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生理学研究所、7テスラ超高磁場MRIシステムを導入

プレスリリース 2015年5月26日

内容

この度、自然科学研究機構・生理学研究所は、7テスラ超高磁場MRIシステムを導入しました。この新しいMRIは、ヒト脳高次機能の解明に必要な脳の微細構造や高度な認知活動、神経代謝物質の動態など、脳の形態から機能にいたる種々の情報を非侵襲かつ高精度に画像化します。7テスラ超高磁場MRIは、国内で3台、世界で50台程度が稼働し、ヒト生体研究への応用が期待される最新鋭の装置です。この装置を使用することで、生体現象、生体構造を包括的に観測する超高解像度脳情報画像化システムを構築し、高次脳機能研究のさらなる飛躍を目指します。

 7テスラ超高磁場MRI(Magnetic Resonance Imaging: 磁気共鳴画像法)は、病院で画像検査用に設置されている一般的なMRIに比べ、2~5倍ほど高い静磁場強度をもつ装置です。静磁場が強いほど、生体からの信号を感度良く捉えることができ、精細かつコントラストの高い画像を作ることができます。7テスラ超高磁場MRIを用いることで、生きたヒトを対象に、従来は困難であった100ミクロン単位での脳微細構造や、臨床上重要な脳の微小血管を描出することができるだけでなく、神経線維の複雑な走行を3次元再構築することが可能になると期待されます。また脳に内在する神経代謝物質や脳血流量、酸素・エネルギー代謝動態を観測することができるという特徴を有します。
 また今回導入されたMRI装置には、強力な磁場を発生させる超伝導マグネットが使用されます。今回、生理学研究所が導入する7テスラ超高磁場MRIは、ヒト用では本邦初となる自己遮蔽型(actively-shielded)超伝導マグネットが採用されています。これは、装置外へ漏洩する磁場を低減させることから、安全性や測定の精度において優れた機構を装備していると言えます。
 本装置の導入により、ヒトを含む霊長類の脳を対象に、生体現象、生体構造を包括的に観測する超高解像度脳情報画像化システムを構築し、7テスラMRIを基軸としたイメージングサイエンスを推進します。また、画像に集約される生物情報を通じて、ライフサイエンスと臨床医学を統合したヒューマンバイオロジーを展開し、生体システムとしての人間の理解を目指します。これらの研究成果を医科学研究へすみやかに供することにより、精神神経疾患などの病態解明をはじめ、さまざまな疾患の理解と制御を模索する上での大きな一助となると考えらえます。
 7テスラ超高磁場MRIの導入に先立ち、生理学研究所では、岩手医科大学医歯薬総合研究所、新潟大学脳研究所、京都大学脳機能総合研究センター、情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター、理化学研究所脳科学総合研究センター、国立環境研究所といった国内の超高磁場MRI研究機関と共に、双方向型連携研究推進委員会を設立しました。特に生理学研究所は大学共同利用機関法人の使命のもと、本委員会の中核拠点として、超高磁場MRI研究の要素基盤技術の整備や、多分野にまたがるMRI研究者の育成、海外研究機関との国際連携などを目的としたオールジャパン体制を整え、国内外の大学、研究機関との共同利用、共同研究を推進します。
7tesramri.JPG

用語説明
  • ・MRI(Magnetic Resonance Imaging: 磁気共鳴画像法):強力な磁場と電波の照射により、生体に内在する水素原子の分布を画像化する方法。電離放射線を使用しないため、被爆の影響を受けない非侵襲的断層画像法で、臨床でも広く応用される画像診断技術。
  • ・ヒューマンバイオロジー:ヒトの疾患実態に基づく研究開発により、ヒトの疾患制御に帰結する研究開発(出典:科学技術振興機構「ライフサイエンス分野」俯瞰ワークショップ報告書CRDS-FY20120WR-13)

問い合わせ先

<機器に関すること>

自然科学研究機構 生理学研究所 心理生理学研究部門
教授 定藤 規弘 (さだとう のりひろ)

 

<広報に関すること>

自然科学研究機構 生理学研究所 研究力強化戦略室
特任助教 坂本 貴和子(さかもと きわこ)

リリース元

生理学研究所・研究力強化戦略室

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