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セミナー詳細

2016年06月13日

サル視床下部外側野ニューロンによる自己および他者の報酬情報表現

日 時 2016年06月13日(月) 13:30 より 14:30 まで
講演者 則武 厚
講演者所属 関西医科大学・助教
場 所 生理研明大寺地区1階大会議室
お問い合わせ先 磯田昌岐(認知行動発達 内線7762)
要旨

 報酬は、生体が対象へ接近するか・しないかを決定づける主要因であり、行動の動機づけや学習において重要な役割をはたす。従来の学習理論では、中脳のドパミン (dopamine, DA) ニューロンが表現する報酬予測誤差 (実際と予測した報酬の誤差) 信号の重要性が主に強調され、他の報酬情報表現の存在やその役割については議論が不十分であった。この問題を解決する試みとして、我々は視床下部外側野 (Lateral hypothalamus, LH) に着目した電気生理学的解析を行ってきた。LHは、中脳DAニューロンと前頭前野ニューロンをつなぐ報酬処理システムの一部を構成する。また大脳辺縁系とも神経回路網を形成するため、報酬と罰の情報を統合しながら接近行動全般を制御する脳のクリティカルノードと考えられる。さらに近年、社会行動における視床下部の重要性が指摘されるようになり(Noonan et al., 2014)、他者という環境要因がLHの神経活動に対してどのような影響を与えるかに関心が高まりつつある。我々はマカクザルを用い、① 単離個体に対して報酬と罰を確率的に与えた古典的条件づけと、② 2個体を同時に用いて他者という環境要因を組み込んだ「社会的枠組み」での古典的条件づけを行った。本セミナーでは、各条件づけ下で得られたLHニューロンの応答を紹介し、LHにおける報酬と罰の情報処理機構について議論する。また、社会的枠組みでの古典的条件づけでは、DAニューロンと内側前頭前野ニューロンからも神経活動を記録しており、それらとの比較をとおして明らかになったLHニューロンの機能特性についても議論したい。