日 時 | 2016年02月08日(月) 13:00 より 14:00 まで |
---|---|
講演者 | 平林 敏行 先生 |
講演者所属 | 放射線医学総合研究所 |
場 所 | 生理学研究所(明大寺地区)1F大会議室 |
お問い合わせ先 | 小松英彦(感覚認知情報研究部門 内線7861) |
要旨 |
霊長類において、大脳皮質下部側頭葉は腹側視覚経路の最終段にあたり、物体についての視覚表象、並びに視覚長期記憶の形成・想起を司る脳領域とし て知られている。これまで、サルを用いた神経活動記録により、この領域において物体についての視覚長期記憶の表象・想起に関わる単一ニューロン活 動が見られる事が報告されてきた。しかし、これらのニューロンが互いにどのような「回路」を形成し、どういった計算原理によってそれらの活動を成 立させているかという問題については、上記の単一ニューロン活動の報告以来、20年以上に渡って未解明のままであった。そのような問いに答えるに は、これまでのように個々のニューロン活動を別々に記録するのではなく、複数のニューロンから同時に記録を行い、関連するニューロン間の情報伝達 を調べるのが一つの方法として考えられる。そこで本研究では、物体間の連想記憶課題を遂行中のマカクザルにおいて、下部側頭葉から多細胞同時記録 を行い、Granger因果性解析 (Hirabayashi et al., J. Neuroscience 2010) 及び相互相関解析 (Hirabayashi et al., J.Neuroscience 2005) を用いて、単一ニューロン間の機能的結合の強さと「向き」を求めた。これにより、課題遂行中の局所神経回路内における、連想記憶に関連したニューロン間の 情報伝達とそのダイナミクスを解析し、連想記憶の表象と想起に関わる側頭葉神経回路の計算原理をそれぞれ明らかにした。本セミナーでは、まず連想 記憶の想起信号を生成する局所神経回路の動作(Hirabayashi et al., Neuron 2013) と、その回路動作に関する側頭葉領野間の相違 (Hirabayashi et al., J. Neuroscience 2014)について紹介する。さらに、連想記憶の神経表象が側頭葉の2つの領野に渡る階層的な計算原理によって生成される、という新しい仮説を支持する結 果(Hirabayashi et al., Science2013)について紹介し、最後にこうした物体記憶の想起を巡る認知神経回路研究について、今後の方向性を議論したい。 |