Research

研究活動

多細胞回路動態研究部門

研究部門メンバー

神経グリア細胞からなる多細胞回路動態の生理的変化を解析することで高次脳機能を担う回路基盤を明らかにする

 多細胞回路動態研究部門は、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞で成り立つ多細胞回路基盤の高次脳機能に対する生理的機能を明らかにすることを目的としています。そのためにマウスの行動につながる神経回路に関与するグリア細胞の生理的機能を検討し、これを病態につなげることを目指します。これまでの2光子顕微鏡による可視化技術に加えて、我々が独自に開発したホログラフィック顕微鏡の応用を進め、神経細胞間の機能結合やそれを担うトランスクリプトームに着目し、ホログラフィック刺激・計測を用いることで局所神経回路の評価に取り組んでいます。

1. グリア細胞の生理機能解明
(a) ミクログリア
これまで我々はミクログリアが直接シナプスに接触することを見出しており(Wake et al., 2009)、P2Y12シグナルにより接触シナプスの機能を変化させ、その活動の同期性を調節することを報告してきました(Akiyoshi et al., 2018, Badimon et al., 2020)。更に炎症により血液脳関門に誘導され初期には保護的に作用していたミクログリアが、炎症の増悪とともに傷害性に働くことも見出しました(Haruwaka et al., 2019)。さらに視覚遮断をした際に見られる体性感覚の向上には、体性感覚野から高次視覚野をつなぐ神経回路が重要であることを明らかにしました。さらにこの回路再編にミクログリアが重要な働きをすることを見出しました(Hashimoto et al., 2023)。また、脳転移初期のミクログリア可塑性を解明し、早期治療標的の可能性を示しました(Tsuji et al., 2026)。

(b)オリゴデンドロサイト
活動依存的な髄鞘化が神経細胞活動の同期性に寄与し、運動学習に関わることを2光子顕微鏡と電気生理学的手法を用いて明らかにしました (Sugio et al., submitted)。
 

2.ホログラフィック顕微鏡の構築
 神経細胞とグリア細胞による回路を時空間的高解像度で操作するため、ホログラフィック顕微鏡を構築しました。この顕微鏡を用いて、単細胞の刺激による局所回路機能結合の抽出し、痛みモデルにおいてその機能結合が変化することを明らかにしました(Okada et al., 2021)。現在、この技術と異種感覚の可塑性のデータを組み合わせ、人為的感覚の導入を試みています。



wakeLab_jpn2025.png図 1 炎症により血液脳関門に集積したミクログリアは炎症の早期には保護的に作用するが、炎症の後期には血液脳関門の一部を貪食し血管外への漏出を引き起こす。
図2  痛みの急性期の大脳皮質一次体性感覚野においてホログラフィック光刺激により一細胞刺激による周囲の神経細胞の応答性が増加しており、機能的結合が強化されている。

代表的な論文情報

*Akiyoshi et al., eNeuro (2018)
*Badimon et al., Nature (2020)
*Kato et al., Glia (2023)
*Haruwaka et al., Nat Commun. (2019)
*Hashimoto et al., Cell Rep. (2023)
*Okada et al., Sci Adv. (2021)
*Wake et al., J Neurosci. (2009)
*Tsuji et al., Cancer Res (2026)