新着情報

掲載日 内 容
13/12/24 東京大学
「統合失調症の思考障害が左腹外側前頭前野の脳活動と関連する可能性について指摘」
"Functional abnormalities in the left ventrolateral prefrontal cortex during a semantic fluency task, and their association with thought disorder in patients with schizophrenia. (K. Marumo et al.)"-NeuroImageにて掲載(東大・滝沢助教、笠井教授他)

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<概要>
思考障害は統合失調症の主要な症状の一つであるが、その神経基盤や意味処理の異常との関連は明らかになっていない。本研究では2種類の言語流暢性課題(文字流暢性と意味流暢性)を用いて、統合失調症の前頭前野の機能異常と思考障害との関連を検討した。統合失調症患者と健常被検者、それぞれ56名に対して、言語流暢性課題中の前頭前野の活動を近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて計測した。いずれの言語流暢性課題でも統合失調症では有意なNIRS信号の減衰を認めた。さらに意味流暢性課題のみで、左腹外側前頭前野のNIRS信号(特に脱酸素化ヘモグロビンを反映する信号)と思考障害との有意な相関を認めた。この結果は意味処理の異常を介して、Broca野などを含む左腹外側前頭前野の機能異常が統合失調症の思考障害と関連する可能性を示唆している。
13/12/24 東北大学
「社会記憶に依る恐怖の修飾」
"Role of oxytocin receptors in modulation of fear by social memory. (YF. Guzmán et al.)"-Psychopharmacologyにて掲載(東北大・西森教授他)

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<概要>
薬理学的、もしくは分子遺伝学的に外側中隔のOXTR機能を抑制したところ、social buffering効果により起きると考えられた恐怖記憶の緩和効果が抑制された。筆者らは以前、中隔のOXTRがsocial defeatによる恐怖記憶の調節(促進)に関わることを見出した。今回この中隔のOXTR系による調節能が、友好的な他個体との社会的接触は恐怖記憶を抑制するが、敵対的個体との社会的接触は逆に恐怖記憶を促進するという、両方向性の調節機能を持つことを見出した。
13/12/20 東京大学
「自閉症の新たな治療につながる可能性 -世界初 オキシトシン点鼻剤による対人コミュニケーション障害の改善を実証-」
"Mitigation of Sociocommunicational Deficits of Autism Through Oxytocin-Induced Recovery of Medial Prefrontal Activity: A Randomized Trial. (T. Watanabe et al.)"-JAMA Psychiatryにて掲載(東大・山末准教授、笠井教授他)

12/19 マイナビニュースにて掲載「自閉症の対人コミュニケーション障害はホルモン投与で改善できる!? - 東大」
12/19 msn産経ニュースにて掲載「自閉症の対人障害、ホルモン投与で改善~東大チームが解明~」
12/19 時事ドットコムにて掲載「母乳ホルモン、自閉症改善か=気持ちくみ取りやすく-東京大」
12/19 共同通信47NEWSにて掲載「自閉症の対人障害が改善~ホルモン投与で、東京大~」
12/19 SankeiBizにて掲載「自閉症の対人障害、ホルモン投与で改善~東大チームが解明~」
12/19 福井新聞FUKUISHIMBUN ONLINEにて掲載「自閉症の対人障害が改善~ホルモン投与で、東京大~」
12/19 NHK NEWSwebにて、山末准教授、笠井教授らの研究内容が取り上げられました。
          「東大のグループ 自閉症にホルモン投与で改善」
12/19 徳島新聞Tokushima Shimbun Webにて掲載「自閉症の対人障害が改善~ホルモン投与で、東京大~」
12/19 中日新聞CHUNICHI Webにて掲載「自閉症の対人障害が改善~ホルモン投与で、東京大~」
12/20 朝日新聞DIGITALにて掲載「自閉症、ホルモンを鼻に噴射して改善~東大チーム~」
12/20 毎日新聞にて掲載「自閉症:ホルモン点鼻薬を投与で改善~東大臨床試験で効果~」
12/26 あなたの健康百科にて掲載「陣痛促進剤で“コミュ障”改善、自閉症治療に光~東大~」
1/1  QLife Proにて掲載「東大~オキシトシン点鼻剤による自閉症スペクトラム障害の対人コミュニケーション能力の改善を実証」
1/6  Science Portalにて掲載「“愛情ホルモン”で対人コミュニケーション障害改善」

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<概要>
本研究は、自閉症スペクトラム障害の社会的コミュニケーションの障害に対してオキシトシン経鼻剤の単回投与が有意な改善効果を示し、その改善効果には元々低下していた内側前頭前野の脳賦活が有意に上昇することが関与していることを世界で初めて示した。東京大学医学部附属病院において40名の同障害当事者を対象としてランダム化二重盲検でクロスオーバーの医師主導臨床試験を行なった結果である。2012年に発表した論文で(Watanabe et al.(2012). Diminished Medial Prefrontal Activity behind Autistic Social Judgments of Incongruent Information. PLoS One, 7(6), e39561.)、自閉症スペクトラム障害の当事者では、表情や声色を活用して相手の友好性を判断することが有意に少なく、その際に内側前頭前野の賦活低下が背景を成すことを見出していた。今回の結果は、オキシトシンの単回投与によって、内側前頭前野の賦活が回復し、表情や声色を活用して相手の友好性を判断することが増えることを示し、元々の障害が行動と神経の両レベルで回復することを示唆した。オキシトシンによる同障害の治療可能性を支持する結果と考えられる。

13/12/19 基礎生物学研究所、生理学研究所、自治医科大学
「霊長類大脳皮質領野で特定の遺伝子のON/OFFが調節される仕組みの解明」
"DNA Methylation and Methyl-Binding Proteins Control Differential Gene Expression in Distinct Cortical Areas of Macaque Monkey. (K. Hata et al.)"-The Journal of Neuroscienceにて掲載(基生研・畑研究員、山森教授、生理学研究所・伊佐教授、自治医科大・小澤教授他)

12/19 日経プレスリリースにて掲載「基礎生物学研究所、霊長類の大脳皮質で特定の遺伝子のON/OFFが調節される仕組みを解明」
1/8 日経産業新聞にて掲載「大脳の一部でオンオフ 遺伝子のスイッチを解明」

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<概要>
大脳皮質はヒトを含む霊長類で殊に良く発達し、高次脳機能の遂行に重要な役割を果たす。本研究ではマカクザルをモデルとし、大脳皮質連合野特異的遺伝子の遺伝子プロモーターの高度なメチル化とそれと結合するメチル基結合蛋白質MBD4がその遺伝子発現制御に関わることを初めて明らかにした。
13/12/18 国立精神・神経医療研究センター
「ITIH3の遺伝子多型はGLT8D1の発現量に影響を与えることで精神疾患の疾患感受性に寄与する」
"ITIH3 polymorphism may confer susceptibility to psychiatric disorders by altering the expression levels of GLT8D1. (D. Sasayama et al.)"-Journal of Psychiatric Researchにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・篠山客員研究員、功刀部長他)

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<概要>
最近、欧米における全ゲノム関連解析によって、ITIH3 (inter-alpha-trypsin inhibitor heavy chain 3)の遺伝子多型rs2535629が精神疾患への罹患感受性に最も強く関連することが報告された。そこで本研究では、日本人におけるrs2535629と統合失調症および大うつ病性障害との関連を調べた。統合失調症患者と健常者ではアレル頻度に有意差を認め(オッズ比1.21、P = 0.0077)、同様の傾向が大うつ病性障害と健常群との間にも認められた (オッズ比1.11、P = 0.092)。全血マイクロアレイ解析の結果より、rs2535629は染色体近傍に存在するITIH4およびGLT8D1(glycosyltransferase 8 domain containing 1) の発現に影響を与えることが示された。GLT8D1の発現量は健常者と比較して大うつ病性障害患者において有意に高かった(P = 0.021)。本研究の結果から、rs2535629はGLT8D1の発現量に影響を与えることで精神疾患の疾患感受性に寄与することが示唆された。
13/12/16 東京大学
「精神病未治療期間は、統合失調症発症後しばらくして脳機能に影響を与える」
"Distinct effects of duration of untreated psychosis on brain cortical activities in different treatment phases of schizophrenia: A multi-channel near-infrared spectroscopy study. (PH. Chou et al.)"-Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatryにて掲載(東大・笠井教授他)

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<概要>
精神病が発症してから治療開始までの期間をあらわす精神病未治療期間(DUP)の長さは統合失調症の症状および機能の予後を規定する因子であり、その影響は発症後しばらくして現れることが分かっている。しかし、これまでDUPが前頭葉機能にどのような影響を及ぼすのか検討した研究はない。我々は、近赤外線スペクトロスコピィを用いた語流暢性課題施行中の脳血流変化とDUPとの関連を検討し、慢性期統合失調症ではDUPが長いほど前頭側頭葉の脳血流変化が小さいが、この関係が発症早期では認められないことを見出した。本研究は過去のDUPに着目した臨床研究の結果と矛盾はなく、近赤外線スペクトロスコピィが統合失調症の脳機能を推定するソーシャルブレインマーカとなる可能性を示した。
13/12/10 大阪大学
「家族性アルツハイマー病患者脳でアミロイドβ42の産生量は増えていない~バイオマーカーからの証拠」
"Relative Ratio and Level of Amyloid-β 42 Surrogate in Cerebrospinal Fluid of Familial Alzheimer Disease Patients with Presenilin 1 Mutations. (S. Tagami et al.)"-Neurodegenerative Diseasesにて掲載(阪大・田上助教、大河内講師、武田教授他)

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<概要>
プレセニリン1(PS1)はアルツハイマー(AD)病の原因蛋白質であり、アミロイドβ(Aβ)を産生する。PS1に変異ある患者脳には主要なAβ分子種であるAβ40ではなく、Aβ42が大量に沈着し若年で発症する。常識的に想像すると、脳内Aβ42の産生量が病原性変異のせいで増加すると考えられる。しかし培養細胞などを用いた研究では、PS1変異体酵素はAβ42の産生割合(Aβ40、Aβ42などを含む全体に比した)を増やすが、Aβ全体を作る活性が落ちるという報告が相次いでいる。Aβ42は非常に凝集しやすいため脳脊髄液中の量はその脳内産生を反映しない。このため家族性AD脳内でAβ42の脳内産生が上昇しているのか不明であった。今回、我々はAβ42のサロゲートマーカーであるAPL1β28を定量しその問題に迫った。APL1β28量は家族性AD患者脳脊髄液中で増大していなかった。むしろ、Aβ40に対応するAPL1β25の量が低下していた。よって家族性AD患者脳内でAβ42が大量に沈着するには、Aβ42産生が増大するためというよりもむしろAβ40などの他の分子種が低下するためであると考えられる。
13/12/09 広島大学
「前頭前皮質における安静状態の低周波変動と気質(損害回避と新奇性追求)との関連」
"Resting state low-frequency fluctuations in prefrontal cortex reflect degrees of harm avoidance and novelty seeking: An exploratory NIRS study. (T. Nakao et al.)"-Frontiers in Systems Neuroscienceにて掲載(広島大・中尾准教授、山脇教授他)

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<概要>
本研究では、損害回避傾向及び新奇性追求傾向といった気質と、前頭前皮質における安静時の低周波変動との関連について、健常成人を対象にNIRS(近赤外光脳機能イメージング装置)を用いて検討を行った。その結果、損害回避傾向が高い人ほど、背内側前頭部において低周波帯域活動の振幅が小さく、新奇性追求傾向が高い人ほど、腹内側前頭部の低周波活動の振幅が大きいことが明らかとなった。これらの結果は、背内側前頭部および腹内側前頭部における安静時の低周波活動の振幅が損害回避傾向と新奇性追求傾向の程度を反映することを示唆している。

13/12/06 名古屋大学
「ALS/FTLD関連タンパク質のTDP-43とFUSは、大脳皮質神経細胞においてRNAターゲット下流因子を共有する」
"The ALS/FTLD-related RNA-binding proteins TDP-43 and FUS have common downstream RNA targets in cortical neurons. (D. Honda et al.)"-FEBS Open Bioにて掲載(名大・石垣特任助教、祖父江教授他)

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<概要>
TDP-43とFUSはALS/FTLD関連因子であり機能喪失が病態に寄与する。初代大脳皮質神経細胞においてTDP-43およびFUSが制御する遺伝子プロファイルを比較解析したところ、遺伝子発現については25%以上、選択的スプライシングについては9%以上の重複を認めた。TDP-43とFUSに共通なRNA代謝経路はALS/FTLDにおける神経変性の過程に重要な可能性がある。
13/12/05 東京大学
「環境化学物質への母胎曝露が仔ラットの記憶学習機能に影響」
"Disruption of paired-associate learning in rat offspring perinatally exposed to dioxins. (M. Kakeyama et al.)"-Archives of Toxicology にて掲載(東大・掛山客員研究員、遠山教授他)

12/4 日経プレスリリースにて掲載「東大、環境化学物質への母胎曝露が仔ラットの記憶学習機能に影響することを解明」
12/8 NHK NEWSwebにて、掛山客員研究員、遠山教授らの研究内容が取り上げられました。
           「妊娠中のダイオキシン 子の脳に影響か」
12/10 マイナビニュースにて掲載「微量のダイオキシンの母体曝露でも仔ラットの高次脳機能に影響が出る - 東大」
12/12 QLife Proにて掲載「東大 母ラットの環境化学物質曝露が仔ラットの記憶学習機能に影響することを明らかに

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13/12/03 国立長寿医療研究センター
「微小管結合蛋白タウは海馬のシナプス長期抑圧誘導に必須である」
"Microtubule associated protein tau (MAPT) is essential for long-term depression in the hippocampus. (T. Kimura et al.)"-Philosophical Transactions Bにて掲載(国立長寿医療研究センター・木村室長、高島部長他)

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<概要>
アルツハイマー病で観察される神経原線維変化の主要構成成分タウは、これまで微小間結合タンパク質として軸索安定化に寄与していると考えられてきた。タウ遺伝子欠失マウスの詳細な検討から、タウはシナプス長期増強(LTP)に影響を与えずシナプス長期抑圧(LTD)のみが抑制されていることを見いだした。海馬スライスを用いshRNAによりタウ発現をノックダウンされた神経細胞ではLTDが起こらないこと、電子顕微鏡観察からタウがポストシナプスに存在することから、タウはポストシナプスにおけるLTD誘導機構で必須の役割があることが示された。神経原線維変化は樹上突起で主に形成されており、タウはLTD誘導でGSK-3β活性化を介してリン酸化される。このことからLTDが神経原線維変化の誘因になる可能性を示唆した。

13/11/28 新潟大学
「ヒト後頭側頭葉における顔領域と文字領域の交互配列」
"Alternating Zones Selective to Faces and Written Words in the Human Ventral Occipitotemporal Cortex. (T. Matsuo et al.)"-Cerebral Cortexにて掲載(新潟大・長谷川教授他)

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<概要>
顔と文字の視覚認知に関わる部位が脳の後頭側頭葉腹側面(vOT)に報告されているが、両者の位置関係や機能的結合については定説がなかった。本研究では皮質脳波法を用い、顔認知領域と文字認知領域がvOTの中で交互に配列し、前者から後者へ非対称的な機能結合があることを明らかにした。今回の発見は、一つのカテゴリー情報は連続した一つの脳領域に表現されるという通説を覆し、脳内の視覚情報処理を読み解く鍵となりうる。

13/11/21 金沢大学
「健常成人において、自閉症の素質の多さによって、人の声に対する脳の反応性が違う」
"The Brain's Response to the Human Voice Depends on the Incidence of Autistic Traits in the General Population. (Y. Yoshimura et al.)"-PLoS ONEにて掲載(金沢大・吉村研究員、菊知特任准教授、東田特任教授他)

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<概要>
「ね」という呼びかけの音声と、「ぬ」という無意味な音声に対する脳の反応の違いを脳磁図計で調べた。呼びかけに使う「ね」という音声に対する脳の反応は、主に右脳で起きているという以前の我々の研究論文を再現した。その上で、我々の予測と反して、健常人のなかの自閉症の素質が高い人ほど、右脳での反応が大きかったという結果が得られた。つまり、自閉症の素質が含まれている健常人は、意外にも、呼びかけの音声への脳の反応が大きいということが明らかとなった。
13/11/21 広島大学
「寛解期双極性障害患者の心理社会的機能は言語流暢性課題遂行中の前帯状回および左外側前頭前野の賦活と関連する:機能的MRIを用いた予備的研究」
"Psychosocial functioning is correlated with activation in the anterior cingulate cortex and left lateral prefrontal cortex during a verbal fluency task in euthymic bipolar disorder: A preliminary fMRI study. (Y. Yoshimura et al.)"-Psychiatry and Clinical Neurosciencesにて掲載(広島大・山脇教授他)

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<概要>
双極性障害患者の心理社会的・職業的機能の障害には、認知機能の障害が密接に関与していることが示唆されているがその神経基盤は十分明らかにされていない。今回、我々は寛解期の双極性障害患者を対象に認知課題遂行中の前頭葉の賦活機能と心理社会的機能との関連について、機能的MRIとを用いて調べた。その結果、患者の機能の全体的評価尺度の得点は、言語流暢性課題遂行中の前帯状回および左外側前頭前野の賦活機能と正の相関を示すことが明らかとなり、これらの領域の機能の回復が心理社会的機能の回復に重要であることが示唆された。
13/11/21 北海道大学
「幼少期の光で、遺伝性概日リズム障害を克服」
"Postnatal constant light compensates Cryptochrome1 and 2 double deficiency for disruption of circadian behavioral rhythms in mice under constant dark. (D. Ono et al.)"-PLoS ONEにて掲載(北大・本間さと特任教授、本間研一客員教授他)

11/21 北日本新聞ウェブ版にて掲載「光で1日の生活リズム回復 北大大学院のチーム発表」
11/21 山陽新聞ニュースにて掲載「光で1日の生活リズム回復 北大大学院のチーム発表」
11/22 日本経済新聞 電子版にて掲載「光で1日の生活リズム回復 北大大学院チームが解明」
12/03 QLife Proにて掲載「北大 幼少期の光が概日リズム障害を回復することを発見」
12/10 WEBジャーナルOPTRONICSにて掲載「北大、幼少期の光で遺伝性概日リズム障害を克服できることを発見」

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<概要>
時計遺伝子Cryptochrome (Cry)を欠損するマウスでは離乳期までに生物時計中枢における振動ネットワークが消失し、概日リズムが破綻するが、新生児視交叉上核由来の液性因子により組織内振動ネットワークが回復する。本研究では、生体内におけるリズム回復機序解明のため、幼若期における光環境の変化が成長後の概日リズムに与える影響を検討した。その結果、生後直後から7週齢まで連続照明下で飼育したCry欠損マウスでは、恒常暗において行動リズムが出現することが明らかになり、発達過程における光環境が時計遺伝子欠損に伴う概日リズムの破綻を代償することが明らかとなった。

