文字サイズ :
HOME >  リリース一覧 >  免疫をになう細胞「マクロファージ」が体温で活発になる仕組みを解明―過酸化水素によって温度センサーTRPM2がスイッチ・オンする分子メカニズム―

各種リリース

Release

免疫をになう細胞「マクロファージ」が体温で活発になる仕組みを解明
―過酸化水素によって温度センサーTRPM2がスイッチ・オンする分子メカニズム―

2012年4月10日 プレスリリース

内容

免疫を担い病原体や異物と戦うマクロファージは、感染がおこった場所でまっさきに病原体や異物を食べて戦います。その際、マクロファージは殺菌のために活性酸素を産生しますが、活性酸素の殺菌以外のはたらき、とくに体温を感じる温度センサーとのかかわりは知られていませんでした。今回、自然科学研究機構・生理学研究所(岡崎統合バイオサイエンスセンター)の加塩麻紀子研究員と富永真琴教授は、免疫反応によって産生される過酸化水素(活性酸素の一種)によって温度センサーであるTRPM2(トリップ・エムツー)が体温で活性化するようになる仕組み、そしてTRPM2が体温を感じてマクロファージの働きを調節する仕組みを明らかにしました。本研究結果は、米国科学アカデミー紀要(電子版 4月9日)に掲載されます。

研究グループは、マクロファージの免疫反応により産生される過酸化水素と、体温の温度センサーであるTRPM2とのかかわりに注目。温度センサーであるTRPM2は活性化物質が存在しない状態では48℃付近の高い温度にしか反応しないので、ふだんは体温では活性化しませんが(図1)、過酸化水素が産生されると平熱域(37℃)でも活性化するようになることをつきとめました。つまり、過酸化水素がTRPM2の働きを調節する「スイッチ」として働くことを発見しました。さらに、スイッチ・オンされたTRPM2の働きによって、異物を食べるマクロファージのはたらきが、発熱域(38.5℃)で、より増強することをつきとめました(図2)。

富永教授は「今回の研究では、過酸化水素のTRPM2に対する作用は、TRPM2そのものに対する“酸化”反応によることも分かりました。具体的に、過酸化水素がTRPM2のどこに作用しているのかも解明できました。このように、TRPM2機能調節の分子機構が明らかとなったことにより、マクロファージの働きを調節する新たな薬剤開発や治療戦略を提供できる可能性が考えられます。また、わたしたちが細菌などに感染した時には発熱をしばしば経験しますが、TRPM2の働きは発熱によって免疫力が上がるメカニズムの一つなのかもしれません」と話しています。

本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。

今回の発見

1.温度センサーであるTRPM2は活性化物質が存在しない状態では、体温域では活性化しませんが、マクロファージの免疫反応によって産生される過酸化水素があると、体温域でも反応するようになることがわかりました。
2.免疫を担うマクロファージの異物を貪食する反応は、TRPM2の働きによって、発熱域(38.5℃)で、より増強することがわかりました。

図1 過酸化水素によってTRPM2は、体温域でも反応するようになる

 

tominaga-meneki1.jpg

温度センサーであるTRPM2をもった培養細胞の体温域の温度に対する反応。過酸化水素をかける前は、反応が見られませんが、過酸化水素をかけると反応するようになります。これは過酸化水素によって、TRPM2が普段反応しない体温域の温度でも反応できるように温度反応性が変化したからであることが分かりました。

図2 免疫を担うマクロファージの反応は、TRPM2の働きによって、体温で増強する

 

tominaga-meneki2-1.jpgtominaga-meneki2-2.jpg

過酸化水素のあるときの、マクロファージの平熱域と発熱域の温度に対する反応。平熱域(約37℃)よりも発熱域(約38℃)でより強く反応することがわかりました(上図)。
これによって、マクロファージの免疫応答である異物を食べる働きが発熱域で上昇しましたが、TRPM2温度センサーをなくしたマクロファージでは、平熱域と発熱域で変化がありませんでした(下図)。

図3 マクロファージの免疫反応が体温で活発になる仕組み

 tominaga-meneki3.jpg

普段、体温ではTRPM2は反応しませんが、病原体にたいする免疫反応で過酸化水素が産生されるとTRPM2のスイッチがオンになり、体温でも働くようになります。さらに発熱すると、その働きが強まることがわかりました。

この研究の社会的意義

 
細菌とたたかうときに熱が出る意味とは?
今回の発見で、マクロファージのような免疫細胞が、細菌と戦う際、TRPM2の温度反応性の変化によって、体温でもその働きが活発になる仕組みが分かりました。
さらに、今回の研究では、過酸化水素のTRPM2に対する作用は、TRPM2そのものに対する“酸化”反応によることも分かりました。具体的に、過酸化水素がTRPM2のどこに作用しているのかも解明できました。このように、TRPM2機能調節の分子機構が明らかとなったことにより、マクロファージの働きを調節する新たな薬剤開発や治療戦略を提供できる可能性が考えられます。
今回発見した温度センサーTRPM2の働きは、私たちが細菌などに感染した際、発熱によって免疫力が上がるメカニズムの一つなのかもしれません。

図4 病気(病原体)とたたかうときに熱が出る意味

tominaga-meneki4.jpg

論文情報

Redox signal-mediated sensitization of Transient Receptor Potential Melastatin 2 (TRPM2) to temperature affects macrophage functions
Makiko Kashio, Takaaki Sokabe, Kenji Shintaku, Takayuki Uematsu, Naomi Fukuta, Noritada Kobayashi, Yasuo Mori, Makoto Tominaga
米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(電子版)2012年4月9日

お問い合わせ先

<研究について>
自然科学研究機構 生理学研究所 細胞生理研究部門
教授 富永真琴 (とみなが まこと)
Tel: 0564-59-5286   FAX: 0564-59-5285 
email: tominaga@nips.ac.jp

<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室 
TEL 0564-55-7722、FAX 0564-55-7721 
pub-adm@nips.ac.jp




 


 



 

関連部門

関連研究者

お問い合わせ

各種お問い合わせはメールフォームにてお受けします