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2009年04月23日

脊髄における痛みの抑制メカニズム-スライスパッチ法とin vivoパッチクランプ法から得られた結果の解釈の相違について

日 時 2009年04月23日(木) 12:20 より 13:00 まで
講演者 古江 秀昌 准教授
講演者所属 神経シグナル研究部門
お問い合わせ先 等 誠司 (分子神経生理研究部門)
要旨

10年ほど前にスライス標本を用いて痛みの研究を始めた頃は、脊髄後角浅層 は痛みを伝える一次求心性線維が密に投射している事から、触覚入力を受ける 後角深層とは異なり痛み特異的な層であると考えられていた。従って、脊髄ス ライスに薬物を投与し、表層細胞に誘起されるEPSCを抑制するものはすべ て鎮痛薬である確信していた。ところが、in vivoパッチクランプ法を開発して 同じ後角浅層の細胞から記録を行い、皮膚への生理的感覚刺激を加えると、以 外にも痛み刺激のみならず非侵害性の触刺激に応答する細胞が多数観察され た。

この事からスライス標本を用いた実験において抑制作用が見られる時に、単 純に鎮痛作用があるなどと解釈するのは極めて危険であると感じている。In vivoパッチクランプ法は生理的感覚刺激によって誘起されるシナプス応答をモ ダリティ別に解析できるため、行動学実験とスライス標本などのvitroの実験系 の中間に位置し、病的なモデル動物や遺伝子操作動物でみられる行動の異常の 成因を、シナプスレベルの変化として容易に説明できると考えている。本セミ ナーでは、脊髄における痛みの抑制メガにズムを紹介し、in vivoでパッチクラ ンプ法をやると何かできるかをお話ししたいと思います。