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生理研について

About NIPS

目標・使命・運営方向

1. 生理学研究所の目標と長期展望

 人体基礎生理学は、人体の生命活動とそのメカニズムを解明する学問であり、人々が健康で心豊かな生活を送るための科学的指針を与えると共に、病気の発症メカニズムを解明するための基礎となる科学的情報をも与える学問です。生理学研究所は、人体基礎生理学の研究・教育のための唯一の大学共同利用機関であり、創設来の「生体を対象に分子、細胞、器官、個体レベルの研究を推進し、究極において人体の機能を総合的に解明することを目標とする」という申し送り事項を堅持しています。
 とりわけ脳は、人体の全身の臓器や組織を統御・調節すると共に、それらからも影響を受けながら、生体の恒常性を維持するという、からだの司令塔と言えます。つまり脳・神経系の役割や生体恒常性に関する基礎的研究は、生理学において極めて重要と言えます。生理学研究所が研究対象の中心に脳・神経系と生体恒常性を据えているのは、このような理由があるためです。
 脳研究にウエイトを置いた生理学研究所への舵取りは、1991年に脳磁場測定装置(脳磁計MEG)の導入を決断された江橋節郎第2代所長により行われ、2004年の法人化後も堅持されています。法人化以降現在に至るまで、生理学研究所は「人体の仕組みについて脳機能を中心に解明する脳科学的生理学」に力点をおいた研究を推進していきます。そして近い将来、「脳と人体各器官・組織との相互作用を解明し、全人体機能を脳機能との相互関係の中で統合的に解明する人体統合生理学」に力点を移した研究を行えるよう、その基盤を固めていくことが、現在の課題と言えます。更に未来は、「諸学を取り込んだ総合人間科学としての人間科学的生理学」に取り組むための総合的な大学共同利用研究機関になるため、現在より基礎固めを行っていきます。このような長期的展望に基づき、種々の環境整備も行われていく必要があると考えます。 
 

2.生理学研究所の使命

1. 生理学研究のトップランナーとして
生理学研究所は、生体を対象に、分子から細胞、組織、器官、システム、個体にわたる各レベルにおいて、世界トップレベルの研究を推進するべく、日々研究を行っています。また各レベルにおける研究成果を有機的に統合し、生体の働き(機能)と仕組み(メカニズム)を解明することを、第一の使命としています。
 
2. 生理学研究の中核機関として
生理学研究所は、全国の国公私立大学をはじめとした、国内外の研究機関に対し、共同利用研究機関として、生理学研究所の最先端施設・設備・データベース・研究技術・会議施設などを広く提供することを、第二の使命としています。また生理学研究所は、共同利用研究推進のため多彩な研究会やシンポジウムなどを開催し、国内外の研究者を繋ぐコミュニティの拠点として、その役割を果たしています。
 
3. 研究者の育成機関として
生理学研究所は、総合研究大学院大学の生命科学研究科・生理科学専攻を担当し、5年一貫制博士課程による学生の受け入れを行っています。また他の研究機関に属する学生や研究者に対して、トレーニングコースや各種講座、シンポジウムなどを開催することで、国内外の生理学研究を支える国際的な生理科学研究者の育成の一助となっています。世界の生理学研究を支える人材の育成は、生理学研究所の第三の使命と言えます。
 
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3.生理学研究所における研究の当面の柱

 生理学研究所はその第1の使命「世界トップレベル研究推進」を果たすため、次の6つを柱にして脳と人体の機能と仕組みの基礎的研究を推進していきます。
 
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① 機能分子動作・制御機構解明

分子・細胞レベルの研究によって分子・超分子から細胞への統合を目指す

 すべての細胞の働き(機能)は、分子群の働きとそれらの協同によって支えられていますが、我々はこのような分子軍の機能メカニズムの詳細な解明を目指しています。
 
研究の目標
1. チャネルやレセプター、センサー、酵素などの機能タンパク質と、これらの分子複合体(超分子)の構造や機能を解明
2. 分子複合体の動作と制御メカニズムを解析し、細胞機能の異常・破綻による病態や細胞死メカニズムを包括的に解明
3. 神経系細胞の分化・移動や脳構造形成などに関わる機能分子を見いだし、その動作メカニズムを解明
4. 分子異常による病態を解明

