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2007年12月13日

食餌嗜好性に及ぼす視床下部AMPキナーゼの調節作用 -レンチウイルスを用いた解析

日 時 2007年12月13日(木) 12:20 より 13:00 まで
講演者 岡本 士毅 助教 
講演者所属 生殖・内分泌系発達機構研究部門
お問い合わせ先 東島 眞一 (統合バイオ・神経分化)
要旨

視床下部は、摂食行動の調節に重要な部位である。近年、様々な視床下部神経ペプチドが発見され、その発現部位及び機能が解明されたことによって、摂食調節に関わる視床下部神経回路網の一端が少しずつ明らかとなってきた。しかし、食餌嗜好性を調節する分子機構については全く明らかとなっていない。今回我々は、活性型AMPキナーゼ(AMPK)をコードするレンチウィルスベクター(シナプシンプロモーターを使用)をマウス視床下部室傍核(PVN)に接種して活性型AMPKをPVNに持続的に発現させ、摂食行動に及ぼす影響を調べた。その結果、PVNの AMPKが、細胞内の脂肪酸酸化を促進することにより炭水化物と脂肪食の嗜好性を制御することを見出した。また、マウスを一昼夜絶食させた後、再摂食させると、PVNにおけるAMPK活性―脂肪酸酸化が亢進し、炭水化物食の嗜好性が高まること、さらに、PVNのAMPK活性-脂肪酸酸化機構がメラノコルチン受容体及びNPY受容体シグナルの制御を受けることも見出した。このようにPVNは、摂取カロリーを調節するだけでなく、AMPK-脂肪酸酸化機構を介して選択的栄養素の摂取行動の制御に関与する。PVNにおける脂肪酸酸化の変化が、どのような分子機構を介して食餌嗜好性を制御するかは、今後の重要な研究課題である。