日 時 | 2006年05月25日(木) 16:00 より 17:00 まで |
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講演者 | 澤田 泰宏 先生 |
講演者所属 | Department of Biological Sciences,Columbia University |
お問い合わせ先 | 岡村 康司 |
要旨 |
物理的な力(メカニカルストレス)が、循環器、神経、骨など多くの組織の発生や機能の制御に重要な役割を果たしていることが知られている。さらに、癌の浸潤や転移において基質への接着が重要であることは、癌細胞の機能調節あるいは癌化自体における、メカニカルストレスに関わる生物学的現象の重要性を示唆する。近年の細胞のメカニカルストレス応答機構に関する研究により、様々な細胞内シグナルがメカニカルストレスによって活性化されることが明らかとなっている。しかし、細胞のメカニカルストレスの受容機構、すなわち細胞に負荷される物理信号が細胞内の(生)化学信号に変換される直接的なメカニズムについては、イオンチャネルの関与が知られているのみである。これまでに我々は、small GTPaseの一つであるRap1の活性化が細胞伸展による p38 MAPキナーゼの活性化に関わっていること(文献1)、細胞骨格(detergent-insolublestructure)中に細胞伸展の受容機構があること(文献2)、細胞骨格中のタンパクのチロシンリン酸化が細胞伸展によるRap1の活性化に重要な役割を果たしていることを報告した(文献3)。今回はこの研究をさらに進め、Srcファミリーキナーゼの基質であるp130Casのチロシンリン酸化が細胞伸展によるRap1の活性化に重要であること、および細胞伸展による p130Casのチロシンリン酸化の促進はその基質部分のコンフォメーションの変化を介していることを明らかにした。したがって、 p130Cas は伸展という物理信号を(生)化学信号に変換する分子といえる。イオンチャネル以外のメカニカルストレス受容体としては最初の報告となる。さらに、本講演では、酵素反応の制御における基質の役割の重要性に関してもふれる。
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