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セミナー詳細

2016年02月08日

知覚判断の神経メカニズムの研究

日 時 2016年02月08日(月) 10:30 より 11:30 まで
講演者 宇賀 貴紀 先生
講演者所属 順天堂大学医学部生理学第一講座
場 所 生理学研究所(明大寺地区)1F大会議室
お問い合わせ先 小松英彦(感覚認知情報研究部門 内線7861)
要旨

ヒト脳機能の神経メカニズムを解明するには、行動学的な機能解析、その基盤となる神経回路の同定、情報表現の理解、そして情報処理を統一的に説明 できる理論などの多面的なアプローチが必要である。このような統合的な脳機能理解、いわゆるシステム神経科学的理解には、霊長類を用いた研究がこ れまでに大きな貢献をなしてきた。本セミナーでは、見たものが何かを答える単純な判断である「知覚判断」を例に、知覚能力の定量化、信号検出理論 をベースとした神経活動に含まれる情報量の解析、情報のダイナミックな蓄積による柔軟な判断の生成メカニズムの検討、などの多面的なアプローチに ついて概説する。具体的には最近我々が行っているタスクスイッチングの研究を紹介する。状況に応じて柔軟に判断をし、多様な選択を行うことはヒトの重要な認知機能 のひとつである。素早い判断の切り替えには、短時間でダイナミックにスイッチする神経回路が必要であるが、我々はこれまでに、2つのルール(運動 方向を判断する、奥行きを判断する)をランダムに切り替えるタスクスイッチ課題を用い、運動方向の判断、奥行きの判断、それぞれに特異的に使用さ れる感覚ニューロン群を使い分けることで、判断の切り替えが実現されていることを解明した。また、運動方向、奥行き情報が共に時間的に蓄積され、 ルールに依存して情報蓄積のゲインが調整されることで、柔軟な判断が生成されていることを解明した。今後はルールに依存した情報蓄積(時間積分)のゲイン調節の神経回路メカニズムと動作原理を解明することが重要であると考えられる。本セミナーで は、タスクスイッチングに関連する神経回路や分子の同定、さらには、このような研究の臨床への応用について議論する。