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非侵襲的大脳皮質刺激により痒み知覚が抑制される
~経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)を用いた検討

プレスリリース 2015年8月12日

内容

これまで痒み知覚に対する大脳皮質刺激の抑制効果は検討されていませんでした。今回、自然科学研究機構 生理学研究所の柿木隆介教授および 中川 慧研究員(現所属:広島大学)らは、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)による痒み知覚の抑制効果を明らかにしました。本研究結果は、Clinical Neurophysiology誌(2015年9月号)に掲載予定です。本研究は、文部科学省 科学研究費補助金、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業、および革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)の補助を受けて行われました

これまで痒み知覚に対する大脳皮質刺激の抑制効果は検討されていませんでした。今回、自然科学研究機構 生理学研究所の柿木隆介教授および 中川 慧研究員(現所属:広島大学)らは、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)による痒み知覚の抑制効果を明らかにしました。本研究結果は、Clinical Neurophysiology誌2015年9号に掲載されるよ予定です。本研究は、文部科学省 科学研究費補助金、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業、および革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)の補助を受けて行われました

痒みは不快な感覚の一つであり、掻破により抑制されることはよく知られています。しかし、掻破は快感を伴うため、常に掻きたいという思いから、過剰な掻破を引き起こしかねません。特に、アトピー性皮膚炎などの慢性的な痒みに悩まされる患者にとっては、過剰な掻破により新たな皮膚損傷を引き起こされるといった悪循環を呈します。そのため、掻破に変わる新たな抑制法の発見・開発は、痒みに悩まされる患者にとって大きな意義をもつと考えます。
 そこで研究グループは、大脳皮質感覚運動野を非侵襲的に刺激することで痛み知覚が抑制されるという現象に注目し、痒み知覚に対しても同様の抑制効果がみられるかどうか検討しました。脳刺激には、微弱な電流を流すことで大脳皮質の興奮・抑制性をコントロールする経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation; tDCS)を用いました。結果、tDCSを15分間施行したところ、ヒスタミン刺激に対する痒み知覚が減少し、さらに痒みの持続時間が短縮することが分かりました。

柿木隆介教授は「今回の研究結果は、痒みの抑制に対する大脳皮質刺激の効果を実験的に検討した初めての報告です。本研究結果は、今後の新たな痒みの抑制法の開発につながる成果だと期待できます。」と話しています。

本研究は、文部科学省 科学研究費補助金、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業、および革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)の補助を受けて行われました。
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今回の発見

1.痒み知覚の抑制に対し、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)の効果を検討しました。
2.tDCS刺激を行うことで、ヒスタミンによって誘発される主観的痒み知覚の低下・痒みの持続時間の減少を明らかにしました。

図1 本研究の実験手順

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化学物質ヒスタミンを電気刺激で皮膚へ浸透させることで、痒みを誘発しました。痒み刺激中にtDCSを施行し、対象者の主観的痒み知覚(9段階)を30秒ごとに聴取しました。

図2 経頭蓋直流電気刺激(tDCS)

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tDCSは両側刺激とし、両側感覚運動野から15分間刺激しました。刺激電極のサイズは25cm2、刺激強度は1.0mAとし、3条件(右陽極/左陰極・左陽極/右陰極・Sham)を3日に分けて実施しました。計測は、二重盲検法で行いました。

図3 痒み知覚の経時的変化

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ピーク値から2分ごとの痒み知覚の経時的変化(1-9のスコアで評価)を示します。痒みのピーク値はtDCS刺激によって有意に抑制され、特に右陽極/左陰極刺激条件では、刺激後痒みが早く減衰する結果となりました。

この研究の社会的意義

慢性的な痒みを有する患者に対する痒み抑制方法の一つとして期待されます。

論文情報

Nakagawa K., Mochizuki H., Koyama S., Tanaka S., Sadato N., Kakigi R.  A transcranial direct current stimulation over the sensorimotor cortex modulates the itch sensation induced by histamine.
Clin Neurophysiology, 2015, accepted paper. 2015年 7月8日
DOI: 10.1016/j.clinph.2015.07.003

お問い合わせ先

<研究について>
自然科学研究機構 生理学研究所 感覚運動調節研究部門
教授 柿木 隆介 (カキギ リュウスケ)

<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 研究力強化戦略室



 

リリース元

生理学研究所・研究力強化戦略室

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