日 時 | 2009年11月27日(金) 12:20 より 13:00 まで |
---|---|
講演者 | 冨田 江一 助教 |
講演者所属 | 生理学研究所 行動・代謝分子解析センター |
要旨 |
視覚系の発達した哺乳類において、同側眼・反対側眼からの視覚情報は別々に 分かれて、大脳皮質第一次視覚野上の同側・反対側眼優位カラムに入力する。 眼優位カラム形成は、大脳皮質発生・発達研究のよいモデル系であり、長い間 視覚刺激あるいは自発性神経活動に依存したactivity-dependent mechanismに よるとされてきた。しかしながら、最近、通常の視覚刺激がない開眼前よりす でに眼優位カラム様の構造物が認められる、あるいは網膜の自発性神経活動を ブロックしても眼優位カラム形成は阻害されないなど、この説を否定する報告 が増えてきている。これより、同側・反対側眼優位カラムの初期分離は何らか の分子メカニズムによるのではと考えられ始めたが、現在までこの分子の実体 は全く分かっていない。私は、ある分子シャペロンが眼優位カラム形成初期よ り第一次視覚野上でパッチ状に発現していること、このパッチ状の発現が同側 眼優位カラムに一致していることを発見したのでここに示す。さらに、分子シャペロンのパッチ状発現は開眼前の出生直後よりすでに認められることも明ら かにした。これらの結果をまとめると、発生初期の同側・反対側眼優位カラム 分離形成は、それぞれに発現する分子の差異によるものと強く示唆される。 |