13/11/19 北海道大学
「ドパミン神経系の組織概日振動体は視交叉上核とメタンフェタミン誘導性振動体(MAO)による二重支配を受ける」
"Dual regulation of clock gene Per2 expression in discrete brain areas by the circadian pacemaker and methamphetamine-induced oscillator in rats. (A. Natsubori et al.)"-European Journal of Neuroscienceにて掲載(北大・夏堀研究員、本間客員教授他)

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<概要>
中枢覚醒剤メタンフェタミン(MAP)投与による双極性障害モデルラットを用い、特徴的な行動リズム障害の脳内メカニズムを、発光レポーターを用いた時計遺伝子発現リズム解析により検討した。その結果、嗅球、黒質など複数のドパミン神経系組織における時計遺伝子概日リズムは、中枢時計が存在する視交叉上核とMAP投与により形成される新奇振動体(MAO)の二重支配を受けることが明らかとなった。さらに、振動体MAOは、前記ドパミン神経系の組織概日振動体群がMAPによって再構成された結果、複合振動体として機能していることが示唆された。
13/11/15 東京大学
「統合失調症におけるソーシャルブレインマーカーとしての近赤外線スペクトロスコピィ(fNIRS)の有用性を概説」
"Near-infrared spectroscopy in schizophrenia: a possible biomarker for predicting clinical outcome and treatment response. (S. Koike et al.)"-Frontiers in Schizophreniaにて掲載(東大・笠井教授他)

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<概要>
本総説論文は、統合失調症におけるソーシャルブレインマーカーとしての近赤外線スペクトロスコピィ(fNIRS)の有用性について論じたものである。fNIRSは、近赤外線を使用して血流変化を計測する技術である。機能的MRIと比して空間分解能が低く、脳深部の計測ができないなどの欠点があるが、計測が簡便、持ち運び可能、ある程度の頭部の動きを許容するなどの利点があり、精神疾患の研究に適している。これまでの精神疾患を対象としたfNIRS研究においては語流暢性課題での研究が多く、日本での成果は2009年に精神疾患領域で初めて先進医療に収載された。統合失調症のfNIRS研究は2013年4月までに29報あり、精神疾患の種類別には最多である。本論文では統合失調症を対象としたfNIRS研究を概説した。今後、fNIRSの特徴をさらに生かして、会話課題などの社会的コンテクストに沿った研究を推進することの必要性を論じた。
13/11/15 東京大学、 広島大学
「発達期のシナプス結合を選別するメカニズムを解明 ~生後間もなくの神経細胞の「活動タイミング」が脳の発達の決め手に~」
"Spike timing-dependent selective strengthening of single climbing fibre inputs to Purkinje cells during cerebellar development. (Y. Kawamura et al.)"-Nature Communicationsにて掲載(東大・喜多村准教授、狩野教授、広島大・橋本教授他)

11/14 日経プレスリリースにて掲載「東大など、発達期のシナプス結合を選別するメカニズムを解明」
11/15 マイナビニュースにて掲載「東大、ヒトの生後発達期のシナプス結合を識別するメカニズムを解明

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<概要>
発達期小脳における活動依存的な登上線維シナプスの刈り込みメカニズムを明らかにするために、in vivoパッチクランプ法を用いた解析を行った。幼若期のプルキンエ細胞は複数の登上線維から同期した入力を受け、特徴的なバースト発火とそれに伴う細胞内カルシウム上昇を起こすこと見出した。さらに、バースト発火に最も近いタイミングで入力する登上線維が選択的に強化されることを明らかにし、登上線維の選択的強化に異常があるP/Q型カルシウムチャネル欠損マウスでこの発火タイミング依存的な強化が障害されていることを示した。これらの結果は、発火タイミングおよびカルシウム依存的な可塑性が登上線維シナプスの選択的強化と成熟のメカニズムであることを示唆している。

13/11/13 横浜市立大学
「トラウマ記憶の形成を仲介する分子を特定!! ~PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの治療の糸口に~」
"A cholinergic trigger drives learning-induced plasticity at hippocampal synapses. (D. Mitsushima et al.)"-Nature Communicationsにて掲載(横浜市大・高橋教授他)

11/13 神奈川新聞にて掲載「「心の傷」解明へ前進、市大大学院研究グループが仲介物質を特定」
11/13 日刊工業新聞Business Lineにて掲載「脳海馬の神経伝達物質増加、恐怖記憶形成に関与-横浜市大が解明」
11/13 マイナビニュースにて掲載「横浜市大、恐怖体験の記憶が形成される際に働く分子を特定」

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<概要>
恐怖記憶が形成される際に海馬においてAMPA受容体がシナプスへ移行するということは本研究グループによって以前発表された(Mitsushima et al. PNAS 2011)。本研究においては恐怖記憶形成の際に海馬におけるアセチルコリンの分泌が増加し、これがAMPA受容体シナプス移行を仲介しているということを明らかにした。
13/11/13 国立精神・神経医療研究センター
「外来うつ病患者におけるコーピング様式:デキサメタゾン/CRH 負荷テストに対するコルチゾール反応性との関連」
"Psychological coping in depressed outpatients: Association with cortisol response to the combined dexamethasone/CRH test. (H. Hori et al.)"-Journal of Affective Disordersにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・堀客員研究員、功刀部長他)

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<概要>
うつ病は、非適応的なコーピング様式(ストレス対処法)や、視床下部-下垂体-副腎系の機能異常と関連することが知られている。今回、外来うつ病患者を対象に、質問紙で測定したコーピング様式と、デキサメタゾン/CRH負荷テストに対するコルチゾール反応性との関連を調べた。「回避」のコーピングをよく用いる者はコルチゾール反応が減弱しており、あまり用いない者ではコルチゾール反応が増大していた。以上から、うつ病は、ストレスに対するホルモン反応が減弱しておりストレスを回避する群と、ホルモン反応が増大しており回避しない群とに分けられる可能性が示唆された。

13/11/08 藤田保健衛生大学、名古屋大学   理化学研究所   国立精神・神経医療研究センター
「2型糖尿病GWASで報告されたリスク多型の日本人精神科疾患における遺伝学的関連解析」
"Genetic association study between the detected risk variants based upon type II diabetes GWAS and psychotic disorders in the Japanese population. (Y. Kajio et al.)"-Journal of Human Geneticsにて掲載(藤田保健衛生大・近藤研究員、岩田教授、理研・吉川チームリーダー、国立精神・神経医療研究センター・功刀部長、名大・尾崎教授他)

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<概要>
過去の疫学的研究の証左によると、統合失調症や双極性障害など精神病性障害は、2型糖尿病の有病率が一般人口よりも有意に高いと報告されている。その理由の1つとして、2型糖尿病と精神病性障害とに共通する遺伝的基盤の存在が考えられる。本研究では、上記の仮説に基づき、日本人統合失調症、双極性障害を対象にして、既報2型糖尿病GWAS(全ゲノム関連研究)の結果をもとに選出したリスク多型が、精神病性障害と関連するかを検証した。その結果、有意な関連を示す多型は認められず、日本人において2型糖尿病と精神病性障害に共通する遺伝的要因を同定することはできなかった。
13/11/07 国立精神・神経医療研究センター
「健常女性における視床下部ー下垂体ー副腎系の過活動と脳の変化」
"Hypothalamic-Pituitary-Adrenal Axis Hyperactivity and Brain Differences in Healthy Women. (M. Ota et al.)"-Neuropsychobiologyにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・功刀部長他)

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<概要>
本研究は、34名の健常女性を対象にデキサメタゾン/CRH負荷テストによって、視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA系)の活動性を測定し、MRI画像によって得られた大脳皮質や白質の脳構造との関連を検討した。その結果、海馬やその周辺および帯状回領域においてHPA系の過活動と拡散テンソル画像によって捉えた神経ネットワークの低下が関連することを見出した。以上から、ストレスホルモンの制御異常によって、これらの脳領域の神経ネットワークが傷害されることが示唆された。
13/11/01 東京医科歯科大学
「脊髄小脳失調症の病態を制御する遺伝子を発見」
"Systems biology analysis of Drosophila in vivo screen data elucidates core networks for DNA damage repair in SCA1. (S. S. Barclay et al.)"-Human Molecular Geneticsにて掲載(東京医科歯科大・田村助教、岡澤教授他)

10/31 マイナビニュースにて掲載「TMDU、「脊髄小脳失調症1型」に大きな関連を示す遺伝子を発見」
10/31 日経プレスリリースにて掲載「東京医科歯科大など、脊髄小脳失調症の病態を制御する遺伝子を発見」
11/7 WEBジャーナルOPTRONICSにて掲載「東京医歯大、脊髄小脳失調症の病態を制御する遺伝子を発見」

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<概要>
脊髄小脳失調症1型の病態に作用するDNA修復因子についてショウジョウバエライブラリーを用いてスクリーニングをした後に、システムズバイオロジー解析を行って病態分子ネットワークを調べた。その結果、神経細胞で優位に機能するDNA2重鎖切断修復機構であるnon-homologous end joiningに加えて、意外なことに分裂細胞で用いられるhomologous recombinationによるDNA修復機構が働いていることを明らかにした。その中心分子としてRpA1, Chk1が重要であること、それらをターゲットにすること(RpA1過剰発現もしくはChk1抑制)で少なくともショウジョウバエモデルに対しては寿命延長などの治療効果があることを示した。
13/10/17 国立精神・神経医療研究センター
NHK総合「NHKスペシャル」に国立精神・神経医療研究センター・功刀部長が出演
【放    送】:10月20日(日) 21時00分~21時49分(予定) NHK総合「NHKスペシャル」
【テーマ】:「病の起源 第3集 うつ病~防衛本能がもたらす宿命~」
ストレスホルモンの検査や脳画像などの脳科学的検査をご紹介いたしました。

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13/10/16 東京大学
「統合失調患者に適したウェクスラー式知能検査改訂版(WAIS-R)簡略版の開発」
"Development of brief versions of the Wechsler Intelligence Scale for schizophrenia: Considerations of the structure and predictability of intelligence. (C. Sumiyoshi et al.)"-Psychiatry Researchにて掲載(東大・笠井教授他)

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<概要>
ウェクスラー式知能検査は、教育や臨床場面で広く利用される標準的な知能検査であり、全般性知能に加え、言語性・動作性知能について評価することができる。しかしこの検査は、認知領域全般に障害を示す統合失調患者にとっては負担が大きく、統合失調症患者に適した簡略版が望まれていた。そこで本研究では、①統合失調症患者の知能の構造、②全般性知能の予測力、③臨床的背景(教育年数・罹病期間・精神症状)の影響を受けにくい、という観点から、統合失調患者に対応するWAIS-Rの簡略版開発を試みた。因子分析、重回帰分析等の解析結果、言語性課題、動作性課題から各1課題の組み合わせ(単語と積み木模様)が、上記基準を満たす簡略版であることが明らかになった。本研究のように、複数の観点から簡略版の適切性を検討することは、WAIS-Rの後継版であるWAIS-IIIやWAISI-Vにおける簡略版の作成にも示唆を与えると思われる。
13/10/16 東京大学
「精神病の早期介入における「トランスレータブル」マーカーとしてのミスマッチ陰性電位」
"Mismatch Negativity as a "Translatable" Brain Marker Toward Early Intervention for Psychosis. (T. Nagai et al.)"-Frontiers in Psychiatrysにて掲載(東大・永井助教、笠井教授他)

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<概要>
最近の研究によると、精神病の未治療期間が短いほどその後の症状や社会機能がいいことが報告されている。精神病になるリスクの高い人々へ早期介入することで、精神病の発症を遅らせたり予防したりできるかもしれない。精神病の早期発見・早期介入に際して、バイオマーカーの同定は重要である。ミスマッチ陰性電位(mismatch negativity: MMN)は事象関連電位のひとつであり、バイオマーカーの候補である。慢性期の統合失調症患者ではMMN振幅が減衰していることが繰り返し報告されているが、最近では精神病性障害の早期段階でもMMN振幅が減衰していることが報告されている。これまでの研究結果は、精神病性障害の臨床病期を同定したり、精神病の発症を予測したりする上でMMNが有用であることを示唆する。MMNは、統合失調症の病態生理で重要な役割を果たしているNMDA受容体機能を反映しており、マウスやラットなどの動物でも測定することができる。こうした点からMMNは「トランスレータブル」なマーカーである。この総説では、精神病性障害の早期段階におけるMMN研究を概説し、精神病の早期発見・早期介入におけるバイオマーカーとしてのMMNの可能性について検討した。後半では、動物モデルにおけるMMNのトランスレータブルマーカーとしての可能性についても検討した。
13/10/11 金沢大学
「自閉症スペクトラム障害児における聴覚野の特殊な発達を発見!」
"Atypical brain lateralisation in the auditory cortex and language performance in 3- to 7-year-old children with high-functioning autism spectrum disorder: a child-customised magnetoencephalography (MEG) study. (Y. Yoshimura et al.)"-Molecular Autismにて掲載(金沢大学・吉村研究員、菊知特任准教授、東田特任教授他)

10/11 中日新聞 CHUNICHI Webにて掲載「発達障害児 金大が初確認 脳の聴覚野 反応に違い:北陸発:北陸中日新聞から」

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<概要>
自閉症スペクトラム障害に関連する幼児期の脳機能については明らかになっていない。今回、3-7歳の自閉症スペクトラム児と健常児を対象に人の声に対する脳反応を小児用脳磁計(MEG)を用いて比較した。その結果、脳反応の左半球への側性化において健常児群との相違が認められた。さらに今回、定型発達においては言語発達に伴った聴覚野の脳機能の成長過程が認められたが、自閉症スペクトラム幼児では認められなかった。言語にかかわる聴覚野の成熟パターンが、自閉症スペクトラム障害者では異なっている可能性が示唆された。

13/10/11 山口大学
「大うつ病性障害における灰白質体積と即時意思決定」
"Gray matter volume and rapid decision-making in major depressive disorder. (M. Nakano et al.)"-Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatryにて掲載(山口大・松尾講師他)

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<概要>
うつ病患者の負のフィードバックに伴う即時意思決定と脳体積の関係について調べた。結果、健常群と比べて、患者群は負のフィードバック後に高リスク選択する確率は有意に低く、右内側前頭前野と眼窩前頭皮質灰白質体積が小さかった。右眼窩前頭皮質灰白質体積が小さい患者ほどこの行動をとる割合が高かった。うつ病患者の内腹側前頭前野は異常な意思決定の病態に関与していることが示唆された。

13/10/09 自治医科大学
「糖尿病に合併する内臓肥満を脳由来神経栄養因子BDNFが改善」
"Brain-derived neurotrophic factor in VMH as the causal factor for and therapeutic tool to treat visceral adiposity and hyperleptinemia in type 2 diabetic Goto-Kakizaki rats. (F. Maekawa et al.)"-Frontiers in Synaptic Neuroscienceにて掲載(自治医科大・矢田教授他

10/9 下野新聞電子版にて掲載「脳内物質が内臓脂肪減~ラットでメカニズム解明~自治医大」
※10/9下野新聞朝刊にも掲載されています。

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<概要>
糖尿病に罹患するとしばしば内臓脂肪の蓄積がおこり、それが糖尿病とその合併症を増悪させる原因となっている。糖尿病モデル動物"GKラット"もヒト同様に内臓脂肪蓄積を示す。自治医科大学・矢田教授と国立環境研究所・前川主任研究員らは、今回、摂食障害、うつ、認知障害など、様々な脳疾患と深く関係する脳由来神経栄養因子BDNFに着目し、GKラットの脳内での発現を調べた。その結果、糖尿病が進行するに従って、全身エネルギー代謝を制御する神経核"視床下部腹内側核"でBDNFの発現が著しく低下することを世界で初めて明らかにした。さらに、その低下をBDNF投与により補ったところ、内臓脂肪量が減少し高血糖も一部改善した。これらの結果は、BDNFの低下は糖尿病に伴う内臓肥満の一つの成因であり、BDNFの補充がその治療に有効である可能性を示している。
13/10/04 平成25年度「脳科学研究戦略推進プログラム」「BMI技術を用いた自立支援、精神・神経疾患等の克服に向けた研究開発(BMI技術)」及び「霊長類モデル動物の創出・普及体制の整備(霊長類モデル)」の2つの課題の実施機関等が決定いたしました。
※詳細はこちら(文部科学省HP)

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13/10/02 横浜市立大学
「小児の難治性てんかんの原因遺伝子を発見」
"De Novo Mutations in GNAO1, Encoding a Gαo Subunit of Heterotrimeric G Proteins, Cause Epileptic Encephalopathy. (K. Nakamura et al.)"-The American Journal of Human Geneticsにて掲載(横浜市大・才津准教授、松本教授他)

8/30 マイナビニュースにて掲載「横市大、小児の難治性てんかんの原因遺伝子を発見 - 新たな発症機構を示唆」
9/4 WEBジャーナルOPTRONICSにて掲載「横浜市大、小児の難治性てんかんの原因遺伝子を発見」
9/10 QLife Proにて掲載「横浜市立大学らの研究グループ~小児の難治性てんかんの原因遺伝子を発見~」

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<概要>
全エクソーム解析を利用して、379例の難治性てんかん患者中4例に GNAO1 遺伝子の新生突然変異を認めた。4名の患者は、難治性てんかんに加えて、知的障害、運動発達障害を呈し、うち2名には、不随意運動を伴っていた。 GNAO1 遺伝子は、神経細胞における細胞内シグナル伝達に重要な役割を果たすヘテロ3量体Gタンパク質のαサブユニット(Gαo)をコードする。3量体Gタンパク 質の立体構造モデルにおいて、同定した4つの変異はタンパク質構造を不安定にする、あるいはシグナル伝達障害を引き起こすことが示唆され、変異Gαo発現 細胞では、細胞内での発現部位の変化とカルシウム電流の抑制障害が疑われた。
13/10/02 横浜市立大学
「UDP-ガラクトース輸送体をコードするSLC35A2のde novo変異は早期発症けいれん性脳症を引き起こす」
"De novo mutations in SLC35A2 encoding a UDP-galactose transporter cause early-onset epileptic encephalopathy. (H. Kodera et al.)"-Human Mutationにて掲載(横浜市大・才津准教授、松本教授他)

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<概要>
12例の早期発症てんかん性脳症に対する全エクソーム解析と328例の同疾患症例に対するスクリーニングで4名の女児症例にSLC35A2変異を同定した。症例は全例特異顔貌と脳萎縮を認め、重度の知的障害を呈した。SLC35A2はUDP-ガラクトース輸送体をコードし、本遺伝子の変異はタンパク質の糖鎖修飾異常を来すと想定される。症例の血清蛋白質を用いた糖鎖修飾異常の検討では異常を同定できなかったが、これは女児症例におけるX染色体不活化の偏りにより変異SLC55A2(X染色体上にマップ)が不活性化しているためであると考えられた。
13/10/01 東京大学
「精神病の早期段階における持続時間変化と周波数変化に対する聴覚性ミスマッチ陰性電位およびP3a」
"Auditory mismatch negativity and P3a in response to duration and frequency changes in the early stages of psychosis. (T. Nagai et al.)"-Schizophrenia Researchにて掲載(東大・永井助教、笠井教授他)

