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サル大脳皮質の体性感覚野と運動野の間の情報の流れ

研究報告 2009年6月29日

脳の運動制御の仕組みを解明する目的で、サルが上肢に力を入れるときの体性感覚野と運動野のフィールド電位と上肢筋電図の関係を、有向伝達関数(directed transfer function、略して DTF)を用いて解析した。DTFは複数の構成要素からなるシステム内での結合の方向性を解析するのに有用な指標である。 私達は以下の結果を得た。

  • 大脳皮質と筋電図の間のベータ周波数領域(14-30 Hz)のDTFは、皮質から筋電図へ向かう方向が逆方向よりも優位で、中心溝の前壁(運動野)で最も大きい。
  • 皮質皮質間のベータ周波数領域のDTFについては、筋収縮中は中心溝後部(感覚野)から中心溝前部(運動野)への向きが逆向きよりも優位であった。この前向きと後向きのDTFの非対称性は、休んでいるときには、はっきりとは認められなかった。

これらの知見は、感覚野から運動野へ向かうベータ周波数領域での情報の流れが運動のフィードバック制御などの筋収縮調節の重要な要素となっている可能性を示唆している。

論文情報

Tsujimoto T, Mima T, Shimazu H, Isomura Y
Directional organization of sensorimotor oscillatory activity related to the electromyogram in the monkey.
Clinical Neurophysiology 120 (2009) 1168-1173

図1

20090629_1.jpgのサムネール画像

A: 筋収縮中のDTFの非対称性。大脳皮質の4カ所のフィールド電位(preCSaとpreCSpが運動野、postCSaとpostCSpが感覚野)と上肢筋電図(EMG)の関係を示す。<br><br>
B: 休んでいるときのDTFの非対称性。<br>
矢印の線の太さが非対称性を示したサルの頭数(全3頭)を表す。

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