Research

研究活動

遺伝子改変動物作製室

研究部門メンバー

実験小動物における生殖・発生工学技術ならびに遺伝子改変技術の開発

 外来遺伝子がゲノム上に組み込まれたトランスジェニック動物,あるいは特定の遺伝子機能を破壊したノックアウト動物といった遺伝子改変動物は,生命科学研究において欠かせないツールとなっています。特に,近年のCRISPR/Cas9システムをはじめとした遺伝子編集技術の急速な発展に伴い,より迅速かつ効率的に望みの動物を作製することが可能になってきました。遺伝子改変動物作製室ではそれら最新の技術を取り入れ,国内外研究機関からの依頼に応じて遺伝子改変動物(マウス,ラット)の作製を担っています。さらに,初期胚と幹細胞を用いた新たな生殖・発生工学技術の開発も行っています。その一つとして,当研究室のもつ基盤技術の再生医療研究への応用に力を入れ,臓器を欠損させたノックアウト動物体内に多能性幹細胞 (ES 細胞/iPS 細胞) 由来の臓器を再生する「胚盤胞補完法」の開発・発展にも大きな貢献をしました。また最近ではラットの多能性幹細胞から次世代個体作出に繋がる機能的な生殖細胞の分化誘導に成功しています。
今後,げっ歯類以外の動物種にも範囲を拡げ,新規の技術開発やモデル動物作製を通じて,幹細胞の分化制御,初期発生や臓器形成に係るメカニズムの解明などを進め,生命科学のみならず,将来的には再生医療や生殖医療に貢献することを目指します。
 

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図1. ラット多能性幹細胞から試験管内で精子・卵子の元になる始原生殖細胞を作製.

A) 概要図 
B) 異なる発生段階の胚から樹立された 2種類のラット多能性幹細胞
C) ラット ES 細胞から誘導された始原生殖細胞 (PGC) 様細胞 (PGCLC)。塊のうち赤い部分が生殖細胞。
D) ラット ES 細胞由来の始原生殖細胞が移植されてから 10週後の精巣写真。精子形成が起こっている場所は緑色レポーターが陽性になる。

代表的な論文情報

*K. Iwatsuki et al., Cell Rep Methods. 3, 100542 (2023).
*M. Oikawa et al., Science 376, 176 (2022).
*M. Oikawa et al., Mol Reprod Dev. 89, 129 (2022).
*T. Kobayashi et al., Cell Rep. 37, 109812 (2021).
*T. Kobayashi et al., Nat Commun. 12, 1328 (2021).