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<概要>
統合失調症では精神病未治療期間が短いほど予後がよいため、早期発見・早期援助が重要である。聴覚性ミスマッチ陰性電位(mismatch negativity: MMN)とP3aは生物学的指標の有力な候補であり、早期発見・早期援助に有用であるかもしれない。MMNは逸脱刺激の種類により異なる特性を示すが、精神病性障害の早期段階ではこの点について十分に検討されていない。今回我々は、精神病性障害の早期段階において、持続時間を逸脱させた刺激に対するMMN(duration MMN: dMMN)とP3a(duration P3a: dP3a)および周波数を逸脱させた刺激に対するMMN(frequency MMN: fMMN)とP3a(frequency P3a:fP3a)を検討した。被験者は初回エピソード統合失調症患者20人、超ハイリスク群21人、健常対照群22人であった。初回エピソード統合失調症群と超ハイリスク群では健常対照群と比べて、dMMN、dP3a、fP3aの振幅減衰を認めた。一方で、fMMN振幅は群間で有意差を認めなかった。本研究の結果から、精神病性障害の早期段階においてdMMNがfMMNよりも感度が高いこと、dP3aとfP3aは同等の感度を持つことが示唆された。
13/09/30 金沢大学
「側坐核のCD38とオキシトシンが父性行動に関与する」
"CD38 in the nucleus accumbens and oxytocin are related to paternal behavior in mice. (S. Akther et al.)"-Molecular Brainにて掲載(金沢大・Akther研究員、東田特任教授他)

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<概要>
CD38ノックアウトマウスは父親行動を示さない。そのマウスの側坐核にレンチウイルス発現法でCD38の局所発現を行うと、仔どもを巣に運ぶ両親行動を示す様になる。オキシトシンを皮下投与すると父親行動は100%まで回復する。このことは、仔どもを認識し、それに対する父親行動には、側坐核のオキシトシン及びオキシトシン受容体が関与する事を示す。
13/09/30 東京大学
「亜鉛欠乏に対する新しい細胞応答の機構を解明~筋萎縮性側索硬化症の病態解明に向けて~」
"SOD1 as a Molecular Switch for Initiating the Homeostatic ER Stress Response under Zinc Deficiency. (K. Homma et al.)"-Molecular Cellにて掲載(東大・本間特任研究員、一條教授他)

9/27 日経プレスリリースにて掲載「東大、亜鉛欠乏に対する細胞応答の機構を解明」
9/30 WEBジャーナルOPTRONICSにて掲載「東大、ALSの亜鉛欠乏に対する新しい細胞応答の機構を解明」
10/2 マイナビニュースにて掲載「亜鉛の欠乏がALSに関与する遺伝子変異を引き起こす - 東大が確認」
10/8 朝日新聞DIGITALにて掲載「ALS、亜鉛失い発症か 東大チームが解明」
**本論文は、Nature Chemical Biology; Research Highlightsとして取り上げられました**

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<概要>
我々は家族性のALSを引き起こす変異型SOD1が、野生型とは異なる共通した立体的な構造をとることで神経細胞死を引き起こすことを過去に報告した。本研究では、野生型SOD1が亜鉛欠乏環境下で変異型と同様の構造に変化することで、亜鉛欠乏細胞の恒常性の維持に寄与していることを明らかにした。本研究成果により、SOD1は抗酸化酵素としての機能の他に、亜鉛欠乏に応答する分子スイッチとしても働くことが示唆された。
13/09/26 福島県立医科大学
「融合糖タンパク質を用いたレンチウイルスベクターによる運動ニューロンへの高頻度逆行性遺伝子導入」
"Highly Efficient Retrograde Gene Transfer into Motor Neurons by a Lentiviral Vector Pseudotyped with Fusion Glycoprotein. (M. Hirano et al.)"-PLoS ONEにて掲載(福島県立医大・小林教授他)

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<概要>
神経細胞の生存や保護に関わる因子を導入するための遺伝子治療技術の発達は、神経変性疾患に対する効果的な治療法を提供する。いくつかのウイルスベクターは筋肉内注入により、運動ニューロンへ逆行性の遺伝子導入を示す。本研究では、融合糖タンパク質を利用したレンチウイルス(HiRet)ベクターは、従来の狂犬病ウイルス糖タンパク質を用いたベクターに比較して、脊髄および後脳運動ニューロンに対して顕著に高い頻度の逆行性遺伝子導入を誘導することを明らかにした。HiRetベクターは運動ニューロンへの選択的で効率的な遺伝子導入のための有益な研究ツールを提供する。
13/09/26 広島大学
「顔の親しみやすさの評価における自動的な脳活動と意図的な脳活動について~不安特性との関連~」
"Automatic and Intentional Brain Responses during Evaluation of Face Approachability: Correlations with Trait Anxiety. (S. Toki et al.)"-Neuropsychobiologyにて掲載(広島大・土岐特任助教、山脇教授他)

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<概要>
顔の親しみやすさの評価は社会的な交流に先立つ重要な要素である。我々は機能的MRIを用いて、顔の親しみやすさの判断と不安特性との関連を調べた。中性の表情は曖昧な信号であるため、親しみやすさの判断を難しくさせた。また、中性表情の親しみやすさを判断している際の左扁桃体活動は、不安特性の高さと正の相関を示した。こうした知見から、曖昧な脅威に対する感受性の脳基盤として、扁桃体の機能が関与していることが予想された。
13/09/26 広島大学
「単語ペアの連合記憶時における海馬活動とうつ病における症状改善度との関連について~機能的MRIと構造MRIを用いた研究~」
"Hippocampal activation during associative encoding of word pairs and its relation to symptomatic improvement in depression: A functional and volumetric MRI study. (S. Toki et al.)"-Journal of Affective Disordersにて掲載(広島大・土岐特任助教、山脇教授他)

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<概要>
情動記憶の変容はうつ病の原因となる中核的な認知機能障害の一つである。今回、我々は海馬の機能とうつ病、その回復過程との関連について、機能的MRIと構造MRIを用いて調べた。患者ではポジティブな単語ペアを記銘する際の左海馬活動が低下しており、ネガティブな単語ペアを記銘する際の右海馬活動が亢進していた。前者の海馬活動の低下度は薬物療法への反応性の低下と相関していた。これらの結果は海馬構造を変数に投入しても不変であった。うつ病における海馬活動の低下はポジティブな情報の記銘を阻害することで、治療反応性に影響していることが示唆された。
13/09/19 東京大学
「自閉症スペクトラム障害の血液中マーカーの開発につながる成果~血液中の代謝産物の網羅的な解析によって同定~」
"Altered Metabolites in the Plasma of Autism Spectrum Disorder: A Capillary Electrophoresis Time-of-Flight Mass Spectroscopy Study. (H. Kuwabara et al.)"-PLoS ONEにて掲載(東大・桑原助教、山末准教授、笠井教授他)

9/19 日経プレスリリースにて掲載「東大、自閉症スペクトラム障害の血液中マーカーの開発につながる研究成果を発表」
9/20 日刊工業新聞Business Lineにて掲載「東大、血液で自閉症診断-4種の代謝産物指標に」
9/24 マイナビニュースにて掲載「「自閉症スペクトラム障害」の客観的な診断方法の確率に前進 - 東大病院」
10/1 QLife Proにて掲載「東京大学 自閉症スペクトラム障害の血中マーカーに見込まれる代謝産物を発見」

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<概要>
自閉症スペクトラム障害の診断や重症度を客観的に評価する方法は乏しく、病態を反映する客観的なバイオマーカーの開発が望まれている。本研究では、末梢血液中の分子マーカーを同定するために、向精神薬服薬歴や併発精神神経疾患を有さない高機能自閉症スペクトラム障害当事者の末梢血液を用いて、初めての網羅的メタボローム解析を行った。その結果、これらの同障害当事者では年齢の一致した定型発達の対照に比べて、アルギニンなどの4つの分子の血漿中濃度に有意な偏倚を認めた。そして、その結果の頑強さは、相対濃度を用いた2つの独立したサンプルでの解析で再現されること、絶対濃度を用いた統合したサンプルでの解析でも再現されること、から示された。またさらに、4つの代謝産物濃度を用いた判別分析の結果からは、独立したサンプルのどちらのでも有意に高い確率で当事者と対照が判別された(80.0%, 78.8%)。これらの結果から、代謝産物濃度の血中バイオマーカーとしての有用性が示唆された。

13/09/17 横浜市立大学
「複数のベンチトップ型次世代シーケンサーを使用した、自閉症スペクトラム疾患の網羅的な変異解析 ~マイクロドロップレットPCR産物を用いた新しいターゲットリシーケンス法の検証と確立~」
"Performance Comparison of Bench-Top Next Generation Sequencers Using Microdroplet PCR-Based Enrichment for Targeted Sequencing in Patients with Autism Spectrum Disorder. (E. Koshimizu et al.)"-PLoS ONEにて掲載(横浜市立大学・輿水博士研究員、宮武博士研究員、松本教授他)

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<概要>
マルチプレックスPCRに、パーソナル次世代シーケンサー(PGMおよびMiSeq)を組み合わせ、大量の並列変異解析を行うターゲットリシーケンス法の確立を目的とした。解析標的はASD関連62遺伝子(2349アンプリコン、100万塩基領域)で、対象は自閉症スペクトラム疾患(ASD)患者28例である。PGMで検出した21個のSNVは全てMiSeqで検出された。MiSeqのみが検出したSNVは1個であった。同定された22個のSNVの効果を複数の病的意義予測プログラムで検討した結果、73%のSNVはいずれかのプログラムで病的変異と判定された。そのうち18個のSNVは、日本人健常コントロール(424人)には認められず、非常に稀なSNVであると考えられた。また、5症例では2つ以上の遺伝子に変異が認められた。本解析方法は、短期間で安価に大量の遺伝子変異解析を行う系として有用である。
13/09/13 東京大学
「統合失調症とうつ病における社会生活機能障害と関連する脳活動部位が異なる可能性について指摘」
"Differential spatiotemporal characteristics of the prefrontal hemodynamic response and their association with functional impairment in schizophrenia and major depression. (M. Kinou et al.)"-Schizophrenia Researchにて掲載(東大・滝沢助教、笠井教授他)

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<概要>
統合失調症とうつ病において、それぞれの神経基盤が異なる可能性が指摘されているが、社会生活機能との関連の違いは明らかになっていない。本研究では統合失調症32名とうつ病32名の言語流暢性課題中の前頭前野の活動について近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて計測し、その信号と社会生活機能の障害の程度との関連を検討した。健常者32名と比較すると、先行研究と同様に、いずれの疾患も前頭前野の信号変化量は有意に低下していた。しかし、信号の初期変化(傾き)を比較すると、統合失調症のみ有意な低下を示し、うつ病では健常者と差異がなかった。さらに、社会生活機能障害との有意な相関があったのは、統合失調症では前頭極を中心とした領域で、うつ病では腹外側前頭前野を中心とした領域であり、部位が異なっていた。脳機能信号の時空間的な特徴を捉えることで、統合失調症とうつ病の脳機能異常とその社会生活機能との関連における差異を捉えることができることを示しており、今後の臨床応用への可能性が示唆された。
13/09/12 東京大学
「統合失調症の進行を反映する脳内マーカーの開発につながる成果~脳内の生化学物質の濃度を統合失調症の3つの異なる段階で比較して同定~」
"Reduced Frontal Glutamate + Glutamine and N-Acetylaspartate Levels in Patients With Chronic Schizophrenia but not in Those at Clinical High Risk for Psychosis or With First-Episode Schizophrenia. (T. Natsubori et al.)"-Schizophrenia Bulletinにて掲載(東大・山末准教授、笠井教授他)

9/10 日経プレスリリースにて掲載「東大、脳内の生化学物質の濃度を統合失調症の3つの異なる段階で比較して同定」
9/13 マイナビニュースにて掲載「慢性的な統合失調症患者は2種類の脳内化学物質の濃度が低い - 東大病院」

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<概要>
統合失調症の病態の進行を防ぐことは、この高頻度で深刻な疾患に患わされている世界中の当事者や家族にとって多大な利益をもたらしうる。同疾患の病態進行の神経生化学的バイオマーカーを開発することはこの観点から重要である。これまでメタ解析や少数の縦断研究によって、プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピーの所見の変化が病態進行の神経生化学的バイオマーカーになりうることを示唆していたが、本研究はこれについて異なる病期にある患者群を直接比較して検討した。そして、内側前頭前野のグルタミン酸-グルタミン総和とN-アセチルアスパラギン酸濃度の低下は統合失調症の罹病危険状態や病初期では認められず慢性期にのみ認められると言う新たな知見を示した。この結果は、プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピーの所見が統合失調症の病態進行の新たな神経生化学的バイオマーカーとして妥当であることを支持している。

13/09/09 国立精神・神経医療研究センター
NHK朝のニュースにて国立精神・神経医療研究センター功刀部長他の研究成果の一部が放映されました。
【放送】: 9月9日(月) NHK総合テレビ 朝のニュース
【テーマ】 : 「うつ病と統合失調症 判別方法を開発」
【対象論文】: "Discrimination between schizophrenia and major depressive disorder by magnetic resonance imaging of the female brain. (M. Ota et al.)"-Journal of Psychiatric Researchにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・太田室長、功刀部長他)

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13/09/09 東京大学   群馬大学
読売新聞にて東京大学笠井教授他の研究成果の一部が掲載されました。
【新聞】: 9月5日(木) 読売新聞 夕刊9面
【テーマ】 : 「精神疾患 血液量で診断-光トポグラフィー検査-」
【対象論文】: "Neuroimaging-aided differential diagnosis of the depressive state (R. Takizawa et al.)"-NeuroImageにて掲載(東大・滝沢助教、笠井教授、群馬大・福田教授他)

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13/09/06 沖縄科学技術大学院大学
「線条体スパインにおける、グルタミン酸入力、ドーパミン入力、後シナプススパイクの3者のタイミングに依存するカルシウム応答のモデル予測」
"A model-based prediction of the calcium responses in the striatal synaptic spines depending on the timing of cortical and dopaminergic inputs and post-synaptic spikes. (T. Nakano et al.)"-Frontiers in Computational Neuroscienceにて掲載(沖縄科学技術大学院大・吉本グループリーダー他)

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<概要>
線条体シナプス可塑性は、黒質からのドーパミン入力、大脳皮質からのグルタミン酸入力によって引き起こされ、報酬学習の細胞メカニズムだと考えられており、近年その入力タイミングの重要さが示唆されている。本論文では、シナプス可塑性を特徴づける細胞内カルシウム応答の入力タイミング依存性を調べるために、線条体中型有棘細胞のマルチコンパートメントモデルを構築した。その結果ドーパミン入力がグルタミン酸および、スパイクよりも早いほうがカルシウム応答が高まることが予測された。
13/09/04 東京医科歯科大学
「変性疾患に関わる発達障害原因遺伝子PQBP1が神経細胞の繊毛形成を制御することを解明」
"The XLID Protein PQBP1 and the GTPase Dynamin 2 Define a Signaling Link that Orchestrates Ciliary Morphogenesis in Postmitotic Neurons. (Y. Ikeuchi et al.)"-Cell Reportsにて掲載(東京医科歯科大・岡澤教授他)

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<概要>
PQBP1は変性疾患ポリグルタミン病の原因タンパクに含まれるポリグルタミン配列に結合する因子として発見され、その後にメジャーな発達障害原因遺伝子であることが示されている。今回、ハーバード大学との共同研究により、PQBP1が神経細胞の繊毛形成に深く関わることが明らかになった。神経細胞の繊毛は発達期の神経細胞の移動や成熟を制御するとともに、分化後に神経細胞が各種の細胞外シグナルを受け取る細胞器官と考えられている。今回の成果は、PQBP1遺伝子異常が発達障害の症状につながるメカニズムの一端を明らかにするとともに、ポリグルタミン病などの変性疾患発症のメカニズムにも示唆を与えるものである。

13/09/02 東京大学
「統合失調症患者の末梢血ではBDNF遺伝子 は高メチル化状態にある」
"DNA methylation analysis of BDNF gene promoters in peripheral blood cells of schizophrenia patients. (T. Ikegame et al.)"-Neuroscience Researchにて掲載(東大・岩本特任准教授、笠井教授他)

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<概要>
BDNFは、神経細胞の増殖や生存に関与している重要な栄養因子であり、遺伝学的関連や発現量の変動が様々な精神疾患において報告されている。本研究では、BDNF遺伝子のPromoter IとPromoter IV領域について、統合失調症患者末梢血におけるDNAメチル化状態を測定した。健常者群と比較するとPromoter I領域において有意な高メチル化を認め、特に男性患者群において顕著な差異を認めた。これらの結果から、BDNF遺伝子の多型や変異だけではなく、DNAメチル化状態が統合失調症の病態に関わっていることが示唆された。

13/08/30 東京大学、理化学研究所
「統合失調症における認知課題中の前頭葉機能とEGR3遺伝子多型の関連について」
"Association of decreased prefrontal hemodynamic response during a verbal fluency task with EGR3 gene polymorphism in patients with schizophrenia and in healthy individuals. (Y. Nishimura et al.)"-NeuroImageにて掲載(東大・西村特任助教、笠井教授、理研・吉川チームリーダー他)

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<概要>
EGR3遺伝子は、日本人統合失調症患者の家系解析における関連性や、統合失調症の死後脳解析による背外側前頭前野での発現減少が明らかにされており、このうち、EGR3遺伝子多型(rs35201266, GG/GA/AA)については、統合失調症では対照群に比べてアデニン(A)を持つ人が多いことが報告されている(Yamada et al., 2007)。本研究では、このEGR3遺伝子多型の認知課題中の前頭葉機能への影響について、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて検討した。その結果、AA遺伝子型を持つ統合失調症・健常対照の両群の左背外側前頭前野で課題中の血流増加が減衰しており、EGR3遺伝子は前頭葉の神経発達に関与し、統合失調症では神経発達異常や脆弱性と関連している可能性を示した。
13/08/28 東京大学
「神経系細胞株を用いた気分安定薬のエピジェネティックな作用の検討」
"Effect of mood stabilizers on DNA methylation in human neuroblastoma cells. (T. Asai et al.)"-The International Journal of Neuropsychopharmacologyにて掲載(東大・岩本特任准教授、笠井教授他)

