日 時 | 2006年04月25日(火) 12:20 より 13:00 まで |
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講演者 | 伊藤南 助教授 |
講演者所属 | 感覚認知情報部門 |
お問い合わせ先 | 分子神経生理部門 小野 勝彦 |
要旨 |
私たちが物体を認知するに際して、物体の輪郭線の形状は重要な手がかりの一 つとなります。では我々の脳はどのようにして輪郭線の形状を表現するので しょうか?大脳皮質視覚野の中でも腹側視覚路が物体認知の神経メカニズムを 担うと考えられています。腹側視覚路の最終段に位置する下側頭葉TE野の ニューロンは輪郭線の形状を含む中程度に複雑な刺激特徴に対して選択的な反 応を示すことが明らかにされています。一方、腹側視覚路の初期に位置する第 一次視覚野のニューロンは小さな受容野内に呈示された線成分の傾きに選択的 な反応を示すことが知られております。しかしながら、その中間部分において こうした局所部分の刺激特徴の表現が物体全体の表現へとまとめ上げられてい く様子についてはいまだあまりよく分かっていません。私たちは最も単純な組 み合わせ刺激ということで折れ曲がり刺激に着目し、腹側視覚路における折れ 曲がり刺激に対する選択性ならびにその形成の様子を明らかにすることで輪郭 線表現の神経メカニズムを明らかにできるのではないかと考えました。本日の セミナーではそのような考え方でここ数年続けております第一次視覚野ならび に第二次視覚野からの記録結果についてについてまとめてお話したいと思いま す。注視課題を遂行中のサルより単一細胞外記録を行いましたところ、第二次 視覚野において多数の細胞が折れ曲がりに刺激に対する選択性を持つことが明 らかになりました。最適な折れ曲がり刺激の半直線成分の両方または一方は 個々の半直線に対する反応選択性のピークと一致しましたが、選択性自体は二 本の直線成分の特異的な組み合わせに依存しており、単に各線成分に個別に反 応しているものではないと考えられます。一方、個々の線成分に依らず折れ曲 がりの角度や刺激の方向を表す細胞は見つかりませんでした。これらの結果よ り折れ曲がりの表現が各半直線成分による方位選択的な興奮性入力ないしは抑 制性入力の特異的な組み合わせによっており、第二次視覚野が折れ曲がりの検 出の初期段階を担うのではないかと考えています。 |