しているAからEの5課題のうち、研究期間が残り2年となった2課題、「課題A:ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の開発」と「課題C:独創性の高いモデル動物の開発」についてこれまでの研究成果をご紹介し、またその成果をもとに、脳科学研究コミュニティーや社会全体への効果、および新しい展開を視野に入れた脳科学研究の在り方について議論を展開したく、ワークショップを開催いたしました。



◇開会の辞
    はじめに、中西重忠プログラムディレクターより開会のご挨拶を申し上げ、引き続き、課題A、Cの目標・戦略・運営に関してご説明させていただきました。          
 
 

中西重忠 プログラムディレクター




◇各課題の成果と新しい研究目標
座長 : 陣上久人プログラムオフィサー

<課題Cについて>
拠点長 伊佐 正 (自然科学研究機構 教授)


 

課題Cの目標:
    霊長類(マカクザル、マーモセット)の脳にウィルスベクターを用いて遺伝子導入を行う、ないしは脳科学研究に有用な遺伝子改変マーモセットラインを作製することで、高次脳機能の物質的基盤の解明、高次脳機能研究において因果律を追究する新しいパラダイムを確立する技術開発を行います。

霊長類脳への遺伝子導入技術に何が期待されているか:
    ウィルスベクターを用いる研究では、神経経路特異的に機能の修飾、操作を行うこと、ないしは機能が未知な遺伝子の機能を解明することが期待されています。また、脳研究に汎用性のある遺伝子改変マーモセットラインや精神・神経疾患のモデルマーモセットを作製することによって高次脳機能とその疾患の分子基盤の開閉、疾患の根本的治療法の開発につながる知見が得られることが期待されています。

これまでの成果:
    高頻度逆行性レンチウィルスベクターとアデノ随伴ウィルスベクターの2重感染によって特定の経路選択的にTet-ON promotorを用いて増強型テタヌストキシンとGFPの発現を可逆的に制御し、マカクザルの行動(手指の精密把持運動)に影響を与えることに成功しました。この方法の別の利点はGFPの免疫組織によって信号伝達を抑制されていたニューロンの形態を細胞体から軸索末端まで追うことができることです。
    また、マーモセットのドーパミンのD1、D2受容体のshRNAをアデノ随伴ウィルスベクターを用いて線条体に発現させ、D1、D2受容体の発現を注入部位においてほぼ完全に抑制し、かつアポモルフィン投与下の回旋行動に影響を与えることができました。
    また、遺伝子改変マーモセットの作製においては、パーキンソン病のモデルとして、異常型α-シヌクレインを発現するラインの作製、およびsynapsin promotorの下流で全脳的にtTA配列を発現するラインを作製しました。前者はパーキンソン病の発症経過の追跡、後者は様々なウィルスベクターとの組み合わせで時期・部位特異的に高い増幅率での遺伝子発現制御が可能になることが期待されます。

新技術開発:
    上述のようにウィルスベクターの2重感染法による経路特異的・可逆的遺伝子導入が可能になったことが最大の技術的成果ですが、他にもマーモセットの認知行動バッテリの開発、脳画像解析技術の開発、頭部固定下での電気生理実験系を構築しました。

今後の方向:
    今後は技術開発をさらに先鋭化して霊長類の脳神経回路の操作技術で世界をリードする位置を確固たるものにする他、当該技術に関心のある研究者と多くの共同研究体制を構築したいと考えています。


<課題Aについて>
拠点長 川人 光男 (株式会社国際電気通信基礎技術研究所 所長)


 

ブレインマシンインタフェース(BMI)とは何か:
    文字通り脳と機械を繋ぐインタフェースですが、もう少し一般的に言えば、脳と情報通信ネットワークを、電気的に直接繋ぐ技術です。

BMI研究開発に何が期待されているか:
    脳が持っている3つの主な機能、感覚情報処理、中枢意志決定、運動制御の機能を電気的な人工回路で補綴、代償、治療、回復、再建、増進するものです。デコーディング、実時間フィードバック、予測定量性、大規模データとニューロインフォマティクスなどの新技術により基礎研究を革新することも期待されています。

これまでの成果:
    脳プロ開始時には欧米に10年遅れているといわれた日本のBMI研究が、非侵襲デコーディング技術を用いた新しい認知神経科学のパラダイムの開拓、非侵襲あるいは表面脳活動記録法から脳深部活動推定技術とそれを用いたBMI制御、部位を限定した神経符号の制御による行動との因果関係の解明、低侵襲皮質脳波による義手ロボットの2週間にわたる安定制御、脳波BMIによる脳卒中患者の手首進展のリハビリテーションの成功、などなど、基礎から臨床応用まで、いくつかの重要なトピックスについては世界をリードするまでに研究が進展しました。

革新技術開発:
    このような研究の進展は、革新技術開発によって支えられています。脳情報を解読するデコーディング技術には、計算神経科学のモデルと、スパース推定技術が組み合わされています。また、非侵襲脳活動計測から、大脳皮質上の数千点の活動を推定できる階層変分ベイズ法を脳波と近赤外光計測データの組み合わせに適用できました。皮質脳波の完全埋め込みシステムを開発し、サルでの試験適用も始まりました。

今後の方向:
    これからも、基礎研究、革新技術開発、臨床応用が有機的に連携し、基礎と臨床が双方向に研究を加速し合い、革新技術開発に基づいて、新しい基礎研究パラダイムと応用分野を開拓します。このためには、複数の研究機関の連携によるネットワーク型研究が必須です。基礎科学としては、BMI技術が持つ神経符号の実験的操作、定量・予測性、大量データの獲得とインフォマティックスを重視します。脳外科、リハビリテーション、眼科領域に加えて、精神・神経疾患にBMIを広く応用することを目指します。革新技術としては、1万チャンネル長期安定記録の装置開発、超高性能な脳活動推定・デコーディング技術などを目指します。




◇各課題に関する有識者からの提言
座長 : 赤澤智宏プログラムオフィサー

<課題Cに関して>

丹治 順 
(東北大学 包括的脳科学研究・推進センター長)
米田 幸雄
(金沢大学 教授)

<課題Aに関して>

       

安西 祐一郎
(慶應義塾大学 教授)
井上 和秀
(九州大学 教授)





◇総合討論

座長 : 中西重忠プログラムディレクター




 

























◇閉会の辞

    中西重忠プログラムディレクターが閉会の挨拶を行い、ワークショップは終了いたしました。


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