Research

研究活動

セミナー詳細

2008年09月12日

色の見方に応じて活動を変える下側頭皮質のニューロン

日 時 2008年09月12日(金) 12:20 より 13:00 まで
講演者 鯉田孝和 先生
講演者所属 生理学研究所 感覚認知情報研究部門
お問い合わせ先 窪田芳之 (大脳神経回路論)
要旨

「色」を認識するとき、例えばレタスもホウレン草の色もどちらも「緑色」というように、多くの場合われわれの認知はカテゴリー的である。その一方で、より新鮮な野菜を選ぶときなど、よく似た同じ名前の色でもさらに細かく見分ける場合もある。必要に応じて、これら二つの色の見方、つまりカテゴリー判断と細かい弁別の機能をわれわれはは使い分けている。色覚におけるこれら二つの働きが脳内でどのように行われているかを調べるために、カテゴリー判断または細かい弁別を行っているときの下側頭皮質のニューロン活動を測定し比較した。いずれの課題でも赤から緑までの11個の色刺激から一つを選んで呈示し、サルに判断をさせる。色刺激呈示期間中の活動を課題間で比較したところ、多くの細胞が課題に応じて有意に活動が変化した(n=79/124;64%)。そしてその多くはカテゴリー課題を行っているときに活動が強かった(n=61/79; 77%)。また、カテゴリー課題で強く活動する細胞の色選択性は、赤または緑といったそれぞれのカテゴリーを最もよく表す両極端の色に最大応答を示すことが多かった。課題間で応答強度に違いの見られた細胞であっても色選択性そのものは似ていた。これらの結果は、課題を表現する内的な信号によって、視覚野ニューロンの感覚情報が制御されていることを示している.そのような制御は下側頭皮質の色選択ニューロンにおいては、色のカテゴリー判断を行う時に活動を増強し、細かい識別を行う時には抑制するように働いていた.このことは下側頭皮質が色のカテゴリー判断に重要であることを示唆している。