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自然科学研究機構、名古屋大学、九州大学による、日本初のプラズマバイオロジー研究共同体「プラズマバイオコンソーシアム」を発足
~低温大気圧プラズマの生命科学・医療への応用を目指して~

プレスリリース 2018年7月23日

内容

 今回、大学共同利用機関法人自然科学研究機構は、名古屋大学、九州大学と共同で、日本初のプラズマバイオロジー研究共同体である「プラズマバイオコンソーシアム」を発足しました。名古屋大学や九州大学は、「低温大気圧プラズマ」技術を用いて、がんの選択死滅、創傷などの再生医療,植物の成長促進、機能性植物の作製などに関する卓越した成果で、世界を先導してきました。コンソーシアムでは、自然科学機構が中心となって共同研究を推進し、「新たなプラズマ生命科学」を開拓するとともに、我が国から未来の医療や農業の新技術を創成していく画期的な仕組みになることも目指します。
 例えば水に代表されるように、物質は温度を上昇させることで、固体から液体、気体へと状態が変化することが知られています。そして気体からさらに温度を上昇させたり、電圧をかけたりすることで電離が起こり、物質は中性分子や電子などが混在し活性化された状態に変化します。この状態がプラズマと呼ばれるものです。自然界でみられるオーロラや雷などはプラズマを代表する現象で、これを技術応用したものが蛍光灯やプラズマテレビなどです。
プラズマには粒子の温度が高いプラズマ(高温プラズマ)と低い低温プラズマがあります。高温プラズマは、地上に太陽と同等のエネルギーを作り出すことを目指した核融合科学研究所の手がける核融合技術に使われています。一方低温プラズマはその汎用性の高さと扱いやすさ、装置が安価であることなどから、産業界で注目され、半導体技術や殺菌・消毒などに利用されています。
 低温プラズマを生命科学や医療の分野へ応用する試みは、近年世界的に研究が進められており、日本でも平成24年から28年にかけて科学研究費助成事業で「プラズマ医療科学の創成」と題し新学術領域が設けられ、国からの支援の下、活発な研究が行われてきました。この時、名古屋大学では、特に低温大気圧プラズマ照射によって栽培中のイチゴの抗酸化成分が増加し、収穫量が20%増加するなどといった研究成果を発表しています。また、同様に九州大学では、低圧プラズマをイネの種子に照射することで、イネの成長促進がみられるといった成果を発表しています。しかしながら低温大気圧プラズマと生体の構成要素との相互関係を検討した基礎的研究が十分に行われておらず、未だ応用面で目覚ましい進展がみられていないのが現状です。

 今回自然科学研究機構と名古屋大学、九州大学は、基礎プラズマ科学と生命科学の分野間融合的研究の発展と、産業界への確実な貢献を目指し、プラズマバイオコンソーシアムを設置するに至りました。本コンソーシアムでは、画期的な半導体製造の際の表面処理や加工技術として注目されている「低温大気圧プラズマ」技術の、生命科学や医療への積極的な応用・活用の場を探求し、日本産業界の裾野拡大の一助となることを目指します。

図1 プラズマバイオコンソーシアム概要

plazma-1.pngプラズマバイオコンソーシアムは、自然科学研究機構と名古屋大学、九州大学で構成されています。自然科学研究機構は、本年度より新分野創成センターに新設したプラズマバイオ研究分野において、主に動物系、植物系双方の基礎的研究を行い、応用技術開発を全面的にサポートします。名古屋大学と九州大学はそれぞれプラズマ技術の応用を目指したセンターを有し、既にさまざまな応用研究が展開されています。今後は自然科学研究機構による基礎研究による学術面での支えを基礎とし、他大学・他研究機関との共同研究による「オールジャパン体制」でプラズマ技術応用のさらなる発展を目指します。

お問い合わせ先

<研究について>
国立大学法人 名古屋大学
教授 堀 勝 (ホリマサル)
 
国立大学法人 九州大学
教授 白谷 正治 (シラタニマサハル)
   
自然科学研究機構 新分野創成センター
センター長 井本 敬二(イモトケイジ)
  
<プラズマバイオコンソーシアムに関すること>
大学共同利用研究機関法人 自然科学研究機構
事務局 企画連携課 研究支援係
  
<広報に関すること>
名古屋大学総務部総務課広報室
 
九州大学 プラズマナノ界面工学センター
 
自然科学研究機構
助教 坂本貴和子
 

リリース元

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プラズマバイオコンソーシアム
大学共同利用機関法人自然科学研究機
名古屋大学
九州大学

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