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セミナー詳細

2015年05月11日

神経科学における電子顕微鏡法 - 最近の技術進歩と応用 -

日 時 2015年05月11日(月) 16:00 より 17:00 まで
講演者 釜澤尚美先生
講演者所属 Max Planck Florida Institute for Neuroscienceの電子顕微鏡室長
場 所 山手地区2号館西2階セミナー室
お問い合わせ先 窪田芳之 (大脳神経回路論研究部門、yoshiy@nips.ac.jp)
要旨

神経科学研究における最近の話題である コネクトーム解析と、光・電子相関顕微鏡法は、 いずれも電子顕微鏡と周辺技術の進歩が鍵となっている。コネクトーム研究には、 走査型電子顕微鏡 (scanning electron microscope, SEM) を使って、試料を高解像度で 連続撮影し、比較的大きな体積情報を取得する 「volume electron microscopy」の手法が 必須である。試料の連続画像を取得するためには、連続的に切削した試料の表面を撮影する ¬serial block face SEM (SBFSEM) 法と、試料の超薄切片をテープ上に連続自動回収する automated tape-collecting ultramicrotome (ATUM) を用いる方法がある。いずれの装置も 商品化されたことで、volume -EMはまさに実用段階に入ったといえる。2つの手法は一長一短が あり、研究の目的によってどちらを選択するかを考慮する必要がある。SBFSEM装置、 3Viewは細胞体からの突起の広がりを可視化、解析するような目的に適するが、 例えば、個々の小胞を明確に区別出来る像を得ようとすると、電子線によって樹脂包埋試料が 変形し、均一な切削が難しくなることが多い。また、免疫電顕法の応用にも限界がある。 一方、ATUM は、試料作製法に制限が少なく、切片の免疫染色、組織化学染色も可能である。 一旦テープに回収した超薄切片は倍率を変えて繰り返し撮影することができるが、 必要な情報を取得するためには長い時間を要し、また、 得られた連続画像のアライメントはSEBSEMに比べて困難な場合が多い 。, 細胞の機能と構造を 結びつけて解析する為には、電気生理の記録に続いて、 蛍光顕微鏡あるいは超解像顕微鏡による観察を行い、同一細胞の微細構造を電顕で可視化する ことが望ま れる 。さらに、近年の光遺伝学の進歩にともない、 光で細胞の機能を操作し、その細胞をライブイメージングし、そして電顕観察へつなげたいという需要が高まっている。 人力に頼るところがおおい従来の免疫電 顕法を超えて、一連の作業をいかにルーチン化 できるかが今後の課題である。 X線顕微鏡を介した試み、あるいは、Volume-EMの手法を 組み合わせた新しい光・電子相関顕微鏡法ワークフローの現状を紹介し、 今後の可能性を討論 したい。