要旨 |
パルミトイル化脂質修飾は他の脂質修飾とは異なり可逆反応であり、外界刺激に応じて制御される翻訳後脂質修飾であり、リン酸化修飾と同じく神経活動や細胞機能をダイナミックに制御している。 神経細胞において神経伝達物質の放出に関わるSNAP-25はプレシナプスに、AMPA受容体の足場蛋白質であるPSD-95はポストシナプスに選択的に配置される。このSNAP-25やPSD-95の特異的な局在や機能はパルミトイル化により制御されている。 生体膜研究部門では23種類のDHHCパルミトイル化酵素群を同定し、AMPA受容体のシナプスでの機能発現に必須であるPSD-95のパルミトイル化脂質修飾酵素としてDHHC2,3,7,15からなるP-PATがPSD-95のパルミトイル化脂質修飾を介してAMAP受容体のポストシナプスにおける発現量を調節し、シナプス伝達を制御することを報告した。 また、ごく最近、海馬培養神経細胞では、おもにDHHC2とDHHC3が発現しており、DHHC3がゴルジ体で神経活動とは無関係にPSD-95をパルミトイル化するのに対し、DHHC2はポストシナプスおよび樹状突起内の小胞上に局在し、その局在が神経活動抑制時にポストシナプス膜近傍に移動し、PSD-95のパルミトイル化を促進することを見出した。 さらに、このDHHC2による神経活動依存的なPSD-95のパルミトイル化が、神経活動抑制時に誘導されるAMPA受容体のポストシナプスへの集積(AMAP受容体恒常性維持)に必須であることを見出した。セミナーでは、最新の知見も含めDHHC2の活性制御機構およびパルミトイル化脂質修飾によるシナプス機能の制御機構について考察したい。
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