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研究活動

セミナー詳細

2016年09月20日

膜センサーと脂質代謝物を介した温度走性 (Thermosensation via membrane proteins and lipid metabolites)

日 時 2016年09月20日(火) 17:00 より 18:00 まで
講演者 曽我部隆彰
講演者所属 Assistant Project Scientist (カリフォルニア大学サンタバーバラ校)
場 所 生理学研究所(明大寺地区)1F大会議室
お問い合わせ先 富永真琴(細胞生理)
要旨

 環境刺激の受容と適切な応答は、生存戦略において重要な役割を果たす。特に環境温度は各生物に固有の至適範囲が存在し、運動機能に加えて成育や生殖行動など幅広い活動に影響する。多くの生物には積極的に温度をモニターするメカニズムが備わっており、多細胞動物においてはTRPチャネルが温度センシングの中核を担っていることが明らかになってきた。
 本セミナーでは、キイロショウジョウバエ幼虫がTRPチャネルなどの膜タンパクや脂質代謝物を介して、環境温度に応答するメカニズムを紹介する。ショウジョウバエはヒトと似た至適温度範囲(18~24℃)で生育し、特に24℃を好むが、幼虫期の限られた期間にダイナミックな嗜好性の変化が生じ、18℃を好むようになる。我々は今回、この温度嗜好性のスイッチに光センサーとして知られるGタンパク結合型受容体ロドプシン(Rh)5とRh6が関与することを明らかにした。Rh5とRh6は末梢感覚神経と中枢神経に発現し、Gq/PLC経路を介してTRPA1を制御することで特定の低温域を感じ分ける。セミナーの後半では、膜脂質を代謝するリパーゼの冷刺激受容における役割について最新のデータを交えながら紹介し、温度嗜好性を決定する脂質依存的な分子機序モデルや、膜タンパクと脂質成分に着目した環境刺激受容メカニズムの研究展開について述べる。