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セミナー詳細

2010年11月22日

分子生物学的手法を利用して大脳基底核の機能に迫る

日 時 2010年11月22日(月) 12:20 より 13:20 まで
講演者 佐野 裕美 助教
講演者所属 生体システム研究部門
お問い合わせ先 立山充博(神経機能素子研究部門)
要旨

大脳基底核は、その障害によりパーキンソン病やハンチントン病に見られるような運動障害を呈することから、運動の制御に重要であることがよく知られている。大脳基底核を構成する神経経路の機能解析は、複数の核が複雑な神経回路を構成しているため、従来の方法では難しい。例えば、大脳基底核の入力部である線条体は、淡蒼球内節・黒質網様部に投射する直接路ニューロンと、淡蒼球外節に投射する間接路ニューロンから成り立っているが、これらが担っている機能については不明のことが多かった。しかし、トランスジェニックマウスを利用すれば、特定の神経経路を選択的に破壊したり、興奮させたりする事ができる。例えば、間接路ニューロン特異的にヒトインターロイキン2受容体を発現させたマウスの線条体にイムノトキシンを注入すれば、間接路ニューロンを選択的に破壊することが出来る。実際、このマウスの行動解析を行ったところ、自発運動量が増加していることがわかった。さらに覚醒下において神経活動を記録すると、大脳基底核の出力核において、大脳皮質由来の興奮が減弱していることがわかった。 すなわち、間接路を介した大脳皮質由来の神経情報は、運動を抑制していると考えられる。
また、狂犬病の糖タンパクを持つレンチウイルスベクターは脳内に注入する と、注入部位から逆行性に遺伝子導入が可能であり、このウイルスベクターを利用してチャネルロドプシンの発現を試みた。線条体への注入により、大脳皮質—線条体投射ニューロンの同定や、青色光を皮質に照射することにより、このニューロンの特異的な興奮誘導が可能となる。今回のセミナーでは、このような方法についても紹介したい。