日 時 | 2015年02月18日(水) 16:00 より 17:30 まで |
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講演者 | 杉山敏郎教授 |
講演者所属 | 富山大学大学院消化器造血器腫瘍制御内科学講座 |
お問い合わせ先 | 富永真琴(細胞生理研究部門 内線;5286) |
要旨 |
代表的な消化器疾患である消化性潰瘍の2大原因はH.pylori感染と非ステロイド 系抗炎症剤(NSAIDs)であり、今日、除菌治療が普及し、前者は激減した。一方、 NSAIDs潰瘍形成には多要因が関与しているが、プロトンポンプ阻害剤(PPI)が第 一選択の治療および予防法であることは多くの大規模臨床研究から明らかにされ てきた。胃がんや胃MALTリンパ腫も大部分がH.pylori感染に起因することが明ら かとなり、除菌により胃がんを予防あるいは胃MALTリンパ腫が治癒することも明 らかにされてきた。 今なお病態が未知の疾患のひとつは、NSAIDs起因性小腸潰瘍で、PPIはむしろ増 悪因子であり、本疾患の新規治療法の社会的ニーズは大きい。NSAIDs潰瘍動物モ デルの検討から、腸内細菌の存在が潰瘍形成には重要であることが知られてきた が、その詳細な機序はほとんど明らかとされていない。我々は、NSAIDs投与によ り、小腸上皮細胞膜のアラキドン酸カスケードが阻害され、結果として代謝産物 の5,6-EETがTRPV4の活性化を介して上皮細胞の細胞透過性を亢進させ、腸内細菌 由来炎症惹起因子の組織内侵入を容易にし、潰瘍形成に至る機序を明らかにし、 この経路に関わる分子が新たな治療標的分子となり得る可能性を明らかにしてきた。 本講演では本病態を中心に述べるが、治療法が未知の消化器疾患(機能性ディス ペプシア、GERD)の新たな病態関連分子についても言及したい |