日 時 | 2009年02月09日(月) 12:20 より 13:00 まで |
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講演者 | 堤 良平 研究員 |
講演者所属 | 生理学研究所 生体膜研究部門 |
お問い合わせ先 | 窪田 芳之 (大脳神経回路論) |
要旨 |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)はヒトでは700種類以上存在し、平滑筋収縮や神経シナプス伝達等、様々な生理機能を制御する。GPCRを介した情報伝達経路は気管支喘息治療薬等、多くの薬剤の標的となっており、GPCR情報伝達経路の制御機構の解明は極めて重要である。3量体Gタンパク質はα、β およびγサブユニット(Gα、Gβ、 Gγ)から構成され、GPCRの下流における情報伝達に重要な役割を果たす。Gαは可逆的なパルミトイル化脂質修飾(16炭素鎖からなる飽和脂肪酸パルミチン酸が蛋白質に付加される翻訳後脂質修飾)を介して細胞膜に局在し、GPCRを介した外界シグナルを細胞内の標的蛋白質に伝達する。しかし、Gαのパルミトイル化反応は酵素に依存しないという説が古くから提唱されるなど、その存否には議論が絶えなかった。今回、私共は23種のDHHCパルミトイル脂質転移酵素群を独自に開発してきたスクリーニング法によりスクリーニングし、DHHC3およびDHHC7がGα(Gαq、GαsおよびGαi2)のパルミトイル化レベルを著しく亢進させることを突き止めた。また、DHHC3およびDHHC7をノックダウン法により発現抑制させるとGαq⁄11のパルミトイル化レベルが低下し、Gαq⁄11が細胞膜から細胞質へ移行することを見出した。一方、光変換(photoconversion)技術を用いてGαqの細胞内動態の解析を行ったところ、Gαqは細胞膜に静的に存在するのではなく、細胞膜とDHHC3⁄7が局在するゴルジ装置の間をパルミトイル化依存的に双方向に行き来することを見出した。さらに、DHHC3⁄7のパルミトイル化酵素活性がGPCRの一つであるα1Aアドレナリン受容体⁄Gαq⁄11を介した情報伝達に必須であることを見出した。以上の結果より、パルミトイル化脂質酵素DHHC3⁄7がGαの細胞内局在を規定することによりGPCRを介した情報伝達を新たな機構で制御していることが明らかとなった。 |