② 生体恒常性維持・脳神経情報処理機構解明

マウス・ラットを用いた研究によって細胞から組織・器官・個体への統合を目指す

 生体恒常性維持と脳神経情報処理の働きは、不可分の関係を持ちながら人体の働きにおいて最も重要な役割を果たしています。それゆえ、生理学研究所では生体恒常維持メカニズムと脳情報処理の機能連関を解明することに、大きな力を注いでいます。
 
研究の目標
1. 疼痛関連行動、摂食行動、睡眠・覚醒と体温・代謝調節などの生体恒常性を維持するための遺伝子基盤を解明
2. 生体恒常機能の環境依存性や発達、適応(異常)についての詳細を解明
3. シナプス伝達機構とその可塑性、神経回路網の基本的情報処理機構とその発達について解明
4. ニューロン-グリア-血管ネットワーク連関などの解析から、脳の可塑性(とその異常による病態)を解明

③ 認知行動機構解明

ニホンザルを用いた研究によって脳と他器官の相互作用から個体への統合を目指す 

 ヒトの脳機能の多くと相同性を示すのは、ニホンザルなどのマカクザル以上の霊長類です。、生理学研究所は、ニホンザルを用いて研究を行っています。特に、視覚、聴覚、嗅覚、体性感覚などの感覚認知情報処理課程の検索や、他者の認知、そして注意や随意運動などといった行動機能の解明には、ニホンザル(マカクザル)を用いた「脳と他の感覚器官や、運動器官との相互関係に関する研究」が不可欠です。
 
研究目標
1. パーキンソン病をはじめとする神経難病の病態解明
2. 脊髄や大脳皮質一次視覚野の損傷後の回復機構の解明
3. ブレインマシンインターフェイス(BMI)の基盤技術の開発につながる基礎研究
4. 脳機能(ソフトウエア)と脳構造(ハードウエア)の対応の因果律的解明
5. マシン表現可能な脳内情報抽出の基礎研究
6. 霊長類動物脳への改変遺伝子発現法の開発
 

④ 高度認知行動機能解明

ヒトを対象とした研究によって脳機能から体と心と社会活動への統合を目指す

 より高度な脳機能の多くは、ヒトの脳のみにおいて特に発達したものです。生理学研究所では、非侵襲的な方法を用いて、ヒトを対象とした脳研究を展開しています。特にヒトの顔の認知処理メカニズムやさまざまな感覚の認知や多種感覚統合処理課程の検索、言語や情動、記憶、そして社会能力などといった、より高度な認知行動とその発達(異常)の研究は、ヒトを用いた非侵襲的な研究によってのみ成し遂げられます。
 
研究目標
1. ヒトのこころとからだの結びつきの解明
2. ヒトの精神発達過程における感受性期(臨界期)の解明
3. 脳・精神発達異常解明
4. ヒトとヒトの脳機能の相互作用の解明
5. ヒトの社会活動における脳科学的基盤の解明
 

⑤ 四次元脳・生体分子統合イメージング法開発

階層間相関イメージング法の開発によって分子・細胞・神経回路・脳・個体・社会活動の6階層をシームレスに繋ぐ統合イメージングを目指す

 生理学研究所は、分子・細胞から脳・人体に適用可能な各種イメージング装置を配備して共同研究に供している唯一の共同利用機関です。脳と人体の働きとその仕組みを分子のレベルから解明し、それらの発達過程や病態変化過程との関連において、その四次元的(空間的+時間的)なイメージング化を進めています。
 
