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セミナー詳細

2015年07月13日

細胞内物流システムの時空間的制御

日 時 2015年07月13日(月) 17:00 より 18:00 まで
講演者 大谷哲久
講演者所属 理化学研究所多細胞システム形成研究センター形態形成シグナル研究チーム
場 所 明大寺地区 生理研1階セミナー室
お問い合わせ先 古瀬幹夫 (脳形態解析研究部門 内線5277)
要旨

本セミナーは日本語で行われます。
This talk will be given in Japanese.

 

 細胞は区画化されており、それぞれの区画に必要な物質を正しく輸送する事は細胞の生理機能を維持する上で重要である。細胞内物流システムは神経細胞や上皮細胞などの極性化細胞の機能的分化において重要な役割を担っており、極性をもって配向された微小管とその上を走るモータータンパク質の働きによって細胞内のそれぞれの区画に積荷が正しく送り届けられると考えられている。微小管プラス端に向かうモーターであるキネシンはモーターの種類を多様化させることによって様々な積荷に対応している。しかしながら、微小管マイナス端に向かう主要な分子モーターである細胞質ダイニンにはこのような多様性は認められず、細胞質ダイニンがどのようにして積荷や目的地の多様性に対応しているのかは十分に理解されていない。
 私は、単一細胞の伸長によって形成され、細胞質ダイニンによる輸送が先端部に向かう特性を持つショウジョウバエの剛毛細胞に着目し、細胞質ダイニンによる輸送の調節機構を研究してきた。その結果、剛毛細胞の先端部には様々な積荷が輸送されてくるが、先端部に到着した後の積荷の運命には多様性がある事を見いだした。クチクラ成分の輸送に関わる低分子量GTPaseであるRab11によって標識される小胞は、先端部に到着した後に速やかに細胞体へと送り返されていたのに対し、細胞伸長の司令塔の役割を果たすリン酸化酵素であるIKKεとアダプタータンパク質Spindle-Fの複合体は、先端部に到着した後に安定的にそこに係留された。さらに、それぞれの輸送様式の分子機構を検討した結果、積荷の運命の決定には細胞質ダイニンと積荷とを繋ぐアダプタータンパク質の特異的な認識が重要であることが明らかとなった。これらの結果から、剛毛細胞の先端部が細胞質ダイニンの積荷の仕分け基地として働いており、アダプタータンパク質が積荷の輸送運命の決定において中心的な役割を担っていると考えられる。