日 時 | 2011年07月14日(木) 12:20 より 13:20 まで |
---|---|
講演者 | 齋藤 茂 先生 |
講演者所属 | 細胞生理研究部門 |
お問い合わせ先 | 石橋 仁 (生体恒常機能) |
要旨 |
温度感受性TRPチャネルは、温度刺激だけでなく、複数の物理的刺激や化学物質の受容に関 わることから動物が外界の環境に適応する際に大きな役割を担っている。温度感受性TRPチ ャネルの機能と生理的な役割はマウスなどの哺乳類で詳細な研究がなされているが、一方、 他の脊椎動物種における情報は乏しく、機能の進化過程はあまり分かっていない。そこで、 哺乳類とは系統的に遠縁な両生類であるニシツメガエルXenopus tropicalisの温度感受性 TRPチャネルの機能解析を行い、哺乳類と比較することにより脊椎動物における機能の進化 過程を推定している。 哺乳類では高温、酸、カプサイシンで活性化されるTRPV1はニシツメガエルにおいても高い 熱刺激や酸に対する感受性は保持しており、侵害受容体としての機能が進化過程で保存され てきたことが分かった。一方、TRPV1のカプサイシン感受性は哺乳類に比べニシツメガエル では著しく低く、この差異は2つのアミノ酸置換が原因であった。次に、哺乳類において体 温近傍の温かい温度の受容体であるTRPV3の機能解析を行ったところ、ニシツメガエルTRPV3 は高温では活性化されず、むしろ低温で活性化され、その活性化温度の閾値は、ニシツメガ エルにとって有害な温度域であることが分かった。TRPV3の温度感受性は哺乳類およびニシ ツメガエルにおいてそれぞれの生理的な特性に適合するように進化してきたと考えられる。 また、時間に余裕があれば、TRPA1の化学物質および温度刺激に対する感受性を複数の脊椎 動物種間で比較した、最新の結果についても紹介したい。 |