日 時 | 2007年05月18日(金) 13:30 より 14:30 まで |
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講演者 | 小泉 周 先生 |
講演者所属 | Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School |
お問い合わせ先 | 岡田 泰伸 (機能協関) (内線 7731) |
要旨 |
網膜の投射神経である網膜神経節細胞には最低でも12種類の異なる生理学的性質をもつ細胞が存在している。これまで、こうした生理学的性質の違いの一端は、シナプスの配置の違いによるものであることが予想されてきていたが、長い間、電子顕微鏡による部分的証拠と推論しかない状態であった。我々は、網膜神経節細胞において興奮性シナプスがどのように分布しているのか、新しく開発した成熟網膜培養法にGeneGunを用いた遺伝子導入法を組み合わせて実験を行った。 我々は、海馬スライス培養などで用いられているインターフェース培養法に網膜潅流記録チェンバーの発想を組み合わせたinterface/perfusionハイブリッド培養法を開発した。これによって、成熟網膜を最大6日間、光応答性などの生理学的性質を保ったまま培養し、Genegun等を用いた遺伝子導入法が可能となった(Koizumi et al. 2007, PLoS One)。 興奮性シナプスの神経節細胞内での位置を同定するためにPSD95-GFPを成熟ウサギ網膜に導入し、その位置を共焦点顕微鏡で記録し解析を行った。結果、どの種類の神経節細胞内でも、等しく、PSD95はある一定の間隔(2.9 ± 0.7 µm)をもって規則正しく並んでいることが見出された。また、シナプス前細胞である双極細胞のAxonal varicositiesも規則正しく配置されており、お互いに間隔が一致していた。この結果は、興奮性シナプスの位置は決してランダムな「相手探し」の結果ではなく、網膜全体にわたる配置メカニズムの存在を示唆している。また、シナプスの配置パターンが、多様な生理学的性質を持つ神経節細胞や双極細胞の種類によらず一定であったことは、長年の予想を覆す結果となった。さらに、シミュレーションによる解析で、こうしたシナプスの配置構造は、網膜が比較的小さな光刺激をより効率よくとらえるのに有利であることが分かった(Koizumi et al, in submission)。その意義とメカニズムについて、さらなる可能性を議論したい。 |