日 時 | 2008年09月25日(木) 11:00 より 12:00 まで |
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講演者 | 古江秀昌 先生 |
講演者所属 | 九州大学大学院 医学研究院 統合生理学分野 |
お問い合わせ先 | 鍋倉淳一(生体恒常機能発達機構研究部門、内線 7854) |
要旨 |
我々は痛みを感じる時にその患部を撫でる、あるいは息を吹き付けるなど触覚刺激を加えて痛みを和らげる行動をとる。この抑制機序はin vivoでの抑制性シナプス応答の単離・解析が困難であったため明らかにされておらず、その基盤となる神経回路は同定されていない。In vivoパッチクランプ法を用い、痛みを伝える末梢C線維の密な興奮性シナプス入力を受ける脊髄後角表層からGABAを介する抑制性シナプス応答を解析した。その結果、機械的痛み刺激によって発生した活動電位が、その周辺部に加えた触刺激によって誘起されたIPSCの発生頻度と振幅の著明な増大によって抑制された。後根の切断実験から、この周辺抑制は介在ニューロンを介して髄節を越えた抑制性のシナプス入力、即ちIPSCの受容野の拡大によるものであった。また、提唱されている仮説と異なり触覚を伝えるA beta線維ではなく、意外にもC線維を介してこの抑制系が活性化される事が明らかになった。本セミナーでは、機械的痛みや触、温度(冷)などのモダリティ依存的なシナプス入力の病態時における変化、また、それらの入力とターゲットとなる細胞間のシナプス結合に必須の分子、in vivoパッチクランプ法の今後の展望などについて述べたい。 |