☆ 法人化後のイメージング装置導入遍歴と目標
○ 第一期(2004-2009年)
 超高圧電子顕微鏡(HVEM),位相差電子顕微鏡,多光子レーザー顕微鏡,機能的磁気共鳴断層画像装置(fMRI),SQUID生体磁気測定システム(脳磁計MEG),近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)などの最先端イメージング装置を駆使した、各階層レベルにおける研究と共同利用実験を推進してきました。最終年度である2009年には、2個体同時計測機能的MRI(dual fMRI)の配備が行われ、社会脳研究にも踏み出しました。
○ 第二期(2010-2015年)
7テスラ機能的磁気共鳴画像装置(7T-fMRI)
 分子、細胞、脳のスケールを超えた統合をしていくために、各階層レベルの働きを見る特異的イメージング法とその間をつなぐ数々の相関法の開発を成し遂げていきます。
 神経情報のキャリアである神経電流の非侵襲的・大域的可視化は、その重要性が指摘されながらも未踏であることは否めません。サブミリメートル分解能をもって、非侵襲的に刺激を与えながら脳内電気シグナルを計測することができる、新しい生体電磁気計測システム(アクティブEEG/MEG)法が、現在のところ未踏技術に近いと言えます。これらの研究を進めることで、神経回路レベルと脳レベルの解明を目指します。
 また、無固定・無染色標本をサブミクロンで可視化して細胞・分子活性を光操作しながら観察することができる、多光子励起レーザー顕微鏡法を開発し、細胞・シナプスレベルから神経回路網レベルの接続の実現を目指します。
 さらに、無固定・無染色のレーザー顕微鏡用標本をそのままナノメーター分解能で可視化することができる低温位相差超高圧電子顕微鏡トモグラフィーを新規開発して、分子レベルと細胞レベルを接続させます。一方、分子レベルからヒト個体レベルを接続するための相関法として、分子イメージングを可能とするMRI 分子プローブ法を開発していきます。分子レベルから脳・神経ネットワークレベルへの接続は、当面は網羅的行動様式解析によって行い、将来的には(プロトンのみならず炭素やリンのイメージングも可能な)超高テスラfMRIの開発やPETの配備によって実現することを計画しています。
 これらの三次元イメージングの統合的時間記述(四次元脳・生体分子統合イメージング)によって、精神活動を含む脳機能の定量化と、分子レベルからの統合化、およびそれらの実時間的可視化を実現します。 
 
 
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⑥ モデル動物開発・病態生理機能解析

病態モデル動物を用いた研究によって病態生理機能の解明を目指す

 統合的な生理学研究を推進していくために、病態基礎研究も組み込んだ研究を進めていきます。この研究を遺伝子改変マウス・ラットや遺伝子導入サルにおける病態表現型を用いて進めるとともに、ヒトの病態に関する知見とも照らし合わせていくことも必要です。これによって、分子からヒトの個体そして社会活動に至る6階層を繋ぐ研究が可能となります。生理学研究所では、これまで多数のトランスジェニック(TG)マウスやノックアウト(KO)マウスを作成・供給してきましたが、これらにおいて病態表現型を示すものが多くなってきました。生理学研究所ではこれらの遺伝子改変マウスの他に、TGラットの作成・供給にも大きな実績がありましたが、更に2010年には待望のKOラット作成技術の確立も「遺伝子改変動物作製室」によって実現されました。今後、これらの遺伝子改変ラットにおいても、病態表現型を示すものが得られてくると考えられます。
 ラットはマウスと比較して、より複雑な行動様式の解析ができるうえ、脳の大きさが大きくてin vivo電気生理学的研究の対象としやすく、これまでの生理学的研究成果の積み重ねも多いため、病態生理学的研究に優れたモデルとなります。更には、「霊長類遺伝子導入実験室」が稼働しはじめ、病態モデル霊長類動物の開発も期待できるようになりました。これらのモデル動物を用いての行動レベル表現型の網羅的解析を「行動様式解析室」で、代謝生理機能レベルの表現型の網羅的解析を「代謝生理解析室」で行っていきます。
 病院や臨床部門を持たない生理学研究所は、他の臨床的医学研究機関との連携や共同研究が必要とされるでしょう。これらの研究は、2011年度から開始の特別経費プロジェクト「ヒトとモデル動物の統合的研究による社会性の脳神経基盤の解明」によって支えられています。
 
 
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