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セミナー詳細

2011年03月25日

消化管におけるレプチンシグナルの制御とその破綻

日 時 2011年03月25日(金) 12:20 より 13:20 まで
講演者 稲垣匡子 助教
講演者所属 生殖・内分泌系発達機構研究部門
お問い合わせ先 立山充博(神経機能素子研究部門)
要旨

レプチンは免疫系や造血系に作用し、細胞の分化・増殖・機能を調節すると同時 に、摂食調節を司るホルモンである。レプチンは脂肪細胞から産生され、食欲統 御に重要な視床下部に発現するレプチン受容体(ObRb)を介し食欲を抑制すること から、これまでレプチン研究の多くは脂肪組織-中枢神経組織間のエネルギー調 節機構に焦点が当てられてきた。一方、レプチンは脂肪組織のみならず消化管か らも産生されていることが知られているが、その意義は不明である。SOCS3はレ プチン受容体(ObRb)に会合しシグナル伝達を抑制することから、我々は消化管に おけるレプチンシグナルの生理的意義を検討するため、T3bプロモーターを用い 消化管上皮特異的SOCS3欠損(T3b-SOCS3-/-)マウスを作出した。
T3b- SOCS3-/-マウスは、成長遅延や食餌摂取量の低下を示し、8週齢ま でに胃癌が形成され、生後半年以内にすべてのマウスが死亡した。胃癌形成初期 に胃でのレプチン産生、ObRb及びSTAT3リン酸化の増強が認められ、レプチン中 和抗体により腫瘍病態形成が改善された。以上の結果から胃上皮細胞のSOCS3欠 損により亢進したレプチン/ObRb/STAT3活性化経路のポジティブフィードバック 機構が胃癌発症につながったと考えられ、レプチン/ STAT3軸のSOCS3による制御 が胃癌抑制に重要である可能性を示唆する。セミナーでは、最新の知見も含め消 化管におけるレプチンシグナル機構について考察したい。