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セミナー詳細

2010年02月02日

視床下部と大脳皮質による睡眠覚醒調節

日 時 2010年02月02日(火) 16:00 より 17:00 まで
講演者 Thomas S Kilduff 教授
講演者所属 SRIインターナショナル、スタンフォード大学
お問い合わせ先 山中 章弘(細胞生理研究部門)
要旨

1998年、二つの研究グループがほぼ同時に視床下部に発現する新しい神経ペプチド「ハイポクレチン/オレキシン」を同定した。オレキシン神経系は脳の広範囲に興奮性の投射をし、睡眠覚醒調節、代謝、内分泌、依存、ストレスによる鎮痛(SIA)などに関与している。オレキシン神経系の破綻によって、ナルコレプシーという睡眠障害を呈する。そのため、オレキシン神経系の入出力神経系を明らかにすることによって、睡眠覚醒調節機構が明らかになると考えられる。我々は、オレキシン神経特異的にEGFPを発現する遺伝子改変マウスを用いて、コルチコトロピン遊離ファクター(CRF)がオレキシン神経を活性化すること、ノシセプチン/オーファニンFQが抑制することを見いだした。

これらの二つのシステムは、SIAにおいて協調的に働いていた。また、TRHはオレキシン神経を複雑に調節し、この経路がTRHによる覚醒作用に重要であることを見いだした。覚醒から徐波睡眠(ノンレム睡眠)に移行したときに、脳波では徐波が出現する。睡眠中枢は視床下部に存在するが、徐波睡眠時に活性化される大脳皮質の神経はよく知られていなかった。我々は哺乳類において、徐波睡眠時に活性化される大脳皮質神経群を同定することに成功した。これらの神経はnNOSを発現する GABA作動性神経であった。皮質のnNOS陽性神経では、神経活動の指標であるFosの発現が徐波睡眠時に観察され、また、他の睡眠覚醒調節に関わる神経から投射を受けていることを示した。これらのことは、皮質のnNOS陽性神経が睡眠覚醒調節において重要な役割を担っていることを示唆している。