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<概要>
主要な精神疾患の病因や病態にエピジェネティックな状態の変動が深く関与していると考えられているが、服薬の影響は充分に研究されていない。本研究では、神経系細胞株を代表的な気分安定薬(リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸)存在下で培養し、DNAメチル化状態について、網羅的解析と候補遺伝子領域解析を行った。気分安定薬に共通してDNAメチル化状態が変動する遺伝子領域や差異を同定すると共に、気分障害患者で高メチル化が報告されていたセロトニントランスポーターについてメチル化状態を下げる作用が認められた。

13/08/28 東京大学
「記憶を整理する大脳シナプスの運動を発見~抑制伝達物質GABAが関与~」
"GABA promotes the competitive selection of dendritic spines by controlling local Ca2+ signaling. (T. Hayama et al.)"Nature Neuroscienceにて掲載(東大・河西教授他)

8/26 日刊工業新聞Business Lineにて掲載「東大、脳内メカニズム解明-記憶の選別にGABAが関与」
8/26 時事ドットコムにて掲載「記憶定着、詳細な仕組み解明=脳神経接合部で伝達物質の新たな働き発見-東大」
8/29 マイナビニュースにて掲載「東大、抑制伝達物質GABAによる脳内のシナプスを整理する仕組みを解明」

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<概要>
2光子顕微鏡で大脳の神経細胞の単一スパインシナプスを刺激し、スパインの収縮を誘発することに成功した。スパインの収縮は周囲のスパインにも広がりシナプス競合が起きた。この際、抑制性伝達物質GABAが必要で、GABAは樹状突起の局所カルシウムシグナルの抑制を起こして競合を促進する。GABAは脳の発達、学習記憶、睡眠、自閉症や統合失調症などの精神疾患に深く関係しており、今回の研究は、これらの理解に新しい展望をもたらす。
13/08/28 名古屋大学
「FUSに制御される部位・細胞特異的トランスクリプトームはALS/FTLDの病変選択性に関連する」
"FUS-regulated region- and cell-type-specific transcriptome is associated with cell selectivity in ALS/FTLD. (Y. Fujioka et al.)"-Scientific Reportsにて掲載(名大・石垣特任助教、祖父江教授他)

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<概要>
ALS/FTLDの原因遺伝子FUSの中枢神経系におけるRNA代謝機構を明らかにするため、中枢神経系の様々な細胞(運動神経、大脳皮質神経、小脳神経、グリア細胞)のFUS制御トランスクリプトームを比較した。その結果各細胞におけるFUS制御トランスクリプトームがALS/FTLDの病態における細胞選択性に寄与している可能性があることを見出した。
13/08/21 東京大学
「健常者内の自閉症傾向の神経関連とそのオキシトシン受容体遺伝子多型との関連」
"Neural correlate of autistic-like traits and a common allele in the oxytocin receptor gene. (Y. Saito et al.)"-Social Cognitive and Affective Neuroscienceにて掲載(東大・山末准教授、笠井教授他)

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<概要>
健常者内でも認められる自閉症的な行動特性は、自閉症と遺伝基盤を一部共有することが知られている。こうした健常者内の自閉症傾向の神経遺伝学的背景を明らかにすることは、自閉症の病態・病因の解明に迫る上で有用と思われるが、あまり研究が進んでいない。今回我々は、自閉症的社会行動傾向が強い健常成人男性ほど、右島皮質の灰白質体積が小さく、この右島皮質と前部帯状皮質腹側部の関連が弱いことを見出した。またさらに、アジア人種で自閉症との関連が報告されているオキシトシン受容体遺伝子多型rs2254298Aを持つ男性は、この右島皮質の灰白質体積が小さいことを示した。今回の結果は、自閉症傾向と自閉症で共有する神経遺伝学的背景の解明を促進すると考えられる。

13/08/15 藤田保健衛生大学、名古屋大学   理化学研究所   国立精神・神経医療研究センター
「3q21領域ならびにSP8遺伝子の多型は日本人精神病性障害と関連する」
"Genetic Variants on 3q21 and in the Sp8 Transcription Factor Gene (SP8) as Susceptibility Loci for Psychotic Disorders: A Genetic Association Study. (K. Kondo et al.)"-PLoS ONEにて掲載(藤田保健衛生大・近藤研究員、池田講師、岩田教授、国立精神・神経医療研究センター・功刀部長、理研・吉川チームリーダー、名大・尾崎教授他)

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<概要>
近年、精神疾患においても全ゲノム関連研究(GWAS)が数多く報告され、確度の高いリスク遺伝子が同定され始めた。本研究では、日本人双極性障害サンプルを対象に、既報の双極性障害GWASで報告された遺伝子多型の追試を行った。また日本人統合失調症サンプルも対象とし、双極性障害と統合失調症の共通するリスクの存在を検討した。その結果、Polybromo1(PBRM1)とSp8 transcription factor(SP8)にある遺伝子多型が日本人双極性障害、統合失調症ならびに精神病性障害(双極性障害+統合失調症)と有意な関連を示した。本結果は、双極性障害と統合失調症の共通するリスクを示すとともに、上記遺伝子が日本人でもリスクとなる可能性を示唆している。

13/08/14 横浜市立大学
「SCN2A変異の臨床スペクトラムは大田原症候群まで拡大する」
"Clinical spectrum of SCN2A mutations expanding to Ohtahara syndrome. (K. Nakamura et al.)"-Neurologyにて掲載(横浜市立大・才津准教授、松本教授他)

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<概要>
SCN2Aは臨床的に良好な経過をたどる良性家族性新生児・小児けいれんの責任遺伝子である。本研究では臨床的により重症である小児期早期のてんかん性脳症328例(67例の大田原症候群と150例のWest症候群を含む)を対象にSCN2Aの変異解析を行った。大田原症候群では9例(13.4%)、West症候群では1例(0.67%)、分類不能の小児早期てんかん性脳症5例(4.5%)にSCN2A変異を認めた。本研究でSCN2A変異が良性のけいれんのみならず重症のてんかん性脳症の原因に成り得ることが明示された。
13/08/08 【公募情報】※締め切りました
平成25年度「脳科学研究戦略推進プログラム」BMI技術と霊長類モデルの実施機関の公募について
・公募を開始しました。平成25年8月8日 (木曜日)  ※詳細はこちら(文部科学省HP)
・公募説明会 ※終了しました
     東京地区 平成25年8月15日(木曜日)11時~12時 場所:文部科学省講堂
     大阪地区 平成25年8月16日(金曜日)時間・場所は登録時に連絡します。

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本事業の内容、応募の手続き等についての説明会を上記のとおり実施します。(応募者に本説明会への出席の義務はありません。)本説明会への出席は事前登録が必要となりますので、出席を希望される方は、平成25年8月14日(水曜日)12時迄に、E-mail:noukagaku@keytech.jst.go.jp宛、(1)氏名、(2)所属機関、(3)連絡先(メールアドレス)をご連絡ください。
なお、定員に達し次第、締め切らせていただきますのでご了承下さい。
事前登録は終了いたしました。
13/08/07 理化学研究所
「乳児難治てんかんの突然死抑制効果の発見~興奮性神経細胞ナトリウムチャネル発現低下が鍵~」
"Nav1.1 haploinsufficiency in excitatory neurons ameliorates seizure-associated sudden death in a mouse model of Dravet syndrome. (I. Ogiwara et al.)"-Human Molecular Geneticsにて掲載(理研・荻原研究員、山川チームリーダー他)

8/7 共同通信47NEWSにて掲載「理研が乳児てんかんの仕組み解明 マウス実験で」
8/7 WEBジャーナルOPTRONICSにて掲載「理研など、乳児難治てんかんの突然死抑制効果を発見」
8/8 マイナビニュースにて掲載「乳児難治てんかんの突然死はタンパク質「Nav1.1」の半減で抑制 - 理研など」
8/8 日経バイオテクONLINEにて掲載「理化学研究所、乳児難治てんかんの突然死抑制効果の発見 -興奮性神経細胞ナトリウムチャネル発現低下が鍵-」
8/9 医療ニュースにて掲載「理化学研究所、乳児難治てんかんの突然死抑制効果を発見」
8/11 Qlife Proにて掲載「乳児難治てんかん発症の引き金、抑制性神経細胞の種類特定」

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<概要>
ドラベ症候群は難治てんかん、自閉症や知的障害、突然死などを合併する疾患であり、約8割の患者でナトリウムチャネルNav1.1の遺伝子SCN1Aの変異がみられる。本研究では、マウスにおいてパルブアルブミン陽性抑制性神経細胞でのNav1.1の減少が発症に主要な役割を果たすこと、Nav1.1は一部の興奮性神経細胞にも発現し、そこでの半減は逆に突然死などを抑制する効果を持つことなどを明らかにした。これらは今後、有効で副作用の少ない治療法の開発につながる知見である。
13/08/01 東京大学
「覚醒剤による精神病と関連した脳体積減少」
"Volume reductions in frontopolar and left perisylvian cortices in methamphetamine induced psychosis.(Y. Aoki et al.)”-Schizophrenia Researchにて掲載(東大・山末准教授他)

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<概要>
本研究は、覚醒剤の乱用によって誘発された覚醒剤精神病の患者を対象に、初めて画素単位で全脳の画像統計解析を行なった。覚醒精神病患者群では、健常対照に比較して、左半球のシルビウス裂周辺の下前頭回や上側頭回の灰白質体積減少と、両側の前頭極皮質の体積減少、前頭眼窩部の白質体積減少を認めた。前頭極皮質の内側部には陽性症状の重症度と有意な負の相関を示す領域がみられた。覚醒剤精神病は、幻覚や妄想等の症候学的類似、ドパミン受容体拮抗薬への反応性の類似、などから統合失調症のモデルとして注目されて来た。本研究結果から、統合失調症でもよく見られる左半球のシルビウス裂周辺構造物の灰白質体積減少や、反社会的行動傾向の脳基盤として知られる前頭極皮質や前頭眼窩野の体積減少が、覚醒剤精神病の病態形成に重要であることが示唆された。

13/08/01 慶應義塾大学
「マウス大脳皮質脳室下帯の増殖細胞の産生に関わる候補遺伝子の検索と、霊長類進化においてそれらが受けた選択圧の解析」
"Screening for candidate genes involved in the production of mouse subventricular zone proliferative cells and an estimation of their changes in evolutionary pressure during primate evolution. (H. Tabata and T. Hachiya et al.)"-Frontiers in Neuroanatomyにて掲載(慶應大・仲嶋教授他)

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<概要>
ヒトなど霊長類の大脳皮質は大きく発達するが、進化におけるその変化には、脳室面(脳室帯)のみならずそこから離れた部位(脳室下帯)に神経前駆細胞が多く分布するように変化し、その結果より多くの神経細胞を産生できるようになったことが大きく貢献したものと考えられている。我々は、部位特異的遺伝子導入法を用いてマウス大脳皮質の発生過程を可視化して細胞動態を解析した結果、皮質の背内側と腹外側とで、脳室帯で産生される神経細胞数と脳室下帯で産生される神経細胞数の比が大きく異なることを見いだした。そこで、両者で発現が異なり、かつ霊長類と非霊長類とで異なる選択圧を受けた分子を同定した。それらの中には、ヒトをはじめとする霊長類の大きな大脳皮質の形成に関わる分子が含まれている可能性が考えられる。
13/07/31 東北大学
「マウス脳外側中核に発現するオキシトシン受容体は恐怖の強化をもたらす」
"Fear-enhancing effects of septal oxytocin receptors. (Y. F. Guzmán et al.)"-Nature Neuroscienceにて掲載(東北大・西森教授他)

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<概要>
オキシトシンは、その抗不安、向社会的、および抗ストレス作用から、ヒトの精神健康の向上に有益であると考えられている。一方、最近、オキシトシンがヒトにおいて不安惹起作用も持つことが明らかになってきた。我々は、マウス脳のオキシトシン受容体遺伝子(OXTR)を領域特異的に操作することで、外側中隔に発現するOXTRが、恐怖強化作用を仲介していることを見出した。これらの効果は社会的敗北ストレス後に出現し、ERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)経路と共役したオキシトシン受容体を必要とする。こうしたシステムは、認知による情動の調整を改善し、適応を高める意義があると考えられる。

13/07/30 理化学研究所   金沢大学、浜松医科大学
「シナプスPSD複合体の因子の1つであるDLG4遺伝子のコアハプロタイプが、日本人および中国人統合失調症家系に関連」
"Population-Specific Haplotype Association of the Postsynaptic Density Gene DLG4 with Schizophrenia, in Family-Based Association Studies. (S. Balan et al.)"-PLoS ONEにて掲載(理研・吉川チームリーダー他)

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<概要>
我々は今回、後シナプス蛋白複合体であるPSDをコードしている4つの遺伝子、LG4, DLG1, PICK1, MDM2と統合失調症の関連を日本人サンプル、および中国人サンプルを用いて調べた。結果は、DLG4遺伝子(PSD95をコードしている)のコアハプロタイプと、日本人統合失調症家系および中国人統合失調症家系との間で関連が認められた。真の原因変異は、このコアハプロタイプ領域の中にある可能性がある。

13/07/26 東京大学
「NIRS-fMRI同時計測によるワーキングメモリ課題に伴う前頭前野活動の検討」
"A NIRS-fMRI investigation of prefrontal cortex activity during a working memory task. (H. Sato et al.)"-NeuroImageにて掲載(東大・笠井教授他)

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<概要>
近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いた前頭葉機能計測に関して、脳外の血行動態変化の影響が指摘されている。本研究では、ワーキングメモリ(WM)課題に伴う前頭前野の活動信号に焦点を当て、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging: fMRI)との同時計測によって得られたblood-oxygen-level-dependent (BOLD) signalsとの類似性により、前額部におけるNIRS信号の妥当性を検討した。また、表層部位の血行動態の影響を調べるため、レーザードップラー血流計を用いて皮膚血流変化も同時に計測した。相関解析の結果、活動部位におけるNIRS信号は、脳外(軟組織)のBOLD信号や皮膚血流信号より、脳(灰白質)におけるBOLD信号と強く相関することが分かった。この結果は、NIRS信号が主に灰白質の血行動態を反映していることを示唆する。さらに、活動信号の大きさ(信号振幅)を比較したところ、灰白質のBOLD信号とNIRS信号は有意に相関した。つまり、灰白質のBOLD信号が大きく変化した被験者では、NIRS信号も大きく変化する傾向がある。以上の結果から、NIRSが前頭前野の機能計測に利用できる根拠を示した。
13/07/26 藤田保健衛生大学、名古屋大学
「覚せい剤精神病と統合失調症の遺伝学的共通性」
"Evidence for Shared Genetic Risk Between Methamphetamine-Induced Psychosis and Schizophrenia. (M. Ikeda et al.)"-Neuropsychopharmacologyにて掲載(藤田保健衛生大・池田講師、岩田教授、名大・尾崎教授他)

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<概要>
本研究では、統合失調症や気分障害との合併が診断上問題となる覚醒剤依存症の全ゲノムSNP解析を行った。特に覚醒剤による"副作用"である「覚醒剤精神病」に着目し、すでに行なっている統合失調症の全ゲノムSNP解析との結果を比較、遺伝学的共通性を検討した。本邦では多くの臨床知見に基づき、覚醒剤精神病と統合失調症は別の病態であると認識されているが、少なくとも一部分は両疾患に共通する遺伝的リスクの存在することを示した。また、本結果は、覚醒剤投与動物が統合失調症のモデル動物として妥当性があることを間接的に示している。
13/07/22 北海道大学
「うつ病エピソードおよび、自傷または自殺念慮を伴う日本人大学生の気質~性格特性~PHQ-9によるスクリーニング研究~」
"Temperament and character profiles of Japanese university students with depressive episodes and ideas of suicide or self-harm: A PHQ-9 screening study. (N.Mitsui et al.)"-Comprehensive Psychiatryにて掲載(北大・三井助教、井上講師他)

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<概要>
入学時にPHQ-9によるうつ病スクリーニングと気質-性格特性の評価尺度であるTCIを実施したところ、大うつ病エピソード群において損害回避が高く、自己志向が低い傾向が認められた。さらに性格特性の組み合わせを分析したところ、自己志向および協調が共に低い群において、大うつ病エピソードおよび自傷または自殺念慮がより多く発生する傾向が認められた。
13/07/19 国立精神・神経医療研究センター
「MRI画像を用いた統合失調症とうつ病の鑑別方法を開発」
"Discrimination between schizophrenia and major depressive disorder by magnetic resonance imaging of the female brain. (M. Ota et al.)"Journal of Psychiatric Researchにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・太田室長、功刀部長他)

7/18 マイナビニュースにて掲載「NCNP、MRIを用いた女性向け統合失調症かうつ病かを鑑別する方法を開発」
7/21 QLife Proにて掲載「MRIを用いた統合失調症とうつ病の鑑別方法を開発」

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<概要>
統合失調症と大うつ病性障害は種々の検査によりその違いを指摘されているが、これまでにその2疾患を鑑別するような臨床補助診断ツールは確立されていない。我々は統合失調症と大うつ病性障害にそれぞれ特徴的な局所脳形態変化に着目し、MRIを用いた情報から2疾患を鑑別する方法を開発した。モデル作成サンプルは統合失調症女性患者25名と女性大うつ病性障害患者25名である。島、視床、脳梁、帯状回、脳室部分を機能別に分割した左右計41か所に関心領域を設置し、体積や異方性拡散(FA)を変数として判断分析を行った。その結果、統合失調症80%、大うつ病性障害76%の的中率を示すモデルを作成した。その後、このモデルを用いて女性統合失調症患者18名、大うつ病性障害患者16名の判別分析を試みたところ、統合失調症の72%、大うつ病性障害の88%でMRI画像による診断が的中した。本研究結果から、統合失調症や大うつ病性障害における特徴的な脳形態は鑑別に有用であることが示唆された。
13/07/12 広島大学
「幼少期トラウマ体験による前頭前野内側部の活動および意思決定スタイルへの影響を解明」
"The degree of early life stress predicts decreased medial prefrontal activations and the shift from internally to externally guided decision making: an exploratory NIRS study during resting state and self-oriented task. (T. Nakao et al.)"-Frontiers in Human Neuroscienceにて掲載(広島大・中尾准教授、山脇教授他)

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<概要>
幼少期トラウマ体験は精神疾患を発病する危険因子の一つと考えられている。本研究では、幼少期トラウマ体験と前頭前野内側部の活動及び意思決定スタイルとの関連について、健常成人を対象に検討を行った。NIRSのデータから、幼少期トラウマ体験は、安静時及び自分の好み(自己の内的基準)に基づく意思決定時の前頭前野内側部の活動の低下と関連していることが明らかとなった。また、幼少期トラウマ体験と好みに基づく意思決定時の前頭前野内側部の脳活動の低下により、外的基準に影響された意思決定の頻度が高くなることが示された。
13/07/08 国立精神・神経医療研究センター
「皮膚細胞を用いて体内時計を測る手法を開発~睡眠リズム診断法の開発に期待~」
"In vitro circadian period is associatedwith circadian/sleep preference. (A. Hida et al.)"Scientific Reportsにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・肥田室長、三島部長他)

