術後鎮痛や慢性疼痛の治療において局所麻酔薬を使用する際に、触覚や運動系を抑制することな く痛みだけを選択的に抑制することが望まれている。主にNaチャネルを阻害する局所麻酔薬は、 非選択的に痛みだけでなく触覚や運動系を抑制してしまう事が多い。 今回のセミナーでは、ま ず、局所麻酔薬光学異性体が痛覚伝達に対して選択的抑制効果を持つことを見出したので報告す る。さらに、痛みだけを選択的に抑制する新たな鎮痛薬のターゲットとしてTRPA1チャネルにも 着目した。TRPA1は、侵害性の冷覚や炎症の痛みを伝達する一部の C 線維に特異的に発現するこ とが知られている。TRPA1を活性化すると、痛み情報が入力する脊髄後角表層の一部の細胞にお いて微小興奮性シナプス後電流の発生頻度は増加するものの、興味深いことに、C(Adeltaでは なく)線維によって誘起された単シナプス性興奮性シナプス後電流は抑制した。 本セミナーで は、現在行っているin vivoパッチクランプ法から得られたデータもあわせてお話しさせて頂き ます。多くのご意見を宜しくお願い致します。