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セミナー詳細

2009年07月24日

視床下部—交感神経系による糖代謝調節機構
~神経ペプチド・オレキシンによる作用を中心に~

日 時 2009年07月24日(金) 12:20
講演者 志内 哲也 先生
講演者所属 生殖・内分泌系発達機構
お問い合わせ先 等 誠司 (分子神経生理研究部門)
要旨

視床下部は、脳の最深部に位置し、ヒトでは非常に小さな脳領域を占めるに過ぎないが、食欲や性欲、睡眠など、本能行動を司る大変重要な部位である。さらに、情動系や報酬系などの高次脳機能に関わる神経系とも相互作用して、ヒトの複雑な行動様式と関係が深い。また視床下部は、内分泌系や自律神経系の調節中枢として末梢組織におけるエネルギー代謝を調節し、様々な行動と連動しながら各組織の代謝を制御する。

視床下部による代謝調節作用が注目されるようになったのは、レプチンの発見が大きい。レプチンは、脂肪細胞から血中に分泌され、視床下部に豊富に発現するレプチン受容体に直接作用を及ぼして摂食を抑制するとともに、末梢組織におけるエネルギー消費の亢進を引き起こし、エネルギー代謝を個体レベルで制御する。

その後、視床下部に作用するホルモンや神経ペプチドが次々に発見され、視床下部によるエネルギー代謝調節作用の重要性が改めて注目されるようになった。中でも、神経ペプチドであるオレキシンは、摂食促進物質であるとともに、睡眠・覚醒レベルを制御するという、ユニークな役割を有する。さらに、オレキシン遺伝子欠損マウスやオレキシンニューロンが脱落しているナルコレプシー患者が肥満傾向を示すことから、オレキシンは末梢組織でのエネルギー代謝調節にも関与すると考えられる。今回、我々は、オレキシンによるエネルギー代謝調節作用の一部が交感神経系を介することを見出した。そこで本セミナーでは、視床下部によるエネルギー代謝調節機構について簡単に紹介した後、視床下部オレキシンによる交感神経を介した骨格筋における糖代謝調節について報告したい。