ご挨拶

2009年1月   伊佐 正 

新年明けましておめでとうございます・・・なんて言おうとおもったらもう今日は15日です。少し間の抜けたお正月の挨拶です。

年末・年始とは言いながら、帰る実家があるわけではなく、受験生の娘がいるので、どこかに出かけるわけでもなく、例年通り岡崎で過ごしておりました。家の掃除を少しやって、年末に慌てて年賀状を書き、初詣をしましたが、特集号の世話をすることになった学術誌のeditorとしての仕事(Neural NetworksとCurrent Opinion in Neurobiology)、国際生理学会IUPS2009の倫理委員会としての抄録の査読、神経科学学会のシンポジウムの選出に関する仕事、たまっている論文の下書きとそのための勉強(これが少しじっくりできたのは良かった)、論文の査読1件、例年3月なのに1月に早まったCRESTの報告書の作成など、いつも通りの仕事を普段よりは少しマイペースでやっているうちに休みが終わり、今日まで至ってしまいました。最近は酒もあまり飲まなくなりました。良かったのは出張がない日が1週間続いたことでしょうか(年末は29日まで出張しておりました。新年はまだ7日に伊豆に行っただけです)。また本くらい読もうと思い、年末に本屋に行って、目についた本として、岩波明著(私の大学のときの同級生です)「狂気の偽装」(新潮文庫)を買って読みました。

岩波先生は精神科医ですが、近年「やさしい日本という国」に広がっている「心の病ブーム」に警鐘をならし、安易な「xx症候群」などの命名がいかに無意味であるかを明快に論じています。そして本来精神疾患がいかに残酷なものか、精神疾患の「ファクト」を明らかにすることを目的としてこの本を書かれている。これらは脳を「飯の種」にしている私としても社会に情報発信する際に自戒しなくてはいけないこと。身が引き締まる思いがしました。

2009年はCRESTが5年目になり、まとめのステージに入ってきているので成果を形にすること、HFSPも面白くなってきたところですがまずは3年が終わるので、これまでの成果を論文として出すこと、そしてこれらのいずれもとてもうまく行っている共同研究を継続・発展させるための財源を探すこと、そして脳プロをうまく回して成果を出していくこと、それとともに大会長をする9月の神経科学大会を成功させること、あたりが目標でしょうか。以上が研究チームとしての課題ですが、私個人の課題はあふれかえる膨大な情報をどうやって整理していくか、ということですね。いまさらながら・・・ひとつしかない身体は用事を誰かにお願いすることである程度負担は減らせますが、自分の頭はひとつしかなく、そこで処理できることはいくら巷のコンピューターの演算速度が速くなってもあまり変わらないのです(むしろ年齢とともに確実に低下している)。それが結局は律速段階になっています。そこを自覚しつつ、無理なく、きちんと頭の栄養補給を怠らず、他人に迷惑をかけることなく、できることをやっていこうと改めて思います。

以上、年頭の所感まで。

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 伊佐 正 教授 
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