7/5 日本経済新聞 電子版にて掲載「体内時計のリズムを皮膚で測定 国立精神・神経センター」
7/5 時事ドットコムにて掲載「体内時計、皮膚細胞で測定=睡眠障害診断に応用期待-国立精神センタ-」
7/6 世界日報にて掲掲載「国立精神センター、体内時計を皮膚細胞で測定-睡眠障害診断に応用期待」
7/8 NHKにて掲載「体内時計の周期を簡単に測定」
7/8 日刊工業新聞Business Lineにて掲載「国立精神・医療センター、皮膚細胞から体内時計リズムを計測」
7/9 QLifeProにて掲載「皮膚細胞で体内時計を測定する」
7/9 NHK総合「NEWS WEB」にて、国立精神・神経医療研究センター・三島部長の本研究成果が放映されました。
【 放送 】:7月9日(火) 23時55分~24時25分頃 NHK総合「NEWS WEB」
【テーマ】:「体内時計を簡単に測定 睡眠障害に光」
人の生活のリズムを作る「体内時計」の異常を、皮膚の細胞を使って簡単に見つける手法を開発したというお話をされました。
7/13 朝日新聞DIGITALにて掲載「体内時計の周期、遺伝子判定 皮膚細胞で簡単に」
7/15 YOMIURI ONLINEにて掲載「「夜型」体質、皮膚細胞でわかる簡単手法を発見」
7/17 Merit Timesにて掲載「夜型人 生理時鐘周期較長」
7/19 医療人材.NETにて掲載「皮膚細胞で、夜型判明?国立精神・神経医療研究センターが発見」

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<概要>
人の体内時計周期を計測するには特殊な施設と多くの人手や期間を要するため、臨床研究に応用することは困難であった。本研究では、人の皮膚線維芽培養細胞内の時計遺伝子bmal1発現リズム(末梢時計)の周期をin vitroで測定する手法を開発し、末梢時計周期が個々のクロノタイプ(朝型夜型)及びフリータイム日の睡眠習慣(入眠覚醒時刻)と有意に相関することを明らかにした。末梢の生体試料を利用した簡便な体内時計周期の測定法を用いることで、概日リズム睡眠障害や冬季うつ病などの生体リズム障害に関連する疾患の精密診断や治療候補物質のスクリーニングが可能となり、テーラーメード医療の提供に寄与することが期待される。
13/07/05 福井大学、金沢大学
「自閉症スペクトラム障害をもつ方々は、自分に似た物語を検索しやすい」
"Episodic memory retrieval for story characters in high-functioning autism. (H. Komeda et al.)"-Molecular Autismにて掲載(福井大・岡沢教授、佐藤教授、金沢大・棟居特任教授他)

6/25 マイナビニュースにて掲載「自閉症スペクトラム障害の人は、自分に似た物語に高い理解を示す-京大など」

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<概要>
青年期高機能自閉症スペクトラム障害(ASD)群に、日常的な出来事が書かれてある物語文を読ませ、その理解と記憶力を確認した。文の読み時間と自閉症尺度との相関分析の結果、各被験者のASD傾向が高いほど、定型発達の人物が書かれた物語の読みに時間がかかることがわかった。文の再認の結果、ASD群は、自分と類似したASDの人物が書かれた物語の検索に優れることが明らかになった。
13/07/05 治医科大学
「インスリンの脳への影響:新たな作用経路の発見~新しい肥満・過食メカニズムの解明へ~」
"Insulin activates vagal afferent neurons including those innervating pancreas via insulin cascade and Ca2+ influx: its dysfunction in IRS2-KO mice with hyperphagic obesity. (Y. Iwasaki et al.)"PLoS ONEにて掲載(自治医大・岩崎助教、矢田教授他)

6/27 時事ドットコムにて掲載「膵臓神経から脳へ=インスリン感知に新ルート-増強剤で肥満治療も・自治医大」
6/28 日刊工業新聞Business Lineにて掲載「膵臓分泌のインスリン、神経経由で脳に情報-自治医科大が発見」
7/15 朝日新聞にて掲載「インスリン 新たな経路発見」※7/15朝日新聞(科学・13版)にも掲載されています。

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<概要>
末梢ホルモンは「血液脳関門を通過して脳に作用」、「求心性迷走神経に作用して脳へ神経伝達」の2つの経路により中枢作用を発揮する。インスリンは食欲、記憶、神経保護などの脳機能に関与するが、求心性迷走神経に作用するかは不明であった。今回、自治医科大学の矢田教授、岩崎助教らは、インスリンが求心性迷走神経を活性化する新経路を世界で初めて発見した。さらに、インスリンシグナル伝達分子IRS2遺伝子欠損マウスは過食・肥満を呈し、インスリンの求心性迷走神経作用が障害されていたが、血液脳関門を通過して作用する標的ニューロンへの効果は正常であった事から、インスリンの求心性迷走神経を介した脳作用には過食・肥満を防御する働きがあることが示唆された。
13/07/03 大阪大学   ATR
6/25 日本経済新聞関西版夕刊15面にて掲載「心の声を聴き 動きに」(阪大・柳澤助教、平田特任准教授他)

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13/07/01 金沢大学
「ヒトオキシトシン受容体のアミノ酸多型と自閉症スペクトラム障害~日本人集団における症例・対照研究と機能解析~」
"Non-synonymous single-nucleotide variations of the human oxytocin receptor gene and autism spectrum disorders: a case-control study in a Japanese population and functional analysis. (W. J. Ma et al.)"-Molecular Autismにて掲載(金沢大・横山特任准教授、東田教授他)

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<概要>
金沢大学における症例・対照研究から、自閉症スペクトラム障害(ASD)患者に頻度が高いオキシトシン受容体遺伝子の非同義一塩基多型(rs35062132, c.1126C>G, p.Arg376Gly)を見出した。アミノ酸置換した受容体を培養細胞に発現させたところ、オキシトシン刺激後の受容体内在化とリサイクリングが通常型受容体に比して速くなった。同時に細胞内カルシウム濃度上昇の減弱も観察された。これらの結果から、オキシトシン受容体のアミノ酸多型による細胞応答の差異がASD発症に関与する可能性が示唆された。
13/06/28 治医科大学
"Rikkunshito and isoliquiritigenin counteract 5-HT-induced 2C receptor-mediated activation of pro-opiomelanocortin neurons in the hypothalamic arcuate nucleus. (T. Arai et al)"Neuropeptidesにて掲載(自治医大・矢田教授他)

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<概要>
神経性食欲不振症、胃腸障害、癌患者における摂食不振は、病気の回復を遅らせる困難な因子であり、漢方薬の六君子湯はこれを改善させるが、その作用機構は十分わかっていなかった。本研究はラットを用いて、食欲抑制に中心的役割を果たす視床下部POMCニューロンに対するストレス物質セロトニンと六君子 湯の作用を調べた。セロトニンはPOMCニューロンを活性化し、この作用を六君子湯及びその有効成分の1つが抑制することを発見した。本研究は、六君子湯 がストレスに拮抗して食欲不振を改善する作用の科学的根拠を与え、さらに有効成分の治療応用の可能性をも示すものである。
13/06/20 大阪大学
課題A 大阪大学・平田特任准教授らの研究成果が、6月20日(木)~23日(日)まで国立京都国際会館で開催される「第36回日本神経科学大会」、「第56回日本神経化学会大会」と「第23回日本神経回路学会大会」の合同大会「Neuro2013」で発表されます。これは、平成20~24年度に行われた課題Aの研究成果によるものです。
6/19 時事ドットコムにて掲載「脳波で機械操作、ワイヤレス化=体内埋め込み装置開発-阪大」

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13/06/20 東京大学
「神経の活動が前初期遺伝子Arcを介してシナプス刈り込みを促進する」
"Arc/Arg3.1 Is a Postsynaptic Mediator of Activity-Dependent Synapse Elimination in the Developing Cerebellum. (T. Mikuni et al.)"-Neuronにて掲載(東大・狩野教授他)

6/24 マイナビニュースにて掲載「東大、シナプス刈り込みに前初期遺伝子「Arc」が必要なことを解明」

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<概要>
生後間もない動物の脳には過剰なシナプスが存在するが、発達の過程で不要なシナプスは除去され、必要なシナプスが強められることにより機能的な神経回路が完成する。この過程は「シナプス刈り込み」と呼ばれており、神経活動が重要な役割を果たすことが示されてきたが、詳細な分子メカニズムは不明であった。本研究において、発達期の小脳において、シナプス刈り込みに前初期遺伝子のArcが必要なことを明らかになった。マウスの小脳プルキンエ細胞の神経活動を上昇させると、登上線維シナプスの刈り込みが促進されたが、これには、プルキンエ細胞内へのカルシウム流入と引き続くArc遺伝子の発現誘導が必要であった。さらに、誘導されたArc分子が、プルキンエ細胞の細胞体にある余剰なシナプスを刈り込むことにより、シナプス刈り込みを完成させることが明らかになった。発達障害をきたすいくつかのヒトの疾患のモデルマウスの脳でにおいて、Arcの発現異常があることが最近相次いで報告されている。本研究の成果は、これらの精神疾患の病態を「シナプス刈り込み」の視点から解明するための新たなアプローチを提供するものである。
13/06/18 東京大学
「皮肉や冗談を理解するための神経ネットワークを解明」
"Network structure underlying resolution of conflicting nonverbal and verbal social information. (T. Watanabe et al.)"-Social Cognitive and Affective Neuroscienceにて掲載(東大・山末准教授、笠井教授他)
(日本語)
(English)
6/19 マイナビニュースにて掲載「東大、皮肉や冗談を理解するための脳神経ネットワークの解明に成功」

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<概要>
表情や声色等の非言語的な情報を主に活用して他者の友好性を判断する場合には後方部の背内側前頭前野をハブとするネットワークが、言葉の内容などの言語的な情報を主に活用する場合では右半球の腹側の後部下前頭回をハブとする異なるネットワークが賦活されることを初めて示した。一方で、前方部の背内側前頭前野はこれらのネットワークを橋渡しし、どちらのハブ領域よりも早く賦活されることが示された。これらの結果から、前方部の背内側前頭前野が非言語ネットワークと言語ネットワークのどちらかを選択的に動員し、非言語的な情報と言語的な情報が食い違う際の複雑な他者判断を瞬時に効率よく成立させることが示唆された。
13/06/18 東京大学   群馬大学
「うつ症状を呈する精神疾患の鑑別診断を補助する検査の有用性を確認~簡便な神経画像計測、光トポグラフィー検査を用いた多施設共同研究~」
"Neuroimaging-aided differential diagnosis of the depressive state (R. Takizawa et al.)"-NeuroImageにて掲載(東大・滝沢助教、笠井教授、群馬大・福田教授他)

6/21 日経産業新聞10面にて掲載「うつ症状、高精度で特定 群馬大など 光トポグラフィーで」
6/18 マイナビニュースにて掲載「精神疾患の脳機能計測に「光トポグラフィ」が有効 - 東大病院など」

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<概要>
群馬大学精神科や東京大学精神科のグループなどが開発した精神科で唯一の先進医療「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の 鑑別診断補助」について、群馬大学・東京大学・国立精神神経医療研究センター(NCNP)などの多施設共同研究を進め、精神疾患673名・健常者 1,007名を対象として、光トポグラフィー検査により、うつ症状を伴う精神疾患(大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症)の鑑別診断補助を高い判別率で 行うことが出来ることを示した大規模な研究です。
13/06/10 東京大学
「BDNF遺伝子のDNAメチル化状態と精神疾患との関連について」
"DNA methylation of the BDNF gene and its relevance to psychiatric disorders. (T. Ikegame et al.)"-Journal of Human Geneticsにて掲載(東大・岩本特任准教授、笠井教授他)

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<概要>
BDNFは、神経細胞の増殖や生存に関与している重要な栄養因子であり、遺伝学的関連や発現量の変動が様々な精神疾患において報告されている。本総説では、BDNF遺伝子におけるエピジェネティックな変動と精神疾患についてのこれまでの研究報告を概説した。
13/06/10 東京大学
「統合失調症患者では、より広範の前頭前野脳機能を用いて認知機能障害を補完している」
"Reduced but broader prefrontal activity in patients with schizophrenia during n-back working memory tasks: A multi-channel near-infrared spectroscopy study. (S. Koike et al)"-Journal of Psychiatric Researchにて掲載(東大・笠井教授他)

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<概要>
統合失調症においてワーキングメモリーの障害が示唆されている。本研究では難易度の異なるワーキングメモリー課題中の血流変化を近赤外線スペクトロスコピィで検討した。課題中、健常群では課題の難易度を上げると、腹外側前頭前野における血流が増加した。しかし統合失調症群では、課題の難易度によっても同部位の血流変化は変わらず、一方で、その周辺の前頭前野の血流が増加することを認めた。統合失調症における前頭葉機能障害と、他の前頭葉による補完的な活動を捉えていると考えられた。
13/06/10 理化学研究所   国立精神・神経医療研究センター   名古屋大学、藤田保健衛生大学
「EGR2遺伝子は、日本人統合失調症には関連があったが、双極性障害には関連がない」
"Lack of association of EGR2 variants with bipolar disorder in Japanese population. (S. Balan et al.)"-Geneにて掲載(理研・吉川チームリーダー、国立精神・神経C・功刀部長、名大・尾崎教授、藤田保健・岩田教授他)

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<概要>
以前我々は、EGR2遺伝子(転写因子をコードしている)が、カルシニューリン系のコンポーネントの1つとして日本人統合失調症に関連があることを報告した。最近、韓国の同僚が双極性障害で関連を報告し、日本人サンプルでのテストを依頼された。韓国でのサンプルより数倍大きいサイズで解析し、かつ日本人、韓国人での結果のメタ解析も行ったが、有意な結果は得られなかった。より大きなサンプルでの検討が必要だが、EGR2遺伝子は、近縁人種といえども個別疾患に対する効果が実質的に異なる可能性がある。
13/06/10 北海道大学
「メタンフェタミンによる概日リズムの内的脱同調に伴い、ラット脳内各領域の時計遺伝子発現リズムは異なる反応を示す」
"Differential responses of circadian Per2 rhythms in cultured slices of discrete brain areas from rats showing internal desynchronisation by methamphetamine. (A. Natsubori et al.)"-European Journal of Neuroscienceにて掲載(北大・夏堀研究員、本間教授他)

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<概要>
メタンフェタミン慢性投与モデルラットを用い、双極性障害にみられる内的脱同調の脳内メカニズムを解明する目的で、時計遺伝子概日リズムを、脳内ドパミン系神経核を中心に解析した。行動リズムが明暗サイクルから脱同調した時、時計遺伝子リズムは、光同調性生物時計が存在する視交叉上核以外の脳領域で6~8時間の大きな変位を示した。内的脱同調の背後には、特性が異なる複数の領域振動体からなる第二の生物時計が存在し、光同調性時計から解離すると考えられる。
13/06/03 金沢大学
「スコポラミンは母親マウスにより誘発される父親の両親行動を抑制する」
"Scopolamine modulates paternal parental retrieval behavior in mice induced by the maternal mate. (H. Fujimoto et al.)"-Neuroscience Lettersにて掲載(金沢大・東田教授他)

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<概要>
父による適切な子供の養育は、人間の家庭生活の健康を大いに促進する。父親の養育にかかる脳サーキットについては良く分かっていない。そこで、最近我々の見出した母親からの信号により父親が仔育てをするマウスの系を用いて、スコポラミンを皮下に注射すると養育行動が消失した事から脳のコリン作動性神経回路の関与を証明した。
13/06/03 北海道大学
「抗不安薬のタンドスピロンは衝動性を抑制する」
"Tandospirone Suppresses Impulsive Action by Possible Blockade of the 5-HT1A Receptor. (Y. Ohmura et al.)"-Journal of Pharmacological Sciencesにて掲載(北大・大村助教、吉岡教授他)

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<概要>
本研究では、抗不安薬として用いられているタンドスピロンが用量依存的に衝動 性を抑制することをラットを用いた実験で明らかにした。また、タンドスピロンは5-HT1A受容体の部分作動薬として知られているが、タンドスピロンの衝 動性抑制作用は5-HT1A受容体の拮抗薬によって減弱しなかった。さらに、5-HT1A受容体の拮抗薬を単独で高用量投与すると、若干の衝動性抑制作用 が見られたことから、タンドスピロンは内因性セロトニンの5-HT1A受容体への結合を部分的に拮抗することによって衝動性抑制作用を示すものと推測され た。
13/05/31 大阪バイオサイエンス研究所
「脳の機能成熟を担う『不要神経回路の選択的除去システム』の解明」
"Compartmentalized Calcium Transients Trigger Dendrite Pruning in Drosophila Sensory Neurons. (T. Kanamori et al.)"-Scienceにて掲載(OBI・金森研究員、榎本研究部長他)

6/4 マイナビニュースにて掲載「東大など、不要な神経回路が変性・除去される際のシグナルをキャッチ」

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<概要>
ヒト脳神経回路の大まかなネットワークは胎児期に形成されるが、この発生初期の幼弱な回路は、いわゆる「混線状態」にあり、その後の発達段階において、不要回路の切断・除去を含むネットワークの再編が起こることにより、機能的な情報処理回路へと成熟することができる。このたび我々の研究グループは、脳神経回路構造が比較的シンプルであるショウジョウバエを解析モデルとして採用し、独自に確立した生体イメージング手法と分子遺伝学的手法を組み合わせることにより、「不要な神経回路の選択的除去」を担うメカニズムとして、神経突起局所で自発的に発生する低頻度カルシウム振動を世界に先駆けて明らかにした。最近の研究から、脳神経回路の機能成熟過程の異常が自閉症や統合失調症などの一因となる可能性が示されており、本研究成果は、将来的に発症メカニズムの解明や、診断法や治療法の開発に貢献することが期待される。
13/05/23 藤田保健衛生大学、名古屋大学
「BMP7遺伝子多型と抗うつ薬反応性における関連性」
"Further evidence of an association between a genetic variant in BMP7 and treatment response to SSRIs in major depressive disorder. (K. Esaki et al.)"-Journal of Human Geneticsにて掲載(藤田保健衛生大・岩田教授他、名大・尾崎教授)

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<概要>
現在、大うつ病性障害の薬物治療は試行錯誤で行われている。有用な予測因子を 同定するために、遺伝子多型を利用した薬理遺伝学的研究がなされているが、未だ確定的な関連遺伝子は同定に至っていない。本研究では、米国で行われたSequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression (STAR*D)研究で同定された抗うつ薬反応性関連遺伝子が日本人大うつ病性障害に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の反応性に関連するかを追試した。複数の遺伝子多型のうち、bone morphogenetic protein 7 gene (BMP7)近傍にある多型が、有意にSSRI治療反応性と関連することが追試された。
13/05/20 理化学研究所
「魚が記憶に基づいて意思決定を行う時の脳の神経活動を可視化~ゼブラフィッシュをモデルに人の意思決定のメカニズムを探る~」
"Imaging of Neural Ensembles for the Retrieval of Learned Behavioral Programs. (T. Aoki et al.)"-Neuronにて掲載(理研・岡本チームリーダー他)

