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サルの前頭前野と前帯状野のシータ周波数での脳活動

研究報告 2010年3月 1日

概要

以前に私たちはヒトのFmシータ波に対応するサルのモデルを提唱した。Fmシータ波とはヒト前頭葉に生じるシータ周波数(4-7Hz)の脳波のことで、「注意」が要求される多様な状況で出現する。私たちのモデルではサルが自己ペースで運動するときに前頭前野9野と前帯状野32野に出現するシータ周波数の脳活動をヒトのFmシータ波に相当するものと見なしていたが、「注意」が要求される種々の状況で一貫して同様のシータ波活動が出現するかどうかは未確認であった。今回私たちは、予告信号(S1)と命令信号(S2)が一定の時間間隔で呈示され、S2に応じて運動すると報酬が得られる課題(S1-S2課題)を行うサルで、9野と32野に以下のような特徴的なシータ波活動が出現することを見出した。

1)S1-S2間ではS1以前よりもシータ波が増加する。
2)S1信号によって指示されるGo/No-go課題の場合は、No-go試行で運動の有無にかかわらず報酬が無い条件(非対称的な強化)ではS1-S2間のシータ波がS1以前よりも減少したが(図参照)、運動しないと報酬がある条件(対称的な強化)ではシータ波が軽度に増加した。
3)報酬後のシータ波は報酬が無い場合に比べて増加した。
4)S1以前のシータ波の振幅は安静覚醒状態に比べて大きかった。
5)S2が呈示されずにS1-S2の時間間隔を推測して運動しなければならないときのS1以前のシータ波は、元のS1-S2課題に比べて増加した。

これらの結果は、「注意」がその原因によらずに同一のシータ波を生じさせることを示唆しており、モデルとしての一貫性を支持している。サルのモデルは注意に関する中枢神経機構を研究するために役立つと考えられる。

論文情報

Toru Tsujimoto, Hideki Shimazu, Yoshikazu Isomura, and Kazuo Sasaki Theta oscillations in primate prefrontal and anterior cingulate cortices in forewarned reaction time tasks. J Neurophysiol 103 (2010) 827-843

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