様々な感覚刺激を呈示した際の脳の神経活動を調べることで、情報処理の仕組みを知ることができます。柿木研では、脳波や脳磁図を使って誘発活動を観察しています。単純な感覚刺激呈示に加えてあるタスクを負荷した際の活動の変化や新たな発生を検討することで、そのタスクに関連した処理を知ることもできます。 しかしながら、そもそも感覚刺激によって誘発される活動がどのような生理学的意義を持つのかが明らかではなく、この手法によって得られる情報の解釈には大きな制限があります。 例えば痛みを感じる強度の侵害刺激を呈示した際には明瞭な大脳活動が記録されますが、残念ながら侵害信号が入力されたたために生じる「侵害刺激特異的」な活動はその中にほとんど含まれていません。「触覚刺激特異的活動」が記録できないのも同様です。どのような視覚刺激や聴覚刺激を呈示しても誘発活動はほぼ同一であり、どの感覚系においても誘発活動は刺激の内容をほとんど反映していないと考えられます。従って私達はまずこの手法の限界を知らなければなりません。 次にその限界の中でそれでもこの手法を使って研究を進めるなら、誘発活動の大部分を占める非特異的な活動群は一体何なのかを知る必要があります。 セミナーでは刺激の内容に関わらず誘発される活動群の意義について考えてみたいと思います。
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