5/17 RBB TODAYにて掲載「"魚の記憶力"を可視化、人の意思決定メカニズムを探る・・・理研」

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<概要>
今回、理化学研究所脳科学総合研究センター発生遺伝子制御研究チームは、小型 熱帯魚のゼブラフィッシュを用いて、魚が回避行動を行おうと意思を決定する際に大脳皮質に相当する領域の特定の神経細胞群によって保存されている回避行動のプログラムが読み出される過程を、カルシウムイメージング法によって可視化することに成功した。今後、脊椎動物の原型であるゼブラフィッシュをモデル に、ヒトを含む動物の行動プログラムが脳でどのように書き込まれ、読み出されて、意思決定がなされるのかを明らかにする研究が飛躍的に進むことが期待される。
13/05/13 東京大学
「不安とテスト成績に対する脳の異なる役割分担を明らかに」
"Anxiety and Performance: The Disparate Roles of Prefrontal Subregions Under Maintained Psychological Stress. (R. Takizawa et al.)"-Cerebral Cortexにて掲載(東大・滝沢助教、笠井教授他)

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<概要>
日常生活における不安と心理的ストレスについての関心は高まっているが、その神経基盤は未だ明らかにされていない。本研究では近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて、内田クレぺリン課題という単純計算課題(15分間・2 セット)を施行時の前頭葉機能を計測した。NIRSは自然な姿勢で非侵襲的な計測をできることが特徴であり、被検者が座った姿勢で鉛筆を持って課題をこなす最中を計測した。結果として、前頭極や背外側前頭前野のNIRS信号は不安指標と有意に相関を示したのに対し、腹外側前頭前野では課題遂行成績のみと有意な相関を示した。これは心理的ストレス課題の遂行成績と不安に対する処理において、前頭前野の機能分化が存在する可能性を示唆している。
13/05/10 基礎生物学研究所
「新世界ザルのマーモセットの大脳皮質での眼優位性カラムの存在を確認」
"Monocular inhibition reveals temporal and spatial changes in gene expression in the primary visual cortex of marmoset. (Y. Nakagami et al.)"-Frontiers in Neural Circuitsにて掲載(基生研・仲神研究員、山森教授他)

5/10 マイナビニュースにて掲載「NIBB、小型ザル・マーモセットの「眼優位性カラム」が存在することを確認」
5/24 科学新聞2面にて掲載「眼優位性カラム 存在の確証得る」

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<概要>
原猿や旧世界ザルの大脳皮質一次視覚野には明瞭な眼優位性カラムが存在するが、新世界ザルマーモセットの成熟個体には存在しないとされていた。しかし、近年、マーモセット個体によっては、眼優位性カラムが観察されるという報告が ある一方、電気生理学的方法や生体イメージング法では、成熟マーモセット眼優位性カラムが観察されないなど、明確な結論は出ていなかった。本報告では、フ グ毒(TTX)を片眼に注入した後、暗闇に2日程飼育後、光照射する系を用いて、TTXを片眼に注入したマーモセット11頭全例で、一次視覚野に明瞭な眼 優位性カラムを観察し、霊長類モデル動物としての有用性を示した。
13/05/08 東京医科歯科大学
「複数の神経変性疾患にまたがる共通病態(シグナル)を解明~認知症、運動失調症などに汎用性のある治療法の開発に期待~」
"A functional deficiency of TERA/VCP/p97 contributes to impaired DNA repair in multiple polyglutamine diseases. (K. Fujita et al.)"-Nature Communicationsにて掲載(東京医科歯科大・岡澤教授他)

5/8 時事ドットコムにて掲載「複数脳疾患の共通要因を発見=治療法開発へ貢献期待-東京医科歯科大」
5/9 マイナビニュースにて掲載「TMDUなど、複数の神経変性疾患グループにまたがる病態シグナルを解明」
5/27 朝日新聞デジタルにて掲載「神経難病の発症原因解明 東京医科歯科大チーム」※朝日新聞朝刊(科学・15面)にも掲載されています。

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<概要>
前頭側頭葉変性症はアルツハイマー病についで主要な変性型認知症(脳梗塞などの血管障害型でない認知症)として知られており、その頻度はアルツハイマー病の2分の1から4分の1と概算されている。また、VCPは前頭側頭葉変性症の主な原因遺伝子として知られているが、岡澤グループの以前の報告(今福ら, 1998)等からタンパク質のポリグルタミン配列との結合が示唆されていた。一方、タンパク質でポリグルタミン配列が異常に長くなると認知症のみならず、運動異常や小脳失調などの症状を示す別の変性疾患群(ポリグルタミン病)を起こすことが知られている。そこで、4種類のポリグルタミン病原因タンパク質とVCPの結合関係を再検討した結果、何れのポリグルタミン原因タンパク質も VCPに結合してVCPの生理機能、特にDNA損傷修復機能を低下させることが明らかになった。VCPを用いてDNA損傷修復機能を回復させるとポリグルタミン病動物モデルで神経変性が治療出来ることも併せて明らかになった。本研究は2つの変性疾患グループ(前頭側頭葉型変性症とポリグルタミン病)が共通 した分子を介する病態シグナルをシェアすることを示唆した。
13/05/08 東京工業大学
「表面筋電信号を用いた仮想楽器システム」
"A Virtual Instrument System Operated by Electromyographic Signals.(D. Shin et al.)"-INFORMATIONにて掲載(東工大・辛研究員、小池教授他)

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<概要>
本研究はヒュマン・コンピュータ・インタフェース(HCI)分野で表面筋電信号を用いた新たなフレイムを提案した。従来の研究では筋電信号から運動のパタンや関節角度、力を予測することが多くあったがリハビリテーションで応用可能 な研究は少ない。本研究では両手と両足の12個の筋肉から関節角度と力を計算するシンプルな手法を提案し、仮想空間のアバターを操作しドラムを演奏する事が可能であることを検証した。BMI分野では既に脳波や皮質脳波(ECOG)から筋電信号を予測する事が可能になったので、将来はこの手法を用いることで 動けない人でも外部環境とインタラクションすることが期待される。
13/05/08 北海道大学
「ロールシャッハ試験における双極性うつ病と単極性うつ病の鑑別点」
"Differences between bipolar and unipolar depression on Rorschach testing . (H. Kimura et al.)"-Neuropsychiatric Disease and Treatmentにて掲載(北大・井上講師他)

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<概要>
双極性うつ病と単極性うつ病の早期鑑別は精神医学における大きな課題である。精神科臨床において一般的に用いられている投影法による性格検査であるロールシャッハ試験により両者が鑑別可能かどうかについて本研究は検討した。双極性 か単極性の鑑別には長期経過観察が必須なことから、ロールシャッハ試験施行後、各群20例を自然史的に長期に経過を観察し、診断を確定した。WSum6、 DR2>0、 (CF+C)>FC+2、PureC>1、Populars>7などの指標が双極性うつ病群で有意に強く認められた。これらの結果は、双極性うつ病における思考障害、認知のすべり、感情統制の緩さを示しており、精神病理を反映していると考えられた。
13/05/08 新潟大学
「ヒトにおける単一ニューロン活動と皮質脳波の同時記録法の開発」
"Simultaneous Recording of Single-neuron Activities and Broad-area Intracranial Electroencephalography: Electrode Design and Implantation Procedure. (T. Matsuo et al.)"-Neurosurgeryにて掲載(新潟大・長谷川教授他)

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<概要>
ヒトの脳から脳表/深部の皮質脳波と単一神経細胞活動を同時記録する手法を開発した。これにより、てんかん焦点の同定、脳機能解明、ブレイン・マシン・インターフェイスへの応用などへの将来展望が開けた。
13/05/08 慶應義塾大学
「大脳皮質興奮性ニューロンは、前駆細胞から産生される際にRbファミリー依存的に細胞分裂から保護される」
"Cortical excitatory neurons become protected from cell division during neurogenesis in an Rb family-dependent manner. (M. Oshikawa et al.)"-Developmentにて掲載(慶應大・仲嶋教授他)

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<概要>
Rb経路を介した細胞周期の進行は、ニューロンをS期に進ませ、その結果として細胞死を引き起こすことが知られている。一方で、Rbファミリーを欠損したニューロンは、分裂して腫瘍を形成しうる。本研究では、部位特異的遺伝子導入法を用いて発生期大脳皮質の細胞動態を可視化し、ニューロンになってからRbファミリーを不活化したり、神経前駆細胞の段階からRbファミリーを不活化してその影響を比較検討した。その結果、Rbファミリー欠損前駆細胞から産生されたニューロンにおいて、DNA二本鎖切断修復経路が活性化されること、また、この活性化がニューロンの異常な分裂に重要であることを見いだした。
13/04/24 生理学研究所
「手や足の「運動」をストップさせる大脳基底核の神経経路の働きを証明~ハンチントン病のモデルマウス、パーキンソン病の病態解明にも期待~」
"Signals through the Striatopallidal Indirect Pathway Stop Movements by Phasic Excitation in the Substantia Nigra. (H. Sano et al.)"-The Journal of Neurosciencにて掲載(生理研・南部教授他)

4/26 マイナビニュースにて掲載「パーキンソン病の解明にも期待 - NIPS、手足の運動を止める脳の働きを解明」

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<概要>
遺伝子組換えとイムノトキシンを利用して、大脳基底核の神経回路 のうち線条体-淡蒼球投射ニューロン(間接路)を特異的に除去したところ、黒質網様部で観察される大脳皮質由来の興奮-抑制-興奮という3相性の応答のうち、遅い興奮が消失していた。また、同時に自発運動量が上昇していた。したがって、線条体-淡蒼球投射は黒質網様部に遅い興奮を与えることにより、運動を ストップさせる働きがあると考えられる。
13/04/17 生理学研究所、福島県立医科大学、京都大学   大阪大学
平成25年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において、生理研・伊佐教授、福島医大・小林教授、京大・渡邉教授、阪大・栁澤助教が受賞しました。これらは、それぞれ平成20~24年度に行われた課題C、課題Aの研究成果によるものです。

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<科学技術賞(研究部門)>
受賞者 業績名
自然科学研究機構生理学研究所 伊佐 正 教授    
福島県立医科大学 小林 和人 教授
京都大学 渡邉 大 教授
霊長類の神経回路を選択的に制御する手法に関する研究
<若手科学者賞>
受賞者 業績名
大阪大学 柳澤 琢史 助教       
麻痺患者の皮質脳波による神経義手の研究
【受賞時の写真】
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13/04/15 国立精神・神経医療研究センター
「ヒトのメラノプシン遺伝子多型I394Tが対光反応の強度に関連する」
"Melanopsin Gene Polymorphism I394T Is Associated with Pupillary Light Responses in a Dose-Dependent Manner. (S. Higuchi et al.)"-PLoS ONEにて掲載(国立精神・神経C・三島部長他)

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<概要>
網膜のメラノプシン含有細胞は光による生物時計同調や瞳孔の対光反応などの非視覚性機能に重要な働きをしている。本研究では、73名の健康被験者を対象としてヒトのメラノプシン遺伝子の非同義置換多型(OPN4, rs1079610/I394T)と対光反応との関連を6段階(<1, 10, 100, 1000, 3000, 6000 lx)の照度下で調べた。その結果、TT(n=38)、TC(n=28)および CC(n=7)の各遺伝子型の間で瞳孔径および縮瞳率(vs. <1 lx)に群間差があり、TT群では他群に比較して対光反応が有意に弱いことが明らかになった。今回の研究はメラノプシンの一塩基多型と非視覚性機能との関連を示した初めての報告である。
13/04/12 自治医科大学
「ラットにおいて明期早期に室傍核NUCB2/nesfatin-1が上昇し摂食低下と同調する」
"Paraventricular NUCB2/nesfatin-1 rises in synchrony with feeding suppression during early light phase in rats. (U. Sedbazar et al.)"-Biochemical and Biophysical Research Communicationsにて掲載(自治医大・矢田教授他)

4/16 マイナビニュースにて掲載「体内時計の生涯が肥満における摂食リズム障害の一因となる-自治医大」

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<概要>
肥満の主要な原因の一つは摂食の亢進(過食)である。摂食行動は特徴的な生体 リズムを持っており、その障害と肥満との関連が注目されているが、摂食の体内時計のメカニズムは不明であった。今回、ラットを用いた実験から、明期早期 (ヒトでは夕食後の時間)に、間脳の視床下部の室傍核においてネスファチン遺伝子発現が上昇するとともに摂食量は低下し、ネスファチン作用を阻害する抗体を脳室内に投与すると摂食量が増加した。さらに、肥満モデルラットでは明期のネスファチン発現上昇が消失し、明期や一日の摂食量が著しく増加しており、脳室内にネスファチンを投与するとこれらの過食が改善することを明らかにした。本研究は、室傍核ネスファチンを摂食の体内時計構成分子として同定し、さらに 摂食障害や生体リズム障害に対する治療標的分子として示唆する。
13/04/08 大阪大学
NHKニュース「おはよう日本」のコーナー「けさのクローズアップ」にて阪大・吉峰グループの研究成果の一部が放映されました。
【放送】:4/11(木) 7時20分~7時30分頃 総合テレビ
【内容】:重症ALS患者に対する有線BMI臨床研究について。ALSの患者さんに頭蓋内電極を置いて意思伝達装置やロボットを操作することに、大阪大学脳神経外科を中心としたグループが世界で初めて成功した。

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13/04/05 名古屋大学
「恐怖学習による侵害受容性扁桃体のシナプス増強」
"Synaptic potentiation in the nociceptive amygdala following fear learning in mice. (A. M. Watabe et al.)"-Molecular Brainにて掲載(名大・加藤教授他)

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<概要>
扁桃体中心核は「恐怖学習」において主要な役割を担うとともに、痛みと情動を結ぶ神経回路としても知られている。今回、恐怖学習をさせたマウスの扁桃体中心核で、恐怖学習に関わるシナプスだけではなく痛み情報に関わるシナプスのシ ナプス伝達も増強している事実を見出した。この成果は、恐怖をひとたび学習すると、恐怖を感じていないときのからだの痛みに対する情動回路の感受性が亢進する可能性を示しており、心的外傷ストレスなどによる「心の痛み」が「からだの痛み」と連関することによって生じる様々な心身症状の治療法の開発につながる研究成果。
13/04/05 ATR
「睡眠中の脳活動パターンから見ている夢の内容の解読に成功」
"Neural Decoding of Visual Imagery During Sleep. (T. Horikawa et al.)"-Science Expressにて掲載(ATR・神谷室長他)

4/5 NHK NEWSWEBにて掲載「夢の内容 高精度で解読に成功」
4/5 日テレNEWS24にて掲載「睡眠中の脳活動分析で"夢の解読"に成功!」
4/5 日本経済新聞 電子版にて掲載「夢で見ているものを言いあてる ATRの研究グループ」
4/5 時事ドットコムにて掲載「夢に出た物、脳測定で解読=精神疾患診断に応用期待-ATRなど初成功」
4/5 YOMIURI ONLINEにて掲載「『女性』の夢みた?あなたの夢、脳活動で推定」
4/5 朝日新聞DIGITALにて掲載「夢の内容解読に成功 睡眠中の脳活動から 京都の研究所」
4/5 毎日jpにて掲載「夢:見ている内容を解読 国際電気通信研が成功」
4/5 共同通信47NEWSにて掲載「夢の読み取りに成功 脳活動パターンを解読」
4/5 msn産経ニュースにて掲載「『夢』解読、初の成功 脳活動を測定、7割的中」
4/5 msn産経ニュースにて掲載「『夢』解読、初の成功 画像再現へ重要な一歩 医学、芸術...応用に期待」
4/5 電氣新聞にて掲載「夢の『のぞき見』、可能に?-内容解読に成功」
4/5 yahooニュース(科学雑誌Newton)にて掲載「『夢解読』に成功 脳活動から夢の内容を読み取る技術がついに実現」
4/4 BBC Newsにて掲載"Scientists 'read dreams' using brain scans"
他、多数のメディアに掲載されました

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<概要>
本研究では、夢内容の言語報告に高頻度で現れる物体名(「本」、「クルマ」 等、約20個の物体カテゴリー)に注目し、各物体の有無を大脳視覚野の機能的磁気共鳴画像(fMRI)信号から予測する数理モデルを構築した。そのモデル を用いて、被験者を起こす直前の脳活動パターンを解析することで、夢報告と高い精度で一致する内容を予測することができた。また、夢内容の予測には実際に画像を見ている時に活動する脳部位のパターンが有効であることから、夢を見ている時にも画像を見ている時と共通する脳活動パターンが生じていることが分かった。本研究は、客観的な脳計測信号から主観的な夢内容の解読が可能であることを初めて示した。この方法は、夢だけでなく、イメージ・幻覚などを解読するために用いることもでき、自発的に生じる脳活動の機能の解明や心理状態の可視化・精神疾患の診断など広い分野での応用が期待される。
13/04/04 東京大学
「双生児研究により、前頭葉課題中の脳血流変化量が部分的に遺伝的に規定されている可能性を示唆」
"Genetic influences on prefrontal activation during a verbal fluency task in adults: A twin study based on multichannel near-infrared spectroscopy. (E. Sakakibara et al.)"-NeuroImageにて掲載(東大・滝沢助教、笠井教授他)

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<概要>
統合失調症などの精神疾患には遺伝性があり、精神疾患の病態解明には、遺伝性 があり疾患の客観的指標となる中間表現型を特定することが重要である。本研究では近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用い、精神疾患の診断補助とし て本邦の先進医療にも採択されている言語流暢性課題中の脳血流変化を一卵性・二卵性双生児の被験者において測定し、同課題中の脳血流の平均変化量への遺伝 的影響を検討した。結果として、左前頭極と右背外側前頭前野の脳血流変化に70%前後の遺伝寄与率が推定された。これはNIRSにより測定された前頭葉課 題中の脳血流変化がimaging-genetics研究等における有用な中間表現型となりうる可能性を示唆している。
13/04/04 横浜市立大学
「社会的隔離環境は発達期バレル皮質のGluA4のシナプス移行を阻害する」
"Social isolation perturbs experience-driven synaptic glutamate receptor subunit 4 delivery in the developing rat barrel cortex. (T. Miyazaki et al.)"-European Journal of Neuroscienceにて掲載(横浜市大・宮崎助教、高橋教授他)

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<概要>
発育期のストレスはその後のさまざまな社会性障害を引き起こす。しかしながら そのメカニズムは不明な点が多い。発育期のバレル皮質においては、初期にはGluA4が、後期にはGluA1はひげ経験依存的に第4層から2/3層にかけて形成されるシナプスに移行する。以前我々は発育期の社会的隔離ストレスがGluA1のシナプス移行を阻害することを証明した。今回の論文では発育期の社会的隔離によりGluA4のシナプス移行も阻害されることを示した。したがって、発育期のストレスはいくつかのシナプス成熟のステップを阻害することにより、非常に強い影響をその後の精神発達に及ぼす可能性があることが明らかになった。
13/03/29 浜松医科大学
「自閉症死後脳前部帯状回におけるグルタミン酸-グルタミンサイクル」
"Enzymes in the glutamate-glutamine cycle in the anterior cingulate cortex in postmortem brain of subjects with autism. (C. Shimmura et al.)"-Molecular Autismにて掲載(浜松医大・新村研究員、森教授他)

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<概要>
本研究では、自閉症死後脳の前部帯状回におけるグルタミン酸-グルタミンサイ クルに関与する5つの酵素発現を測定した。その結果、グルタミンからグルタミン酸への変換を触媒するグルタミナーゼのアイソザイムの一つ、腎臓型グルタミ ナーゼの発現が有意に低下していた。同部位のアミノ酸濃度をみると、自閉症脳では対照に比べ、グルタミン酸とグルタミンのバランスがグルタミン優位の方向にシフトしていた。以上の結果から、前部帯状回におけるグルタミン酸神経伝達の機能不全が自閉症の病態に重要な役割を果たしていることが示唆される。
13/03/27 東京大学
「光遺伝学的手法による大脳皮質運動領域間の機能的結合解析」
"In vivo optogenetic tracing of functional corticocortical connections between motor forelimb areas. (R. Hira et al.)"-Frontiers in Neural Circuitsにて掲載(東大・河西教授他)

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<概要>
本研究ではマウス大脳皮質の二つの前肢運動領域間の結合を明らかにするため、 遺伝子組換えマウスとアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入を用いて異なった皮質層にチャネルロドプシン-2を発現させた。光刺激した細胞からのシナプス入力を電気計測し二領域間の層非対称的相互結合様式を解剖学的計測とともに明らかにした。運動野間の情報伝送機構や疾患モデルにおける運動野活動異常機構を解明するための一歩である。
13/03/13 東京大学
NHK「クローズアップ現代」にて東大・山末准教授他の研究成果の一部が放映されました。
【放送】: 3/13(水) 19時30分~19時56分 総合テレビ
【テーマ】 : 「"大人の発達障害" 個性を生かせる職場とは? 」

【対象論文】: "Diminished Medial Prefrontal Activity Behind Autistic Social Judgments of Incongruent Information."

