網膜の中の神経回路の最終出力神経細胞にあたる網膜神経節細胞(視神経細胞)は、その機能と形態によって最低でも12種類に分けられることが知られている。そのすべてが、非スパイン性の樹状突起(non-spiny dendrites)をもっているが、その樹状突起における興奮性入力の位置を網羅的に調べた研究はこれまでなかった。現生理学研究所の小泉周らハーバード大学医学部(マサチューセッツ総合病院)の研究グループは、網膜神経節細胞の樹状突起上の興奮性入力の分布を調べるため、新たに開発した網膜組織培養法(Koizumi et al, PLoS One, 2007)に、PSD95-GFPプラスミドを遺伝子銃により導入し、その分布を記録した。その結果、興奮性入力の樹状突起上の分布は、神経節細胞の種類によらず、以下3つの共通ルールに従っていることを見出した。
このように、網膜神経節細胞では、非スパイン性の樹状突起上の単位長さあたりの興奮性入力の密度は定まっていることが分かったことから、こうした共通ルールをささえる分子基盤があることが示唆される。
The Journal of Comparative Neurology, Volume 510, Issue 2, Pages 221-236
Published Online: 11 Jul 2008
The spatial distribution of glutamatergic inputs to dendrites of retinal ganglion cells
Tatjana C. Jakobs*, Amane Koizumi*, Richard H. Masland
*These authors equally contribute to this work.
網膜神経節細胞の非スパイン性樹状突起上のPSD95-GFPの分布 神経節細胞の種類によらず樹状突起上に一様に同じような密度で分布していることがわかる。
網膜組織培養法について