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2016年01月22日

極限・宇宙生物学?生命の起源と生命とは何かの解を求めて?
では、教えてくれ。生物学の「生命」とはなんのことだ。「生命」が何かを知らずに、生物学を研究していると言うのか?

日 時 2016年01月22日(金) 16:00 より 17:00 まで
講演者 高井研 博士
講演者所属 海洋研究開発機構 基幹研究領域 深海・地殻内生物圏研究分野 分野長
場 所 山手3号館2階西 大会議室
お問い合わせ先 飯野亮太(内線5230)
要旨

今の地球の暗黒の深海には、400℃を超えるような熱水が噴出している場が500カ所以上見つかっています。最近では、こうした深海熱水は銅や貴金属やレアメタルといった海底資源の宝庫として注目されていますが、発見以来、深海熱水研究の一番の原動力になってきたのは、「そこで地球生命が誕生した」のではないかという人間の好奇心をかきたてる根源的な科学興味でした。これまでにわかってきた深海熱水を巡る様々な研究分野の成果から、「少なくとも我々の祖先はすべて、約40億年前の深海熱水という場所の洗礼を通じて地球全域に適応進化・伝播し、今に至った」ことは間違いないようです。
 一方、深海熱水の発見と時を同じくして、太陽系の他の惑星や小惑星起源の隕石から、地球生命の細胞の原材料となる有機物が見つかり、それ以降たくさんの有機物が太陽系や太陽系の宇宙に存在することがわかってきました。しかも、それらの有機物は地球にもたくさん届けられている可能性があることもわかってきました。「もしかして宇宙で作られた有機物から地球生命は誕生したのではないか」と考える研究者も増えてきました。そして「地球生命が宇宙の有機物から生み出されるのなら、他の惑星の生命も宇宙の有機物からドンドン生み出されるのではないか」とも考えられるようになってきました。
 実は、「地球生命が地球でできた有機物から生み出される」シナリオと「地球生命が宇宙でできた有機物から生み出される」シナリオでは、「生命がどのように誕生してゆくか」という過程が大きく異なってくるのです。私は当初、「宇宙でできた有機物が深海熱水で加工されて地球生命が生み出されたのではないか」と考えていました。ところが最近は、「地球生命は地球で(深海熱水で)できた有機物から生み出される」という地産地消シナリオの方が正しいと考えるようになりました。その理由についてお話しします。