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13/03/11 北海道大学
「DSM-IV-TRに基づいた新しい(軽)躁病エピソードスクリーニング質問紙の開発と妥当性検証」
"Development and validation of a screening questionnaire for present or past (hypo)manic episodes based on DSM-IV-TR criteria. (R. Kameyama et al.)"-Journal of Affective Disordersにて掲載(北大・亀山研究員、井上講師他)

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<概要>
過去の躁病・軽躁病エピソードが見逃されてうつ病と誤診されている双極性障害患者は多く、誤った治療を受けている。簡便な(軽)躁病エピソードの自記式スクリーニングシート(Manic Episode Screening Test, MES)を我々は作成し、スクリーニングとしての妥当性を検証した。MESは9項目からなるが、最初の質問1のみで気分障害患者では感度0.75,特異度 0.93で過去の(軽)躁病エピソードを検出した。
13/03/11 横浜市立大学
「日本人KBG症候群患者で同定されたANKRD11をまきこむ染色体16q24.3領域のde novoの欠失」
"A de novo deletion at 16q24.3 involving ANKRD11 in a Japanese patient with KBG syndrome. (S. Miyatake et al.)"-American Journal of Medical Geneticsにて掲載(横浜市大・宮武研究員、松本教授他)

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<概要>
KBG症候群は、常染色体優性遺伝の先天性多発奇形/発達障害症候群である。 ANKRD11が疾患責任遺伝子だが、これまで塩基置換または遺伝子内微小欠失のみ知られていた。今回、臨床的にKBG症候群と確定した症例で、自閉症を主徴とする16q24.3微小欠失症候群の責任領域にANKRD11をまきこむ640kbのde novoの欠失を同定した。これら両疾患の臨床的・遺伝学的位置づけを再定義させる貴重な症例と位置づけられる。
13/03/11 東京大学
「脳内のマリファナ類似物質が‘慣れ'をコントロール」
"The Endocannabinoid 2-Arachidonoylglycerol Negatively Regulates Habituation by Suppressing Excitatory Recurrent Network Activity and Reducing Long-Term Potentiation in the Dentate Gyrus. (Y. Sugaya et al.)"-The Journal of Neuroscienceにて掲載(東大・菅谷特任助教、狩野教授他)

2/28 マイナビニュースにて掲載「脳内麻薬の1種が匂いや空間に対する慣れを制御している - 東大が発見」

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<概要>
カンナビノイドシグナリングは馴化を抑制する作用があることが報告されていたが、そのメカニズムに関してはこれまで明らかになっていなかった。今回われわれは、内因性カンナビノイド2-アラキドノイルグリセロール (2-AG) 産生酵素のノックアウトマウスや、カンナビノイドCB1受容体のアンタゴニストを用いて、内因性カンナビノイドが馴化を抑制するメカニズムを検討した。その結果、2-AGは刺激に対する馴化時に海馬歯状回顆粒細胞に入力する反回性の神経回路の興奮性を抑制し、貫通路-顆粒細胞シナプスにおける長期増強を抑制することで馴化を抑制していることを明らかにした。この結果は、内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑制がシナプス可塑性を介して学習を制御することを示唆する。
13/02/28 福島県立医科大学、生理学研究所、京都大学霊長類研究所
「神経疾患遺伝子治療へ向けた高頻度および神経細胞特異的な逆行性遺伝子導入ベクター系」
"Vectors for Highly Efficient and Neuron-Specific Retrograde Gene Transfer for Gene Therapy of Neurological Diseases. (S. Kato et al.)"-Gene Therapyにて掲載(福島医大・加藤助教、小林教授他)

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<概要>
高頻度および神経細胞特異的な逆行性遺伝子導入を示すレンチウイルスベクター(HiRet/NeuRetベクター)は、特定の脳領域に入力する神経路に外来遺伝子を効率的に導入することを可能とし、神経疾患の遺伝子治療のための新たなツールを提供する。本総説では、HiRetとNeuRetベクターの導入特性を概説し、特にNeuRetベクターによる霊長類モデルの黒質線条体ドーパミン系への逆行性遺伝子導入の実例を紹介した。
13/02/26 放射線医学総合研究所
「優越の錯覚はドーパミンの影響を受ける安静時脳機能ネットワークによって生じる」
"Superiority illusion arises from resting-state brain networks modulated by dopamine. (M. Yamada et al.)"-PNASにて掲載(放医研・山田主任研究員、須原プログラムリーダー他)
(放射線医学総合研究所プレスリリース)
(JSTプレスリリース)
2/26  FNNにて掲載「自分は平均より優れていると思い込む「優越の錯覚」を初解明」
2/26 Yahooニュース トップにて掲載「自分は平均より優れていると思い込む「優越の錯覚」を初解明」
2/26 マイナビニュースにて掲載「なぜ自分は平均より優れていると思うのか - 放医研などが脳内の機構を解明」
2/26 時事通信にて掲載「「自分は優秀」錯覚の仕組み解明=抑うつ症状の診断に期待—放医研など」
2/26 毎日jpにて掲載「<脳科学>ドーパミン分泌で「自分は優秀」錯覚 うつ改善も」
2/26 毎日jp夕刊にて掲載「ドーパミン:量が多い人ほど「自分は優秀」と錯覚 放医研チーム発表」
2/26 はてなブックマークニュースにて掲載「「自分は優秀」 心理学の“優越の錯覚”はなぜ起きる? 放医研がメカニズムを解明 」
3/4 日刊工業新聞Business Lineにて掲載「放医研、「優越の錯覚」が脳内メカニズムに関与-抑うつ症診断に道」

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<概要>
今回、優越の錯覚の程度を認知心理課題で測定し、脳にある線条体注のドーパミン受容体密度注と安静時の脳活動注を画像診断装置のPETとfMRIで計測した。そして、これら3つの関係性を調べた結果、優越の錯覚の程度が大きい人ほど、行動や認知を制御している「線条体と前頭葉」の機能的結合が弱いこと、この機能的結合が線条体におけるドーパミン受容体の密度に依存していることが分かった。
13/02/25 横浜市立大学
「細胞内の"ごみ掃除"(自食)に関わる遺伝子の異常が知的障害を引き起こす~患者における突然変異の発見から~」
"De novo mutations in the autophagy gene WDR45 cause static encephalopathy of childhood with neurodegeneration in adulthood. (H. Saitsu et al.)"-Nature Geneticsにて掲載(横浜市大・才津准教授、松本教授他)

2/25 上毛新聞にて掲載「知的障害に原因遺伝子  群大大学院グループ発見」
2/26 OPTRONICSにて掲載「横市大,SENDAと呼ばれる脳の病気の原因遺伝子を同定」
3/5 毎日jpにて掲載「知的障害:発症の遺伝子特定」
2/25 神奈川新聞(社会)22面にて掲載「知的障害起こす病気 原因遺伝子を特定」
3/1 科学新聞にて掲載「オートファジー異常が知的障害を引き起こす 横浜市大が可能性示唆」
3/5 マイナビニュースにて掲載「横浜市立大、脳の病気「SENDA」の原因遺伝子を同定」

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概要>
研究グループはWDR45遺伝子変異が、脳内に鉄沈着を伴う神経変性症を引き起こすこと、患者由来のリンパ芽球ではオートファジー活性の低下とオートファゴソームの形成異常が認められることを世界に先駆けて明らかにした。本研究は、オートファジーの異常と神経変性疾患の関連に関する直接的証明がなされた画期的な研究成果で、今後、オートファジー異常という観点から病態生理の理解がすすむことが期待される。
13/02/20 名古屋大学   名古屋大学
「新生仔期マウスの免疫賦活化による神経障害にはアストログリア細胞のIFITM3が関与している」
"Astroglial IFITM3 mediates neuronal impairments following neonatal immune challenge in mice. (D. Ibi and T. Nagai et al.)"-Gliaにて掲載(名大・永井准教授、山田教授他)

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<概要>Interferon-induced transmembrane protein 3 (IFITM3)はI型interferonの抗ウイルス活性に重要な役割を果たしている (Cell 2009, Nature 2012)。一方、統合失調症や自閉症などの神経発達障害患者脳ではIFITM3 mRNAの発現増加が報告されているが、その役割については全く不明であった。我々は、合成二本鎖RNAアナログであるpolyI:Cを新生仔期に投与した神経発達障害モデルマウスにおいてIFITM3の発現が増加することを報告している。本研究において、polyI:C処置はアストログリア細胞の初期エンドソームにIFITM3を誘導し、エンドサイトーシスを障害することを示した。さらに、IFITM3によるエンドサイトーシスの抑制が神経細胞‐アストログリア細胞の細胞間相互作用に影響し、神経発達障害を誘導することを明らかにした。
13/02/15 慶應義塾大学
「RP58は、発生期大脳皮質における新生ニューロンの多極性から双極性への形態変化を制御する」
"RP58 Regulates the Multipolar-Bipolar Transition of Newborn Neurons in the Developing Cerebral Cortex. (C. Ohtaka-Maruyama, et al.)"-Cell Reportsにて掲載(慶應大・仲嶋教授他)

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<概要>
本研究では、転写抑制因子RP58が、Neurogenin2-Rnd2経路を制御することにより、大脳皮質ニューロン移動において多極性から双極性に形態変化するステップを制御していることを見いだした。まず、RP58欠損マウスでは移動ニューロンの先導突起の形成が著しく障害され、双極性細胞として移動する過程に移ることができないことがわかった。また、子宮内胎仔脳電気穿孔法を用いた条件的欠損の解析により、RP58は細胞周期からの離脱には依存せずに移動ニューロン内在的に機能することを見いだした。さらに、RP58はNeurogenin2の発現を抑制することによりNeurogenin2-Rnd2経路を制御することを見いだし、RP58欠損マウスでの異常はNeurogenin2をノックダウンすることによってレスキューできることを示した。
13/02/14 国立精神・神経医療研究センター
「睡眠不足は扁桃体-前帯状皮質間の機能的結合を減弱させ負の感情を惹起する」
"Sleep Debt Elicits Negative Emotional Reaction through Diminished Amygdala-Anterior Cingulate Functional Connectivity. (Y. Motomura et al.)"-PLoS ONEにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・元村研究員、三島部長他)

2/14 時事ドットコムにて掲載「睡眠不足続くと情緒不安定=脳機能低下、うつ病など類似-精神神経センター」
2/14 マイナビニュースにて掲載「睡眠不足が不安・抑うつを生じやすくする - NCNPが脳内のメカニズムを解明」
2/15 マイナビニュースにて掲載「睡眠不足で情動不安定や抑うつに」
2/17 QLife Proにて掲載「平日わずか5日間の睡眠不足が抑うつリスクになる」

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<概要>
睡眠不足により抑うつ、易刺激性、情動不安定が生じることが知られているが、 そのメカニズムは不明であった。本研究では、平日に相当する5日間にわたり就床時間を4時間(vs.8時間)に短縮した際の表情認知の変化を調べた。その結果、睡眠不足時には徐派睡眠量の減少度に比例して扁桃体と腹側前帯状皮質間の機能的接続が減弱していた。さらにこの機能的接続の減弱は、恐怖表情を視認した際の扁桃体の活動亢進および抑うつ不安強度と相関していた。本研究により、睡眠不足は眠気やパフォーマンス低下だけではなく、情動統制路の機能低下を惹起することが明らかになった。
13/02/08 生理学研究所
2/7 中日新聞web版【愛知】にて掲載「<脳科学のフロンティア>(上) 最先端の遺伝子工学」(生理研・小林准教授)

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13/02/07 東京大学
「神経細胞の突起の"伸び"と"つながりやすさ"は別々に制御される~細胞骨格制御蛋白質DCLKの新しい機能を発見~」
"Doublecortin-like kinase enhances dendritic remodelling and negatively regulates synapse maturation. (E. Shin et al.)"-Nature Communicationsにて掲載(東大・岡部教授他)

2/6 日刊工業新聞Business Lineにて掲載「東大、脳神経形成機構を解明-「DCLK」たんぱく質、突起伸長と接合制御」
2/6 日経プレスリリースにて掲載「東大、脳の発達障害に関連する分子DCLKが神経回路形成を制御するしくみを解明」

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13/02/07 生理学研究所
「パーキンソン病に対する脳深部刺激療法(DBS療法)の作用メカニズムを解明~神経の「情報伝達を遮断」することで治療効果が生まれるという新しい説の提唱~」
"High-frequency pallidal stimulation disrupts information flow through the pallidum by GABAergic inhibition. (S. Chiken et al.)"-The Journal of Neuroscienceにて掲載(生理研・知見助教、南部教授)

1/15 日経プレスリリースにて掲載「生理学研究所、パーキンソン病に対する脳深部刺激療法の作用メカニズムを解明」
1/16 マイナビニュースにて掲載「NIPS、パーキンソン病などに効果のあるDBS療法の作用メカニズムを解明」

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<概要>
神経難病であるパーキンソン病やジストニアの治療法として、大脳基底核の一部である淡蒼球内節(GPi)に電気刺激を与えるという脳深部刺激療法(DBS)が用いられているが、詳しいメカニズムは不明である。本研究では正常霊長類を用い、そのメカニズムを検討した。その結果、GPi-DBSは、GPiに投射するGABA作動性ニューロンの軸索末端を刺激することによってGABAを放出させ、GPiニューロンの活動を抑制するとともに、GPiを介する情報伝達を遮断することがわかった。
13/02/07 東京医科歯科大学
「脳の性差解明に新しい道筋~雌になるためには遺伝的に雌の脳であることが必要~」
"A genetically female brain is required for a regular reproductive cycle in chicken brain chimeras. (F. Maekawa, et al.)"-Nature Communicationsにて掲載(東京医科歯科大・田中教授他)

1/24 日本経済新聞 電子版にて掲載「ニワトリの脳、雌雄入れ替えで産卵遅れ 性差解明に手がかり」

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<概要>
脳の正常な機能や広汎性発達障害などの精神疾患の発症頻度に性差があることが知られている。従来、脳の性差は、性ホルモンにより決定されると考えられてきた。今回、脳移植により脳とそれ以外の身体の性が異なるキメラニワトリを作って解析したところ、性ホルモンの影響を受けず、遺伝的な性により規定される脳機能があることがわかった。脳が雌で体が雄であるニワトリは、雄鶏と区別がつかない。しかし、脳が雄で体が雌であるニワトリでは、性ホルモン濃度は雌と同じであるにも関わらず、性成熟の遅れや産卵周期に乱れが生じた。
13/02/07 慶應義塾大学
「脳梁形成における軸索ガイダンス機構」
"Axon Guidance Mechanisms for Establishment of Callosal Connections. (M. Nishikimi et al.)"-Neural Plasticityにて掲載(慶應大・仲嶋教授他)

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<概要>
脳梁は、左右の大脳半球間で情報をやりとりする上で重要な構造であり、発生過 程で適切に形成されるためにさまざまな制御が行われている。脳梁に交連線維を伸ばす神経細胞の軸索は、正中部に存在する細胞群と、軸索間の相互作用の両者によって正しくガイドされる。本総説では、それらのメカニズムをレビューするとともに、そのメカニズムの破綻によって生じるヒト及びマウスの脳梁形成不全についてまとめた。
13/01/31 東京大学
「統合失調症発症前後を対象とした包括的な脳画像研究プロジェクト(IN-STEP)」
"A multimodal approach to investigate biomarkers for psychosis in a clinical setting: The integrative neuroimaging studies in schizophrenia targeting for early intervention and prevention (IN-STEP) project. (S. Koike et al.)"-Schizophrenia Researchにて掲載(東大・笠井教授他)

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<概要>
東京大学医学部精神神経科で行われている統合失調症発症前後を対象とした包括的な脳画像研究プロジェクト(IN-STEP)を紹介し、現在までに得られている予備的臨床検討を発表した。臨床検討では、発症リスク群および初発精神病群でも登録6ヵ月後の主観的・客観的臨床指標に有意な差がないことを示し、早期支援の重要性を示唆した。発症リスク群における精神病移行率は諸外国と大きな違いはなく、これは本邦初の報告である。
13/01/30 広島大学
「うつ病に対する認知行動療法は自己関連づけ処理に関わる内側前頭前野と腹側前帯状回の活動を変容する」
"Cognitive behavioral therapy for depression changes medial prefrontal and ventral anterior cingulate cortex activity associated with self-referential processing. (S. Yoshimura et al.)"-Social Cognitive and Affective Neuroscienceにて掲載(広島大・山脇教授他)

