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セミナー詳細

2016年02月08日

2つのドーパミン神経系とその機能的役割

日 時 2016年02月08日(月) 14:30 より 15:30 まで
講演者 松本 正幸 先生
講演者所属 筑波大学医学医療系
場 所 生理学研究所(明大寺地区)1F大会議室
お問い合わせ先 小松英彦(感覚認知情報研究部門 内線7861)
要旨

中脳に分布するドーパミンニューロンは、脳の報酬システムの中枢として知られている。これらのニューロンは、予測していたよりも大きな報酬が得ら れたときに活動を上昇させ、予測よりも小さな報酬しか得られなかったときに活動が抑制される。このような“報酬予測誤差”を伝達するドーパミン信 号は、報酬を得るための学習や意欲に深く関わると考えられてきた。一方、ドーパミンニューロンの変性・消失は、パーキンソン病で見られるように、 運動機能障害や認知機能障害など、報酬機能とは直接関係のない障害も引き起こす。我々は、ドーパミンニューロンが報酬以外の情報についても伝達し ている可能性を探るため、罰刺激や認知課題をサルに用いてドーパミンニューロンの活動を記録した。そして、ドーパミンニューロンには、“価値”に 関連した情報を伝達するグループと“salience(顕著性)”に関わる情報を伝達するグループがあることを明らかにした。価値情報を伝達する ドーパミンニューロンとは、報酬予測誤差と一致して、報酬に対して活動を上昇させ、罰刺激に対しては活動が抑制されるニューロンである。一方、 salience情報を伝達するドーパミンニューロンとは、報酬はもちろん、罰刺激や記憶しなければならない視覚刺激など、動物の行動にとって重 要な刺激に対して活動を上昇させるニューロンである。注目すべきことに、価値情報とsalience情報を伝達するドーパミンニューロンは異なる 中脳の領域に分布していた。我々が得た結果は、これまで価値情報(報酬予測誤差)を一様に伝達すると考えられてきたドーパミンニューロンが、異な る情報を伝達する複数のグループに分かれていることを示唆する。次に我々は、それぞれのドーパミンニューロンの機能を解析するためのツールとし て、マカクザルを対象にした神経路選択的な光遺伝学の手法を新たに開発した。今後、それぞれのドーパミンニューロンの活動を神経路選択的に操作し たとき、サルの行動や投射先の神経活動にどう影響するのか解析し、2つのドーパミン神経系の機能的役割を明らかにしていきたい。