日 時 | 2012年12月18日(火) 12:20 より 13:20 まで |
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講演者 | 石川 理子 博士 |
講演者所属 | 生理学研究所・神経分化研究部門 JSPS特別研究員 |
要旨 |
大脳皮質視覚野の視覚機能は,生後の視覚経験に強く依存して成熟することが知られている。これまでに我々は,ラット大脳皮質一次視覚野スライス標本を用いた研究により,1)大脳皮質視覚野内に,非常に微細なスケールの特異的神経回路網が埋め込まれていること,2)発達期に形態視を遮断すると、この微小神経回路網の形成が阻害されることを見出している。微小神経回路網の消失が視覚情報処理に与える影響を明らかにするために,麻酔下のラットにおいて視覚野細胞からスパイク活動を細胞外記録し、個々の神経細胞の視覚反応特性や細胞間の活動同期性を調べた。正常な視覚体験を経たコントロール群では、多様な視覚反応特性をもつ神経細胞が観察されたが、形態視遮断ラット群では、この多様性は減少し、多くの視覚野細胞において反応を引き起こす最適空間周波数や方位選択性が低下していた。また、複数神経細胞の発火タイミングを調べたところ、コントロール群では、類似した視覚反応特性をもつ神経細胞間でのみ高い同期性が観察されたが、形態視遮断ラット群ではこのような傾向は観察されなかった。以上の結果から、一次視覚野は、特異的微小神経回路網を形成することにより、類似した視覚反応性を示す細胞集団の活動の同期性をあげ、個々の神経細胞の視覚反応の多様性を保持していると考えられる。本セミナーでは、上記の一次視覚野の結果に加えて、2次視覚野細胞からの記録結果も紹介し、視覚情報処理における領野内および領野間神経回路の機能的役割について議論したい。 |