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<概要>
うつ病に対する認知行動療法有効な治療法として知られており、その治療ターゲットの一つはうつ病患者に特有な情動刺激の自己関連処理である。我々はうつ病患者に対して認知行動療法を行い、fMRIを用いて治療前後に情動刺激の自己関連処理遂行時の脳活動の測定を行った。治療前後のうつ病患者の脳活動は、内側前頭前野と腹側前帯状回に有意な変化がみられた。また、治療による症状の改善は治療前の腹側前帯状回の活動と正の相関が見られた。このことから、認知行動療法は、うつ病患者の自己関連処理における内側前頭前野と腹側前帯状回の活動に影響することが明らかになった。
13/01/28 金沢大学
「広汎性発達障害児の優れた能力に関わる脳内ネットワークの解明」
"A custom magnetoencephalography device reveals brain connectivity and high reading/decoding ability in children with autism. (M. Kikuchi et al.)"-Scientific Reportsにて掲載(金沢大・菊知特任准教授、三邉教授、東田特任教授他)

1/26 北國新聞ホームページにて掲載「発達障害時の脳の働き解明 金大教授ら」

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<概要>
一部の発達障害児は、言語的な概念の形成は苦手であるが、視覚的な情報処理においては、同等、あるいは逆に優れている傾向があることは知られていました。今回我々は幼少期(5-7歳)から同様の現象があることを示しました。そして、特に字を読む能力は、大脳の右半球の後方部(頭頂-側頭-後頭)の脳機能結合の高さに関係することを、幼児用脳磁計を活用して解明しました。
13/01/28 ATR
「ベイズ正準相関分析から導出されるモジュラー・エンコード/デコード・モデル」
"Modular encoding and decoding models derived from bayesian canonical correlation analysis. (Y. Fujiwara et al.)"-Neural Computationにて掲載(ATR・藤原研究員、神谷室長他)

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<概要>
要素特徴を予測するデコーダを多数組み合わせることで、数億通りもの画像を再構成することができるモジュラー・デコード・モデル (Miyawaki et al., Neuron 2008)を拡張し、要素特徴をデータから自動的に推定しながら、エンコード・モデルも導出できる統一的な枠組みを提案した。
13/01/25 慶應義塾大学、実験動物中央研究所
「小型サルの脳発達MRIデータベースを構築」
"Atlas of the developing brain of the marmoset monkey constructed using magnetic resonance histology. (K. Hikishima et al.)" -Neuroscienceにて掲載(慶應大・岡野教授、実中研・佐々木部長他)
**1/29号の表紙に選ばれました**

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<概要>
脳の劇的な発達変化を理解するため、7テスラMRIを用いて小型なサルであるコモンマーモセットの脳発達形態のデータベースを構築した。開発した非侵襲的脳計測法やアトラスとその電子データベースは神経研究基盤として、分子発生学や遺伝学、幹細胞医学など幅広い研究分野へ貢献が考えられる。

**1/29号の表紙に選ばれました**
13/01/25 東京大学   東京大学
「道具を使った随意運動中の大脳神経細胞の活動パターンが明らかに ~神経活動パターンからの行動予測にも成功~」
"Spatiotemporal Dynamics of Functional Clusters of Neurons in the Mouse Motor Cortex during a Voluntary Movement.(R. Hira et al.)"-The Journal of Neuroscienceにて掲載(東大・河西教授、狩野教授他)

1/24 マイナビニュースにて掲載「随意運動の際に活動する微小な神経ネットワークを発見 - NIBBなど」

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<概要>
2光子励起顕微鏡を用いて、自発的な運動(レバー操作)を行っているネズミの運動野の多数の神経細胞の発火を観察した結果、70ミクロン位の領域で神経活動には強い相関があり、そのため活動頻度が高くなりこれらの細胞が持つ運動の情報量を上げることがわかった。この結果は、自発性の運動には強く相互結合した微小神経回路が関与していることを示唆している。
13/01/25 国立精神・神経医療研究センター
「全血中のmRNA発現を調整する-塩基多型のゲノムワイドな同定~日本人におけるeQTL研究~」
"Identification of single nucleotide polymorphisms regulating peripheral blood mRNA expression with genome-wide significance: an eQTL study in the Japanese population. (D. Sasayama et al.)"-PLoS ONEにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・篠山研究員、功刀部長他)

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<概要>
全血中のmRNA発現量は、種々の疾患マーカーとなることが示唆されている。 従って、全血中mRNA発現量がどのような遺伝子によって規定されているかについて明らかにすることは、疾患のバイオマーカー研究や原因遺伝子同定において極めて有用な情報となる。しかし、発現量的形質座位(eQTL)が全血の遺伝子発現に与える影響をアジア人種でゲノムワイドに調べた研究は、我々が知る 限りでは今まで行われたことがなかった。本研究では、日本人76名の全血を用いてゲノムワイドな遺伝子タイピングとRNAマイクロアレイ解析を行い、534,404の一塩基多型(SNP)の遺伝子型と30,465の遺伝子発現プローブの発現量との間の相関を調べた。クロスハイブリダイゼーションの危険が高いプローブを除き、さらにプローブの配列内にターゲットとなるSNPが含まれている場合を除くことで擬陽性の危険を減らし、多重検定による厳密な補正を行った結果、1,554のSNP-プローブのペアにおいて有意な相関が認められ、1,153のeQTL SNPsを同定した。それによって、SNPによって発現が規定されている既知の遺伝子を107個同定した。また、本研究によって得られた生データをデータ ベースに登録した。本研究から得られた情報は、血液中の遺伝子発現をバイオマーカーとする研究や病気の原因を解明する上で極めて貴重である。
13/01/25 東京工業大学
「筋の粘弾性特性を考慮した最適な筋活動を予測する手首運動のための計算論的な制御モデル」
"A computational model for optimal muscle activity considering muscle viscoelasticity in wrist movements. (H. Kambara et al.)"-Journal of Neurophysiologyにて掲載(東工大・神原助教、小池教授他)

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<概要>
筋肉は伸ばされたときに縮もうとするバネ的な性質や、収縮速度を低減するダンパー的な性質を有している。今回の論文では、筋の粘弾性特性を考慮した運動指令を生成する数理的な運動制御モデルを提案した。その結果、粘弾性を考慮しなかった過去の研究に比べてより多くの筋活動パターンが再現できることを確かめた。 脳がどのような情報処理を行い筋肉を活動させているのかを理解することは、脳の運動制御機構の解明だけでなく、BMIの開発に有用な知見を与えると考えら れる。
13/01/25 国立精神・神経医療研究センター
「統合失調症患者および大うつ病性障害患者における髄液中インターロイキン-6濃度の上昇」
"Increased cerebrospinal fluid interleukin-6 levels in patients with schizophrenia and those with major depressive disorder. (D. Sasayama et al.)"-Journal of Psychiatric Researchにて掲載(国立精神・神経医療研究センター・篠山研究員、功刀部長他)

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<概要>
精神疾患では、炎症性サイトカインが病態に関与していることが示唆されているが、血中サイトカインと脳脊髄液中サイトカインを同時に測定した研究は少ない。われわれは、統合失調症(N=32)、大うつ病性障害(N=30)、健常対照者(N=35)の脳脊髄液と血液中のインターロイキン-6 (IL-6)濃度を測定した。その結果、患者群は健常対照群と比較して脳脊髄液中IL-6濃度が有意に高かった(統合失調症: P = 0.0027, 大うつ病性障害: P = 0.012)。注目すべきことに髄液中IL-6濃度は血清中IL-6濃度より有意に高く、両者間に有意な相関はみられなかった。以上から、統合失調症と大うつ病性障害の病態には中枢性のIL-6が関与しており、中枢神経系の軽度の炎症が関与する可能性が示唆された。
13/01/18 国立精神・神経医療研究センター
1/11 日経ビジネスにて掲載「朝型や夜型だけではない。非同調型も見つかった」(精神・神経C・三島部長)
関連論文:"Intrinsic Circadian Period of Sighted Patients with Circadian Rhythm Sleep Disorder, Free-Running Type. (S. Kitamura et al.)"

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13/01/18 名古屋大学
「思春期のストレスは神経エピジェネティクス機構の障害を引き起こし、成体の行動パターン・神経系を障害する」
"Adolescent Stress-Induced Epigenetic Control of Dopaminergic Neurons via Glucocorticoids. (M. Niwa et al.)"-Scienceにて掲載(名大・尾崎教授他)

1/18 NHK NEWSWEBにて掲載「うつ病の発症メカニズム解明」
1/18 日本経済新聞 電子版にて掲載「思春期のストレスがうつ病の一因に 名城大、マウスで解明」

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<概要>
精神疾患の発症には遺伝要因と発達段階に受けた心理的ストレスが関与する可能性が示唆されていたが、その分子メカニズムは不明であった。今回、思春期にあたるDISC1遺伝子改変マウスに隔離飼育によるストレス負荷をした結果、発達期のストレスはコルチコステロンを介してドパミン神経に持続的なエピジェネティックな変化を引き起こすことで、成体期も続く行動異常をもたらすことが判明した。本結果は精神疾患の発症機序解明や予防・治療法開発に有用な情報を提供し得る。
13/01/16 基礎生物学研究所
「新世界ザルの目の中にモーション・ディテクターと考えられる視神経細胞を発見~霊長類網膜短期培養保存法の確立および遺伝子導入で~」
"Diversity of Retinal Ganglion Cells Identified by Transient GFP Transfection in Organotypic Tissue Culture of Adult Marmoset Monkey Retina. (S. Moritoh et al.)" PLoS ONEにて掲載(基生研・小松特任助教、山森教授他)

1/16 マイナビニュースにて掲載「NIPS、モーション・ディテクターの特徴を持つ視神経細胞をサルから発見」
1/16 日経プレスリリースにて掲載「生理学研究所、新世界ザルの目の中にモーション・ディテクターと考えられる視神経細胞を発見」
2/8 科学新聞6面にて掲載「『モーション・ディテクターの役割』視神経細胞発見」
2/26 中日新聞19面にて掲載「動き感知の視神経 サル網膜から発見」

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<概要>
新世界ザル(マーモセット)と呼ばれるサルの目の中の網膜には、様々な形の神経細胞があり、中でも、モノの動きや方向を検知するモーション・ディデクターともいえる神経細胞があることを形態学的につきとめた。これまで下等な哺乳類ではそうしたモーション・ディデクターが網膜にあることは知られていたが、霊長類網膜で発見されたのははじめて。研究グループは、霊長類網膜の短期保存法に成功。保存した網膜への遺伝子導入によって、形態学的に、モーション・ディテクターと考えられる神経細胞を見つけだした。
13/01/16 自治医科大学
「グレリンはNO産生による利尿を促進し、ダールラットの食塩誘発高血圧を抑制する」
"Ghrelin counteracts salt-induced hypertension via promoting diuresis and renal nitric oxide production in Dahl rats. (H. Aoki et al.)"-Endocrine Journalにて掲載(自治医大・中田准教授、矢田教授他)

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<概要>
本態性高血圧の成因は多様であるが、心血管性・体液性・中枢神経性成因が関与し、環境因子として高食塩摂取は重要である。食塩感受性Dahlラットにおいて、高食塩食は高血圧と心室肥厚を起し、摂食促進神経ペプチドグレリンの長期投与はこれらを是正して降圧作用、心保護作用を示した。作用機序 として腎NO産生によるNa利尿が促進しており、Na・浸透圧受容器の修飾の可能性が示唆される。
13/01/16 慶應義塾大学
「皮質発生及び関連した脳疾患を研究する鍵分子としてのDISC1」
"DISC1 as a key lead in studying cortical development and associated brain disorders. (S. Narayan et al.)"-The Neuroscientistにて掲載(慶應大・仲嶋教授他)

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<概要>
統合失調症をはじめとする主要な精神疾患の生物学的基盤を理解する有力な手が かりとしてDISC1が注目され、近年数多くの研究がなされてきた。本稿では、発生過程に起因するさまざまな脳疾患に関連して、特に大脳皮質発生を研究する上でのDISC1の意義に着目して最近の知見を紹介する。皮質発生は、細胞自律的及び非自律的に機能する内的メカニズムに、さらに個体に対する環境因子による影響が加わって進行するが、その多くのプロセスにDISC1が関わっている。そこで、皮質形成を制御し治療標的にもなりうる複数のメカニズムの全体像を理解する上でのDISC1の重要性について議論する。
13/01/16 浜松医科大学
「14ヶ月齢までの運動発達における季節性パターン~浜松母と子の出生コホート研究~」
"Seasonal Variations of Neuromotor Development By 14 Months of Age: Hamamatsu Birth Cohort for Mothers and Children (HBC Study). (K. J. Tsuchiya and H. Tsutsumi et al.)"-PLoS ONEにて掲載(浜松医大・土屋特任准教授、森教授他)

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<概要>
新生児を追跡し、その運動発達を6、10、14ヶ月齢において評価して児の出生月との関連を解析したところ、6、10ヶ月齢において冬季生まれの児が高スコア、夏季生まれの児が低スコアとなる周期性がみられたが、14ヶ月齢では周期性が観察されなかった。この「出生月効果」は、実際には過ごした月によって説明された。すなわち、生後約1年間の運動発達は、気温の高い5~10月に加速する可能性が示唆された。
13/01/10 金沢大学
「『コミュニケーション』をマウスのレベルで研究する方法を発見」
"Displays of paternal mouse pup retrieval following communicative interaction with maternal mates. (Hong-Xiang Liu et al.)"-Nature Communicationsにて掲載(金沢大・東田教授他)

1/9 YOMIURI ONLINEにて掲載「子育て参加に妻のにおい・声必要...オスのマウス」
1/9 朝日新聞デジタルにて掲載「『イクメン』育てるのは妻 マウス実験の話ですが...」
1/9 毎日jpにて掲載「マウス:イクメン 妻とのコミュニケーションで子育て」
1/9 東京新聞にて掲載「妻の働きかけで『イクメン』に マウスの育児 婦唱夫随」
1/9 時事ドットコムにて掲載「母の鳴き声で父も育児=マウスで発見、分泌物も効果-脳仕組み解明期待・金沢大など」
1/9 北陸中日新聞1面にて掲載「夫婦一緒だとイクメンに-金大がマウス実験」
1/9 北國新聞27面にて掲載「夫婦一緒なら『イクメン』に-子育てしない父マウス一変」

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概要>
実験室で飼われているマウスの家族を使い、父親の養育行動が母親から父親への 「家族を大切にせよ・仔育てせよ」という文脈を持つコミュニケーション(母親から発せられる超音波音声と未同定のフェロモン)により維持される事を見出した。
13/01/07 大阪大学
「アルツハイマー病原因ペプチドAβ42はそれを産生する酵素γセクレターゼの中間代謝産物である」
"γ-Secretase Modulators and Presenilin 1 Mutants Act Differently on Presenilin/γ-Secretase Function to Cleave Aβ42 and Aβ43. (M. Okochi et al.)"-Cell Reportsにて掲載(阪大・大河内講師、武田教授他)

1/3 時事通信にて掲載「原因物質、酵素が分解=アルツハイマー治療薬に道-大阪大」
1/3 中国新聞にて掲載「認知症物質を無毒化 阪大解明、予防や治療期待」
1/3 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版にて掲載「原因物質、酵素が分解=アルツハイマー治療薬に道-大阪大」
1/7 朝日新聞にて掲載「悪役の酵素、有益な使い道も アルツハイマー新薬へ期待」

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<概要>
Aβは長さの異なる(37~43アミノ酸残基)いくつかの分子種からなる細胞外に分泌されるペプチドでアルツハイマー病脳に蓄積する。中でもAβ42は病原性の分子種で、Aβ42産生の増加がアルツハイマー病(特に家族性アルツハイマー病)の病理過程の初めの出来事であるから、Aβ42産生がどのようにし て制御されているか、その仕組みの解明は重要である。Aβはγセクレターゼ酵素によって作られるが、今回我々は新しく作られたAβ42がそのγセクレターゼ酵素によりさらにAβ38に分解されることを示した。即ち、Aβ42はγセクレターゼ酵素の中間代謝産物であり、それが酵素から離れてしまうことにより 産生されることを初めて明らかにした。さらに、実際に家族性アルツハイマー病の原因となる変異型蛋白やアルツハイマー病治療薬候補γセクレターゼ修飾薬で Aβ42の産生量が変化する時、この作用が働いていることを示した。我々の結果は以下のことを示唆している。
1)γセクレターゼ修飾薬はAβ42産生を低下する作用があり、次世代アルツハイマー病治療薬の有力候補である。この薬剤がどのようにして作用しているのか今まで不明であったが、それを明らかにした。
2)Aβ42はγセクレターゼ酵素による連続切断の途中でAβ42がその酵素から離れることで産生されることを明らかにした。
13/01/07 国立精神・神経医療研究センター
"Increased cerebral blood flow in the right frontal lobe area during sleep precedes self-awakening in humans. (S. Aritake et al.)"-BMC Neuroscienceにて掲載(精神・神経C・三島部長他)

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<概要>
目覚まし時計が無くても希望の時刻に覚醒できる能力を自己覚醒と呼ぶ。数百ミ リ秒のタイミング予測には基底核、小脳、大脳皮質の関与が推定されているが、自己覚醒のような数時間にわたる長時間カウントのメカニズムはほとんど明らかになっていない。本研究では、15名の被験者を1)入眠3時間後に自己覚醒させる「リクエスト夜」と、2)朝まで眠るように促して入眠3時間後に強制的に覚醒させる「サプライズ夜」に導入し、睡眠中の皮質活動を近赤外分光法(NIRS)により連続モニターした。その結果、自己覚醒に成功した7名では覚醒に先立つ30分前から右前頭前野における血流量の増加が生じ、同時に徐波パワーの減衰が認められた。一方、自己覚醒できなかった8名では何らの変化も認めなかった。また、成功群、不成功群ともに「サプライズ夜」には脳血流量の変化は生じなかった。本研究の結果は、自己覚醒の達成に前頭前野の賦活を包含する時刻計測システムが寄与している可能性を示唆している。
13/01/07 東京大学
「思春期の脳科学研究と統合失調症の生物学的研究を相補的に進める必要性を指摘」
"Toward an interdisciplinary science of adolescence: insights from schizophrenia research. (K. Kasai)"-Neuroscience Researchにて掲載(東大・笠井教授)

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<概要>
統合失調症は思春期が好発期であり、自我障害を主徴とする。統合失調症の神経画像研究により、発症前後の進行性脳形態・機能異常の存在が分かり、この時期の早期介入の重要性が明らかにされた。一方、思春期は、自我が発達するライフ ステージであるが、この時期の脳発達の分子・回路メカニズムは未解明の部分が多い。今後、思春期の脳科学と統合失調症の研究を相補的に行うことで、思春期の脳発達のしくみの解明とその障害の治療法開発が進展することが期待される。
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