日 時 | 2016年06月02日(木) 10:00 より 11:00 まで |
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講演者 | 齊藤 成先生 |
講演者所属 | 山梨大学大学院 総合研究部 医学域基礎医学系解剖学講座 構造生物学教室 助教 |
場 所 | 生理研(明大寺) 1階 セミナー室 |
お問い合わせ先 | 古瀬幹夫 (細胞構造研究部門) Email:furuse@nips.ac.jp, 内線5277 |
要旨 |
メタボリック症候群の悪化に伴う腎機能低下は糖脂質代謝や高血圧を増悪するなどの悪循環を形成し、心・脳血管疾患のリスクを増強すると考えられている。2014年より医療で使用が開始されたNa+/グルコース共輸送体 (SGLT2) 阻害薬は、腎臓近位尿細管特異的に作用し、体重減少効果・血圧低下・脂質改善が期待されている。一方で、糖尿病性腎障害への治療効果や上皮細胞に及ぼす影響は不明な点も多い。そこで、高脂肪食負荷による2型糖尿病マウスモデルを用いて、糖尿病性近位腎尿細管障害におけるSGLT阻害剤(フロリジン)の薬理効果を検証した。高脂肪食餌による2型糖尿病発症マウス(C57BL6J)にフロリジンを投与した。コントロール群として通常食餌を用いた。灌流固定後に腎組織を採取し、還元オスミウムを用いたOTO法とウラン・鉛のブロック染色、電顕樹脂包埋を行った。SBF-SEMによる連続断面画像を取得するとともに、得られた超薄切片のSTEM-EDX解析を行った。一部の固定組織はOCTコンパウンド包埋後、凍結切片上で顕微ラマン分光解析を行った。SBF-SEMによる連続断面画像の立体再構築では、糖尿病モデル群の近位尿細管S1〜S2領域を中心にミトコンドリア(Mt)の断片化とS2領域を中心に巨大オートファゴソーム(At)が出現した。フロリジンを投与した群は、Mt体積は増加しAtは減少した。STEM-EDX元素分析定性マッピングにより、Atにリンの強い集積が見られた。最後に、顕微ラマン分光解析のAtに該当する領域では、ラマンスペクトラムがスフィンゴミエリンとほぼ同一のピークで有ることを確認した。2型糖尿病性近位腎尿細管障害ではMt断片化とAtを生じ、フロリジンにより改善される可能性が示唆された。 |