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研究活動

細胞構造研究部門

研究部門メンバー

上皮バリア機能を制御する細胞間結合の分子基盤

 上皮は、バリアとして体を区画化しつつ選択的な物質輸送を行うことにより、様々な器官の生理機能と恒常性に寄与しています。本研究部門では、このような上皮の基本的な役割を担う特徴的な細胞構造の分子基盤を解き明かそうとしています。具体的には、上皮細胞同士の隙間からの物質の漏れを制御する細胞間結合(閉塞結合)であるタイトジャンクションとその関連構造に着目し、分子構築、形成機構、生理機能、動的なふるまいを調べています。研究の特徴は、独自に同定した閉塞結合の構成分子や制御分子の性状を解析することにあり、これら分子の機能について分子細胞生物学、生理学、免疫電子顕微鏡法や凍結割断電子顕微鏡法を含む形態学の手法を組み合わせ、培養上皮細胞とモデル生物であるマウスやショウジョウバエを用いて解析しています。ゲノム編集技術を用いて培養上皮細胞で関連タンパク質分子をシステマチックに機能喪失させる実験が可能となったことで、様々な新しい知見が得られつつあります。現在、以下の研究課題を進めています。

1)上皮恒常性におけるタイトジャンクションの役割
2)トリセルラータイトジャンクションの分子解剖と生理機能
3)個体におけるタイトジャンクションと関連接着構造の生理機能
4)ショウジョウバエの腸管バリア機能と幹細胞増殖制御における閉塞結合の役割
5)メンブレントラフィックによる上皮形態形成の制御機構

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トリセルラータイトジャンクション分子構築と超微形態.
トリセルラータイトジャンクションは3つの上皮細胞の角が集まる点に形成される特殊な細胞間結合で、膜タンパク質アンギュリンファミリーとトリセルリンを含み、クローディンが形成するタイトジャンクションとともに細胞間隙の漏れを防ぐ役割を果たしている(上)。写真は凍結割断レプリカ法(下左)および超薄切片法(下右)によるトリセルラータイトジャンクションの電子顕微鏡観察像。



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ショウジョウバエの腸管における細胞間結合スムースセプテートジャンクションの機能.
スムースセプテートジャンクションに存在する膜タンパク質Ssk(図左上)の発現を成虫の腸管でRNAiによって抑制すると、腸管バリア機能が破綻して、餌に混ぜた色素が腸管から体全体に浸透し、致死となる(図右上)。このとき、本来は単層の腸管上皮細胞はSskの発現抑制によって異常増殖して腸の閉塞を引き起こす(図下)。
 

代表的な論文情報

*Otani et al. J Cell Biol 218, 3372 (2019)
*Izumi et al., J Cell Sci 134: jcs257022 (2021)
*Sugawara et al., J Cell Biol 220: e202005062 (2021)
*Nguyen et al. J Cell Biol 223: e202307104 (2024)