生理学研究所は,全国の国公私立大学をはじめとする他研究機関との各組織の枠を越えての共同利用研究を推進することを使命としています。そのため,大型機器や最先端計測機器,高度技術を必要とする計測システム,および4次元イメージングのための先端機器の開発・維持・管理をおこない共同利用に供与しています。
水素原子の核磁気共鳴現象を利用することにより,脳構造の詳細な画像化と共に,脳血流を介して脳の局所機能をも画像化する装置です。生理研では2000年度に3 tesla MRI装置を導入し、人間の高次脳機能の神経基盤を詳細に検討してきました(2018年度にshutdown)。さらに2009 年度に3 tesla MRI 2台からなる同時計測システムを新規導入し,個体間の社会的相互作用中の神経活動を同時に記録解析することが可能となりました。また、2014年度にヒト用 7 tesla MRI装置が導入され、2015年度稼働開始しました。2016-2017年度は、撮像と画像処理に関する技術的検討・開発のための共同利用実験に供しました。2018年度に安定な稼働が確実となりましたので,広く共同利用実験全般に供しています。
【主な設備】 3テスラ磁気共鳴装置(Verio 2 台,シーメンス社製,2009 年度導入),視聴覚刺激提示装置,画像解析システム。7テスラ磁気共鳴装置 (Magnetom 7T, シーメンス社製、2014年度導入)。
低温電子顕微鏡は,無染色の氷包埋生物試料を高分解能で観察することができます。装置には凍結試料を液体窒素温度で観察できる低温試料ホルダーに加え,無染色試料を可視化する位相板システム,ノイズ源となる非弾性散乱電子を除去するエネルギーフィルター,電子直接検出カメラが搭載されています。200 nmまでの厚い凍結生物試料を高分解能・高コントラストで観察でき,蛋白質,ウイルス,バクテリア,培養細胞,組織切片などの生物試料を生(なま)に近い状態で構造解析することができます。
連続ブロック表面走査型電子顕微鏡(SBF-SEM)は,2012年度より新しく導入された先端三次元ナノイメージング装置です.現在、高解像度型と広視野型の2機種が稼働しています。SBF-SEMは,樹脂包埋された試料をダイヤモンドナイフで薄く削りながら,そのブロック表面に現れる構造を走査型電子顕微鏡(SEM)により連続的に記録し,試料の三次元構造を再構築します。脳組織のような比較的大きな試料の三次元構造を,数ナノメートルの解像度で可視化することができます。
多光子励起法は,超短フェムト秒パルスレーザーを対物レンズ焦点面で集光させ、さらに非線形光学現象を利用することで蛍光分子をピンポイントの領域で励起し,神経細胞などのイメージングを行うことができる最新の方法です。汎用的に利用されている1光子励起法と比較し,長波長の励起光を利用するため,脳組織などの深部到達性に優れており,さらに組織侵襲性が少ないのが特徴です。現在,正立型2 光子顕微鏡を用いて,神経細胞・グリア細胞などの活動・動態の生体内観察や,各種光感受性物質の活性化制御を行うことができます。また、2 光子蛍光寿命イメージング顕微鏡を用いたFRETイメージング等もおこなっています。
マウス・ラットの代謝生理機能に関わる以下の項目を計測します。(A)情動、学習・記憶に関わる行動の評価及び神経・筋活動の解析,(B)マウスを用いた非侵襲的4次元心機能および脳/末梢循環の超音波イメージング計測,(C)病態モデルマウスを用いた神経・免疫連関の機能解析,(D)生体脳細胞活動計測と操作, (E)生体生理計測とその解析。
【主な設備】 脳波計測装置,筋電図,慢性実験テレメトリー自動計測システム,4次元超音波イメージング装置VEVO3100,摘出心臓灌流装置,オープンフィールド試験解析装置,明暗往来実験装置,バーンズ円形迷路試験,高架式十字迷路試験解析装置,強制水泳試試験解析装置,ロータ・ロッド試験解析装置,受動的回避反応試験解析装置,恐怖条件づけ試験解析装置,モリス水迷路試験解析装置,集団型全自動行動・記憶学習測定システム,ニコン A1MP+ホログラフィック顕微鏡,脳 in-vivo イメージング&オプトジェネティクスシステム,X線照射装置,Neuropixels 多点電極記録