日 時 | 2017年02月17日(金) 15:00 より 16:30 まで |
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講演者 | 田嶋 達裕 先生 |
講演者所属 | ジュネ―ヴ大学 基礎神経科学科 |
場 所 | 生理学研究所(明大寺地区)1F講義室 |
お問い合わせ先 | 小松英彦(感覚認知情報研究部門 内線7861) |
要旨 |
脳全体の複雑な神経ダイナミクスは認知機能に重要と考えられている.ヒトのそれのような高度な認知処理の原理を理解するには,高次元の神経集団活動を追跡するための計測技術を進歩させるだけでなく,その構造を明らかにするための新たな理論的視点を発展させる必要がある.ここではダイナミクスの構造と機能を関係づけるための2つの理論的なアプローチを紹介する.ひとつめのボトムアップ的なアプローチでは,力学系の一般理論を動機として, 理論ドリブンの強力なデータ解析手法を開発する.この方法を用いて,再構成したアトラクタ同士の非線形の埋め込み関係を行動中のサルから広域記録した電気生理データで調べる.その結果,意識下の脳ダイナミクスに普遍的な相互作用と複雑性の階層が明らかとなり,また複雑な神経システムを解読するために広く適用できる手法が示される.ふたつめのトップダウン的なアプローチは,多数の価値比較を含む意思決定の規範理論を構築することから出発し,最適な神経ダイナミクスを導く.この理論は最適な意思決定ポリシーにおける一般的な幾何学的対称性を明らかにし,ある種の連続アトラクタが最適意思決定ポリシーの神経実装に寄与している可能性を予測する.総合して,連続的なアトラクタの幾何構造やトポロジーが意思決定,意識,あるいはその他,複雑システムに現れる機能の重要な基盤になっている可能性を提案する.
References: |